怪・その9
「トイレの鏡」
私の友達が体験した話です。
中学の頃、
放課後にソフトテニス部の練習があり、
少し暗くなった頃に終わりになったそうです。
体育館横にある少し古いトイレへ、
友達は仲間たちと連れ立って足を運びました。
個室がいくつかと水道、
水道のところの壁には、鏡。
いわゆる普通のトイレだったそうです。
みなが手を洗っているときでした。
突然一人の子が、「キャーッ!!」と悲鳴をあげ、
トイレを飛び出してしまったそうです。
慌てた友達も、他の子達も、その子を追いました。
「どうしたの!?」
怯えている子に皆が声をかけると、
「今、鏡に白いものが映った!
横切っていったの!」
友人達は驚きましたが、
他にそれを見た子はいませんでした。
「よし、もう一回行ってみよう!」
思いきって、
みんなで再びトイレへ引き返したそうです。
おっかなびっくり、
友人達は入口の扉を開けて中を確認しました。
ですが、みんな、言葉を失ってしまったそうです。
自分たちが手を洗った水道。
その壁の、
鏡のあるべき場所には、
古くなった接着剤の跡が残っているだけでした。
そのトイレには、元から鏡が無かったそうです。
(ちづる)