怪・その11

「和室を見ないように」

3年前の10月の出来事です。

家人達は外出していたので、
家には私1人でした。

よく晴れた日でしたが
強風のため洗濯物をベランダに干せず、
居間とその隣にある和室の間にある鴨居に
洗濯物を干す事にしました。

居間と和室の境目で居間側に立ち、
左下(居間側)に置いた洗濯カゴから洗濯物を取り、
皺を伸ばしてハンガーを通し
右上の鴨居にかける。
10枚近くあったTシャツなどを
どんどん干していきました。
機械のように、ただ黙々と

左手で洗濯物を取り、
ハンガーを通して右手で鴨居にかける。
左手で洗濯物を取り、
ハンガーを通して右手で鴨居にかける。
左手で洗濯物を取り、
ハンガーを通して右手で鴨居にかける。

そして最後の一枚を鴨居にかけようと
右手を上げた時、
チラッと“青いモノ”が
視界の右端に入ったんです。

「何だろう?」と思い、
ハンガーを持った右手を上にあげたまま
視線だけを右(和室)に移し‥‥

すぐに後悔しました。

“青いモノ”は着物でした。

しかも白というか灰色の肌をした
ボサボサ頭の女の人が着ている着物です。
もちろん家族の誰でもありません。

ひび割れた肌と唇、
鼻の辺りまで前髪が
ボサボサとかかっているため目は見えず、
少し俯いた状態で
私の右斜め後ろ30cmぐらいのところに佇んでいました。

何が怖いって、30cmは離れているはずなのに、
まるで至近距離で見ているかのように
肌の質感や髪の質感がわかる(見える)んです。

今にも動き出しそうなガサガサの唇の皺まで。

何とか可及的速やかに消えてもらわないと!
と咄嗟に思い浮かんだ対処法は

『(幽霊に)見えてるとバレると
 しつこくアプローチされるので、
 見えていても見えてないフリをするといい』

というものだったので、

「さて、今日のお昼は何を食べようかな〜。
 ふんふ〜ん(鼻歌)」

と、口には出さず、必死で頭の中で
オムレツやパスタを繰り返し思い浮かべ、

「私は何も見てませんよ〜」という雰囲気を出し
(てるつもり)ながら
ぎこちなく最後の洗濯物を鴨居にかけ、
和室を見ないようにして洗面所に移動しました。

数分後、呼吸と気持ちを整えて居間に戻ると
着物の女性は消えていました。

その後、その女性はお見かけしていません。

(しましまねこ)

こわいね!
2014-08-12-TUE