怪・その69

「あふれる愛を」

約4年前、
父方の祖父が他界した年の冬の出来事です。

わたしの両祖父母は、
小さい頃からわたしを可愛がってくれ、
忙しい両親に代わって
毎日わたしの世話をしてくれていました。

特に父方の祖父母の家にいることが多かったわたしは、
自然とおじいちゃん子になっていました。

わたしの人生の節目をいつもお祝いしてくれて、
特に結婚の時にはとても喜んでくれ
不自由な身体ながら
他県での結婚式にも参加してくれました。

うまくいっていた結婚生活でしたが、
大事に思っていた夫との関係が悪化して
心身共に疲れ果てていた時、
その秋に大好きな祖父も亡くなりました。

わたしは、あまりの辛さに仏壇の前で

「おじいちゃん、わたしも連れて行って欲しい。」

と不謹慎にも頼みましたが、
何の答えもありませんでした。

お通夜やお葬式がすすむ中で、
親戚が大集合して話しているうちに
わたしの心も少し癒されていったように思います。

わたしの家族がそれはそれはみんな優しくて、
お互いに思いやりのある一族だということに
気づいたからです。
わたしは、恥ずかしながら自分の家族のことを
「田舎のイケてない人たちだなあ
(家族のみんなごめんなさい)」と
心のどこかで思っていたとも気づきました。

自分もみんなも大切にしたいと強く心に決め、
葬儀の後今は
ひとりになった京都の自宅にひとりで帰りました。

ひとりになると、寂しさや辛さが込み上げてきて
なんとも言えないつらい日々が続きました。

それに耐えていたある日のことでした。

冬の京都の寒さはかなりのものです。
マンションに住んでいたとはいえ
寒いなあと思いながらある日布団に入りました。

寝る時に乾燥するのが苦手で
いつも暖房は切っていたのですが、
次の日の朝、暖かさで目を覚ますと
エアコンがついていました。

タイマーをかけた? と思って
気にとめていなかったのですが、
出かけて帰るとついています。

調べてみても本体が壊れているのではなさそうで、
リモコンを違う部屋にしまっても
それは何日も続きました。

また、開けっ放しのトースターのドアが
隣で閉まったり、
外出時に音楽が聴きたいなと
イヤホンをつけた途端に
聴きたい音楽が再生されたりなどなど、
不思議なことが続きました。

でもとにかく、優しいんです、してくれることが。
そこで初めて、

あれ? おじいちゃんかなと感じました。

おじいちゃん京都までよく来れたなあと思いつつ、
亡くなってまで
わたしのことを心配してくれていることに
嬉しさと申し訳なさもあって

「おじいちゃん、もう寒くないよ。
春になるしな。ありがとう。」

と声をかけて眠りました。
次の日、もうエアコンはついてませんでした。

わたしはその春、新しい思いで
新しい土地で新生活を始めました。

おじいちゃんからあふれる愛を注いでもらっていたこと、
それは他の家族も同様なことを実感し、
今では新しい家族とともに楽しい日々を送っています。

ちなみに、わたしは祖父が亡くなった秋以降、
それまで以上に何かを感じるようになりました。

まもなくわたしの実家の地域ではお盆ですが、
お盆に向けてあれが食べたいなどのリクエストを
夢などで祖父から伝えてもらっています。

おじいちゃん、いつもありがとう。

(匿名希望)

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2018-09-03-MON