怪・その21
「御線香の意味」
これはもう10年以上前に体験した話です。
当時、学生だった私は
遠い親戚のおばあさんが高齢者施設に入所して
空き家になっていた一軒家の留守を任され、
１人でその家に暮らしていました。
代々続くその家にはお仏壇があり、
たくさんの遺影が飾られていましたが、
私にはほとんど縁のない方達だと
（それに、少し怖いような気がしていて）
たいして何も考えずに
お仏壇の扉を締めて生活していました。
ある日、お世話になっていた先輩方と
食事をする機会があり、
ひょんな事から私が留守を任され
一軒家に住んでいる事、
その家に暮らし始めてから
お仏壇の扉を閉めている事を話しました。
すると、先輩の１人が
その日、とてもいい香りだったからと
ご自宅用にと御線香を買って
持っておられました。
その方はもともと
とても信仰深い方だったのもあり、
自分が今日このタイミングでこの話を聞いて、
たまたま御線香を持っているのも
何かあるのかもしれないから、と
今日帰ったらすぐに
この御線香をお仏壇にあげて、
手を合わせなさい！ と強く言われました。
食事会もお開きになり、
帰宅して言われた通りに御線香をあげながら
「今まで一度も
御線香もあげずにごめんなさい。
いつも、この家を使わせていただいて
ありがとうございます」
と声に出して手を合わせました。
夜も遅かったので、お風呂に入り、
さあ寝ようと布団に入って目を閉じると、
それはそれはハッキリとした音で
パン！
ピキ！
ピキピキ！！
ガタガタガタ！！！
と部屋中にラップ音が響き渡りました。
私はそもそも霊感もなければ、
その家に暮らし始めて、
一度もそんな音を聞いた事はありませんでした。
ラップ音が聞こえてビックリしましたが、
まったく怖いという感覚はなく、
むしろこの家のご先祖様が
嬉しいよ、ありがとうと
伝えて下さっているという気がして、
勝手な解釈ですが、大満足で、
とても心地よく眠りにつきました。
ラップ音が聞こえたのは最初の１日だけで、
それ以降は聞こえたことはありませんでした。
それも、この家のご先祖様が
私を怖がらせないようにと
配慮してくれているんだろうなと伝わって来て
嬉しかったのをよく覚えています。
亡くなった方にとって、
御線香はとても意味があって、
喜ばれるものなんだろうなと
思わせてもらえるようになった、
私の唯一の霊的な体験でした。
（きみ）
