怪・その19
「女子寮の部屋で」
今から18年前のことです。
私は大坂で仕事をしており、女子寮に住んでいました。
その女子寮はかなり古く、昔、
墓地だった場所を更地にした後で買い取ったという噂で、
お化けを見たという人が周りにたくさんいました。
その寮に入った最初の夏の夜、ふと目が覚めました。
私は普段から寝つきがよく、
夜中に起きることが全くないので、
何だろう? と思いながら壁に掛けてある時計を見ると、
夜中の2時でした。
丑三つ時だなぁと冗談交じりに思って時計から目を離し、
真っすぐ前を向いた瞬間、
押入れの上の戸袋が開いているのが見え、
そこから私を見下ろしている坊主の生首と
目が合ってしまいました。
そのまま私は気を失い、怖い夢を見続けて朝を迎えました。
朝になってみると、今までお化けなんて見たこと無いし、
きっと生首も夢だったんだなぁと思っていました。
その日は、あまり話したことのない先輩Yさんと
一緒のシフトだったので、会話のネタにしようと、
夢に出てきた生首の話をしてみました。
すると、Yさんが急に真面目な顔で言いました。
「Kの部屋って○○○号室でしょ?」
その寮は3号棟まである4階建てで、
結構な部屋数だったのに、
ピッタリ当てられたのです。
「どうしてわかったんですか?」と聞くと、
Yさんは言いました。
「だって、その部屋で私も同じものを見たから」。
寮の管理をしている総務に泣きついて、
寮の部屋を替えてもらったのは言うまでもありません。
部屋を替えてもらったら、
仲の良い先輩Tさんが
ちょくちょく遊びに来てくれるようになりました。
新しい部屋は、前の部屋とそんなに離れてなかったので、
不思議に思い、
「前の部屋の時は
全然遊びに来てくれませんでしたよね?」
と、Tさんに、何気なく言ってみました。
するとTさんは
「ずっと言いづらかったんだけど、
Kの部屋の扉の下から
夏でも冷たい空気が流れ出て来てて、
怖くて行けなかった」
と言われ、一度だけでなく二度凍りつきました。
(K)