怪・その10
「伝えたいことがあるなら」
中国在住です。
この前の3月末の実体験です。
引っ越す前の最後の日、
いつものように息子と夫と
川の字で布団に包まって横になっていました。
なかなか寝付けずにごろごろ寝返りをしていたら、
突然、回りの音が聞こえなくなり、
別の部屋に瞬間移動で
連れて行かれるような感じがしました。
目を閉じているのに、
もやもやした影のようなものが
存在を主張しているのが分かります。
影は男性で、
彼は私に、一生懸命これまでの生い立ちや
苦しかったことを伝えようとしていることも。
言葉ではなく、農村の風景や
家族の集まっている場面など、
イメージがこま切れに脳裏に浮かんできました。
でも私はどうすることもできず、
「ごめん、わかんない」と頭で思ったとたん。
左向きで寝ていた私の肩甲骨に、
誰かのひざが当たった衝撃、
そして右耳に太い指が差し込まれた不愉快な感覚。
思わず「やめて!」と頭の中で叫んだとたん、
気配は消えました。
隣にいる夫はいびきをかいて寝ているし、
目の前の息子も何事もないかのように
寝息を立てています。
こんなにはっきり感覚が残る経験をしたのは
初めてでした。
でも彼は、話を聞いてほしかっただけなのかも。
願わくば誰かの耳に指を入れたりしないで、
往くべきところに向かってほしいと思いました。
(k)