怪・その15

「夜の海へドライブ」

二十歳くらいの頃、夏休みに姉と
当時単身赴任中だった父のところへ
遊びに行った時の話です。

その日は夜になっても蒸し暑く、
遊びに来たという解放感もあって

姉と二人で父の車を借りて
夜のドライブへ出かけました。

車を走らせながらどこへ行こうかと話しあい、
なぜか夜なのに、海を見に行こうということになり
地元でも有名な某岬へ行くことにしました。

当然夜なのでいるのは私たち二人だけ、
あたりもまっくら。

意外に夜の海を見ても面白くないね、
と姉と話しながら家へ戻り、
そのまま寝ることにしたのですが、
ベッドに入ると

べちべちべち

誰かが私たち姉妹の寝ている部屋の窓を
叩いているのに気が付きました。

べちべちべち

手のひらを押し付けて出すような
ねちっこい音で
誰かが窓を叩いているのです。

父のアパートは2階にあり、
私たちが寝ている部屋の窓は
ベランダに面しているとはいえ
深夜を過ぎた時間に来客なんてありえない。

しかも玄関ではなくなぜ窓から?

だんだん怖くなってきて
毛布をすっぽり頭からかぶって
「早くいなくなれ!!」と祈っていると、

急に父の寝室がある部屋から怒鳴り声とともに

ばぁんっ!!!

と壁を叩く音がして

同時に窓を叩く音も止みました。

安心したと同時に急に眠気に襲われ、
そのまま眠ってしまった、翌日。

姉へ「例の音」のこと聞くと
知らないとの返事。

父に至っては、怒鳴ったこともなければ
壁を叩いてもいない‥‥と。

数日後、知人に霊感の強い人がいて
その妙な体験談をすると

「あんた。
 窓を開けなくて正解、良かったね。
 ドライブで海へ行ったのがまずかったね。

 海で亡くなった人を
 連れて帰って来たんだよ。

 だから家の中へ入れて、って窓を叩いた。

 でもその人は
 あんたとは関係のない人だから、
 お父さんの守護霊に追い返されたんだよ。」

あの時窓を開けてたらどうなっていたんだろう‥‥?

あれから夜に海へドライブすることは
すっぱりやめました。

(h)

こわいね!
2016-08-12-FRI