怪・その8
「けいこちゃんとよしこちゃん」
娘がまだ幼稚園に入る前だったと思います。
毎日、姿の見えない友達と遊んでいました。
名前を、
けいこちゃんとよしこちゃん、
と言っていました。
両側に手をつないで、
「この子がけいこちゃん、
こっちがよしこちゃんだよ。」って
私たちに紹介したり、楽しそうに遊んでいました。
私たち家族は、
単なるごっこ遊びをしていると
思っていたのですが、
同居していた私の母だけは、
すごく気味悪がっていました。
母の部屋の戸を閉めっきって、
何やら楽しそうに話している声が
聞こえてくるのですが、
どのような遊びをしているのかは
わかりませんでした。
とても怖がりの子で、
絶対に一人で居たがらないのに、
あの見えない子たちと遊ぶ時だけ、
平気みたいでした。
私たちが娘に、
「けいこちゃんとよしこちゃんは
どこから来るの?」
と聞くと、
母の部屋の押し入れを指さして、
「あっちから!」
と言うのですから、母は
「さすがに押し入れ開けるときは
嫌な気持ちになる。」
と、よく愚痴っていました。
娘が幼稚園に行くようになって、
間もなくだと思うのですが、
ある日娘から、
「けいこちゃんのお母さんが、
お仕事で東京にお引越しするの。
明日お別れ会にお呼ばれされたから、
行ってきてもいい?」
と言われ、私は別に何も考えず普通に、
「いいよ。」と答えました。
そしてお別れ会に呼ばれて行った日を境に、
けいこちゃんとよしこちゃんは、
我が家に現れなくなりました。
25歳になった娘は、
そのときのことはまったく覚えていません。
(SAAK)