怪・その26
「傷ひとつなく」
今からもう13年前の話です。
私には母親代わりの叔母がいました。
叔母は80歳で肺がんと診断され
治療の甲斐なく1年程で亡くなってしまいました。
叔母の家は大阪にあり、
私と娘二人は和歌山に住んでいたので
臨終には間に合わなかったのですが、
意識がある最後の時に
私の名前を呼んでくれたそうです。
私と娘たちは
自宅に運ばれた叔母の亡骸と対面し
いったんその日は和歌山に帰り、
翌日お通夜に、あらためて出向くことにしました。
礼服に着替える必要もありましたから。
翌日の昼前に私と娘達は
車で高速を走り大阪に向かっていました。
後部席と助手席の娘達は
前日の疲れもあり、寝ていました。
そんな時、突然左側のドアに
バーン!!
という凄い衝撃と音が鳴り、
3人とも悲鳴をあげました。
今のは何?
何かがぶつかった?
両サイドに車はありません。
衝撃と音のわりには、
ハンドルを取られていません。
でも絶対に
車体に何かダメージはあるだろうと
ヒヤヒヤしながら高速を降りて
車を停めて車体の左側を確かめました。
傷ひとつ、ありません。
何て不思議な‥‥。
通夜の会場に着いて弟にその話をしました。
すると私達がその衝撃を受けた時間は
ちょうど叔母の遺体を会場へ遷すため
自宅から運び出した時間だったそうです。
何か私達に伝えたかったのか‥‥。
身体は住み慣れた自宅を出て
魂が私たちに早く来るように訴えたのか‥‥。
娘たちは高校生と中学生でしたから
ちゃんと今でも
その出来事をおぼえています。
(S)