とあるお休みの日‥‥。
久しぶりに母を訪ねるつもりでいたら、
夫が車を出してくれるという、うれしいお申し出。
今回は、母の得意料理を教えてもらうつもりで、
本当は買い物から一緒にできればよかったのですが、
せっかく車も出してもらったことですし、
必要な食材を買いそろえて、実家へ向かいました。
この日の課題は、
わたしにとって、『おふくろの味』の代表格
『じゃがいも肉きんぴら』。
この料理は、数え切れないほど、
母が繰り返し、何度もつくってくれたもので、
本当においしくて大好きな味でした。
記憶をたどって、わたしなりにつくってみてはいましたが、
今まで、実際に一緒につくったことはなく、
今一度 どうしてもあの味を食べたくて、
最近だいぶ元気になった母に、ご教授を乞い願った次第。
そして、こうしたわたしのお願いに、
なんだか母もまんざらではなさそうな?
まず、下ごしらえは、前座である、わたしの担当。
後方から、テキパキと指示が飛びます。
鉄製の中華鍋で固いものから先に炒め始めます。
まずは、ごぼうから。
ポイントはじっくり 急がず 気長に
ゆっくり、のんびりと炒めます。
そういえば母は、昔から、
時間をかけて、ていねいに料理をつくるひとでした。
最低でも1時間。
ごはんの支度が長いのは、どうやら家系のようで、
母には4人の姉がいるのですが、
そろって、たっぷりと時間をかけてつくるのが流儀。
いつだったか、
「お姉さんに3時間待たされて、
出てきたのが湯豆腐だけだったのには
さすがにびっくりしたわ」
と、母が笑っていたことがありましたっけ。
これは祖母も同様で、調理中も
時おり、キセルをぷかりとふかしながら、
のんびりのんびり、つくっていたようです。
それにしても母娘って、
ヘンなところが似るものですね(笑)。
ここからは、真打ちの出番。母と交替です。
「なんていったって全部目分量で、
いい加減だからね~~」と母。
昔から使っている中華鍋とヘラ。
私にとっては子供の頃からあった道具たち。
きっと 鍋の大きさと材料のバランスで
その目分量が決まっているのでしょう。
先日、わたしが持ち込んだお鍋が、
どこかに、ひっそりとしまい込まれているのも納得。
まったく余計な御世話でした(苦笑)。
「上白糖は、このくらい」
少なかったら、あとで足そうか」
素材から水分が出てきます。
わたしがつくったときとは全然違います!
これででき上がりかと思ったら、
「煮汁は全部飛ばし切らないで、
冷まして味をなじませるの」と母。
あっ! そうだったんだ!
わたしは、しっかり煮汁を飛ばしていました。
なにが違うのかと思っていたら、ココだったのかー。
以前、母の味をマネしてつくったつもりの
料理をデリバリーして、
「コレよくつくってくれたよね」と言っても、
母が、なんだかキョトンとした顔をして聞いていたのを、
「退院したばかりで、ぼーっとしてるのかな」、
ぐらいに思って見ていましたが、
アレも母からすれば、口にしたところで、
きっと全然、別の料理と思えていたに違いなく、
ぼんやりものは、むしろ、わたしの方?(苦笑)
そして、味がなじむまで、
しばし、おしゃべりタイムです。
『じゃがいも肉きんぴら』は、
我が家では定番のおかずでしたが、
よそで見かけたことがないので、尋ねてみたら、
ふつうのきんぴらに、じゃがいもと肉を入れるのは、
母のオリジナルとのこと。
またまた増えていたのですが、
よく聞いてみると
「戦時中のなにもない時代、
飴の包み紙は宝物だったのよ」と母。
そう、母が生きてきた時間の中には、
そんな時代もあったのでした。
胸がキュッとなるくらいに懐かしくて、
優しい味わいの、おいしい『肉きんぴら』と、
穏やかに流れる母と娘の時間。
ごちそうさま。お母さん、ありがとう。
(次回に続きます)