怪・その13
「地震じゃない」
もう20年以上も前、
私が中学生の頃の体験です。
夜中に実家の自室で一人、
布団に入って本を読んでいました。
みんな早寝の家族で、
その夜も家の中で明かりがついていたのは私の部屋だけ。
そこは狭い和室で、畳の上に布団をしいた私の四方は
隣の仏間との間を仕切るふすま、
玄関と廊下にそれぞれつながる障子、
縁側につながるガラス戸、で囲まれておりました。
ふと気づくと、
一方の障子がカタカタと揺れるような音を立てています。
「?」と思って見ていると、
だんだん音は大きくなり、
見た目にも明らかに障子が揺れ始めました。
「地震だ!」と思って布団をかぶりかけ、
そして、さらに「?」と。
床は全然揺れていないのです。
よく見ると、何事もなく安定した部屋の中で、
玄関側の障子だけがガタガタ音を立てて揺れている。
そのうち、廊下側の障子も
呼応するように激しく揺れ始めました。
仏間側のふすまと縁側へのガラス戸は
微動だにしません。
床も、天井から下がった照明も、
全く揺れていません。
唖然としていると、
揺れている玄関側の障子のかなり向こう側から
子どもの泣き声のような、
猫の鳴き声のような
か細い声が聞こえてきます。
近所の猫だったらいいなあと切実に思っていると、
最初は遠い声だったのが、だんだん近づいてきて、
障子のすぐ向こうまで来たような気配がし‥‥
そのあと、自分がどうしたのか
記憶が定かでないのです。
泣いて親を起こしに行ったような気もするし、
えいやっと覚悟を決めて
寝たような気も(我ながら猛者ですね)。
でもどちらにせよ、
その後、とても家族の会話には出せませんでした。
のちに気になってネットで調べて、
空港からの距離によっては
何やら物理的にそんな振動現象が起きる
という話を読みました。
でも、あの気配と声は、
何かを訴えていた気がしてなりません。
(バリー)