怪・その3
「やめてあげて」
もう20年以上前のこと。
小さな頃から可愛がってくれた
近所のおじいちゃんが亡くなりました。
その後、
あまり仲が良くないとウワサだった奥さんと
息子夫婦は、
墓参りもせず
おじいちゃんの悪口を
近所に面白おかしく吹聴していました。
ある夜、
夢におじいちゃんが現れました。
「あのさ、もうあの家
燃やしちゃおうと思うんだ」
おじいちゃんが話し始めました。
「いやいや、じいちゃん、
それは良くないよ。
やめときなよ」
そう止めると
表情が鬼のように変わりました。
「燃やす。
みんな燃やしてやる」
「じいちゃん、やめてあげて」
そんなやり取りを
目が覚めた後で覚えていました。
その日の午後、
消防のサイレンが鳴り響きました。
じいちゃんの家から、出火です。
あとで聞くと、
仏壇のロウソクが倒れて
あっという間に火が回ったのだとか。
全焼でした。
「じいちゃん、止めたのに」
誰にも言えない夢でした。
もう時効と思うのでお送りします。
(みちこ)