怪・その25
「古いホテルの鏡」
20年ぐらい前のことです。
その日は、
当時付き合っていた彼と久しぶりに会って、
夕方食事をしたあと、
ホテルに泊まる約束をしていました。
宿泊の予約などは彼に任せていたのですが、
彼は、当日でもどうにかなる気で、
まったく予約をしていませんでした。
しかしその日に限って、週末だったからか、
都内のホテルはどこもいっぱいで、
やっと某ホテルに
ダブルの部屋を予約することが出来ました。
とても古いホテルで、
客室は入ってすぐ右側に
トイレとユニットバスがあり、
そのトイレとバスの入り口の目の前に
全身鏡がついていて、
その奥に右にダブルベッド、
左はデスクと、小さなテレビと、
窓際にイスが一脚置いてある、
よくあるビジネスホテルの１室でした。
私は、霊感などなく、
怖いものを見たことなどなかったのですが、
部屋に入って
ようやく一息ついて、
部屋を眺めまわした時から、
全身鏡が気になってしょうがなくなりました。
なぜか、
その鏡からとても嫌な感じがして、
目が離せなくなってしまったのです。
それからは、彼と一緒にいても落ち着かず、
結局、寝る事ができずに
朝までテレビを見て過ごしました。
翌朝ホテルをチェックアウトしてから、
彼に、全身鏡のことを話したら、
「怖がると思って言わなか ったんだけど、
たしかに、何か白いものが写ってたよ」
その後、ホテルに宿泊しなければならないときは、
できるだけ新しいホテルを選ぶようにしています。
（ちる）
