怪・その36

「その場所の石」

この夏に父母が体験した小話を送ります。

初夏、イタコで有名な恐山に
父母が観光に行きました。

父はお参りよりもまずは温泉に入りたいといい、
ふたりは別行動をとりました。
母がゆっくり一巡りして休みがてら待っているところへ、
父が追いつきました。

私は知らなかったのですが、
父は観光地へ行くと、
記念といって小石を持って帰ってくる癖があるそうです。

今回も、賽の河原できれいな石を見つけたよ、と、
持っていました。

あちこちに小石が積んである風景の中、
いくらなんでもここの石は駄目じゃないかしら、
と母は考え、
たまたま近くを通った関係者らしき人
(作務衣を着ていた)に声をかけました。

「夫がきれいな石を
 あそこ(賽の河原)で見つけたんですが、
 持って帰ってもいいのでしょうか」

作務衣の人は急に無表情、というか、
表情を隠すような様子になって

「・・・どうでしょうか。
 持っていらっしゃってもいいかもしれませんが、
 よく、送り返されてくるんですよ。」

聞くところによると、
恐山の石を記念に持って帰ったはいいが、
何か障りがあったとかで、
郵便で石が送り返されてくることがよくあるとか。

もちろん父母はその後、
拾った場所に石を返しに行きました。

帰り、バスの中で、
前日に電池を換えたばかりだった父の腕時計が
止まっていることに気が付いたそうです。
丸一日経つと、また勝手に直ったそうですが。

(Y)

こわいね!
2013-09-09-MON