第4回
孤独な哄笑でも |
談志 |
俺がテレビにシビアになるのは、
どこかで自我みたいなものをもっていたいからなんだよ。
今のテレビの笑いを認めちゃうと、
俺の自我がなくなっちゃう。
笑いって、そんなもんじゃないだろう
と言いたいわけです。 |
糸井 |
談志さんは、落語の世界でも闘ってますよね。 |
談志 |
俺はね、いろいろやってきて、
「落語は自己を出せばいいんだ」
ってことに行き着いたんだけど、
よく生意気だって言われ、
落語協会からもバッシングを受けてきたでしょう。
これが何で悪いんだというのを示すうえでも、
笑いって何だ、落語って何だって具合に、
常に分析しながら考える癖ができちゃったんだね。 |
糸井 |
自分を守るために。 |
談志 |
それが今の俺を支える自信にもなってる。
すぐ崩れそうな自信ではあるけど、
とりあえずそこでもってる。
要するに、俺のしゃべっていることは正当なんだと
自分で確認し、
常に理論でガードしていなきゃもたないくらい、
俺は孤独だったんですよ。
だから『電波少年』見てアハハと笑ってたり、
「いいんですよ、私はこれが好きなんですから」なんて
悠長なことを言ってられなかったんだな。 |
糸井 |
必死だったと。 |
談志 |
今もはじき出されたまんまで。 |
糸井 |
笑いと時代は関係ありますか。 |
三谷 |
僕が舞台でやるものは、
時代を反映してるものじゃないし、
関係ないんじゃないですか。 |
談志 |
うん、時代じゃない。
自己の問題ですよ。
人間が主体なんですから。 |
糸井 |
これから笑いとかコメディといったものは
どうなるんですかね。 |
三谷 |
コメディだけをやろうと思ってる人間は
今のところ、他にはいなくて、
だから僕の存在価値もあるような気がするんです。
本当はもっともっといろいろな人たちが出て、
しのぎを削っていくようになると、
もっと面白くなるんだと思いますね。
こんなに笑いを求めているのに、
つくり手側で真剣にそれを考えている人って、
本当に少ないですから。 |
談志 |
そのためにも今の場所で落ち着いてちゃいけないやね。
「これやってりゃ稼げるのに、
三谷のバカ、あんなとこ行きやがった」と言われつつ、
来る客だけ集めて理屈つけてやる。
芸人や作家はそれができるかできないかが勝負でしょう。 |
糸井 |
談志さん自身もその勢いで……。 |
談志 |
俺はあと二年で終わることに決めたから。
決めると楽だよ。
未練はあるけど。 |
糸井 |
二年というのは? |
談志 |
二にするか、三にするか、十にするかってことで、
とりあえず二年にしたと、それだけの話だけどさ。
(終) |
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