怪・その38
「窓の向こう」
新入社員の頃の、だいぶ昔の話です。
新人研修の為に、
とある研修センターに宿泊することになりました。
参加人数が少なかったので、
４〜５人は泊まれる大きな部屋が
私１人に与えられました。
その日は夜の集合で、
翌朝早いということもあり、
なんか落ち着かないと思いながらも
着いてさっそく、窓際のベッドで寝る事にしました。
布団をかぶってみたものの、
壁一面の大きな窓に頭を向ける形で寝るのが
やはり落ち着かず、寝付けずにいました。
どれくらい経ったか、突然何者かが、
私の髪を「ガッ」と掴んだのです。
「えっ」と驚いた次の瞬間には
真上（窓の方）に向かって
もの凄い力で引っ張り始めたのです。
髪の毛を引っ張られるがまま、
私の体も、スピードを上げてどこかへ
移動していく感覚がありました。
横になったまま、左右にカーブしたり、
どこまでも移動していきます。
「どうしよう、連れて行かれる」
と思いつつも、恐ろしさに目も開けられず、
お経を必死になって唱えていました。
そして、いつの間にか、寝てしまったようでした。
翌朝、目覚めて、体が何ともないことを確認しました。
ホッとして、窓のカーテンを開けたら、
そこには大きな慰霊碑がありました。
その研修センターは、今はもうありません。
（マナ）
