怪・その20
「背中を支えてくれた」
小学生の夏休みのことです。
暇をもてあましていた私は、
洗濯物たたんでいる祖母をみて、
たまにはお手伝いでもしようと思い立ち、
洗ってあった皿を食器棚に片付けていました。
その際、食器棚の手前に重ねてあった大皿が邪魔で、
とりあえずテーブルに置いておこうと、
一度に複数枚の皿を持ち上げたのです。
そして振り返った瞬間、皿の重みで体が傾きました。
そのまま倒れていれば、
食器棚に頭から激突していたことでしょう。
しかし、
誰かが私の背中を支えてくれたおかげで
バランスを取り直し、事なきを得ました。
私は祖母が助けてくれたと思い込み、
お礼を言おうと振り返ったのですが、
そこには誰も立っていませんでした。
確かに大きな両手が支えてくれた感触が
したというのに・・・。
夏だというのに、凍るような寒気が背筋に走ったのを
今でも覚えています。
(エリトン)