BOOK
男子も女子も団子も花も。
「婦人公論・井戸端会議」を
読みませう。

第1回 道行く人に振り向かれても

第2回 しゃれもんの時代へ

第3回
マニュアルからはずれよう
糸井 街行く人の装いで、
どんなところに目がいきますか。
やはりニット?
広瀬 ニットは見飽きてますから。
それより、同じようなスーツの人ばかりの
通勤電車の中で、
「スーツ姿でもここがちょっと違う」
という人がいたときなんか、
ハッとしますね。
違うと言っても、以前、
ある首相が着ていたような
半袖スーツはイヤですけど。(笑)
大橋 私はブランド品を着ている人には興味ないですが、
自分好みの格好をしてる人には、
ついつい目がいきます。
そういう人は考え方も
似てるんじゃないかなと思ったりしますね。
糸井 僕には、“おしゃれ=部族説”
というのがありまして。
大橋 部族?
糸井 部族ごとに、おしゃれがある。
たとえば暴走族の人たちがいるじゃないですか。
あれはあれで部族の流れがあって、
網のサンダルとか、
風にハタハタする縮みのシャツとか、
あの世界でカッコいいとされるものがあるんですよ。
それも竹の子族なんかと違って、
もっと広がりがある。
カラスみたいはマスクしてるやつがいたり。
僕はそういうのを見てて可愛いと思う。
自分とは違うけど、OKなんです。
大橋 あの人たちなりのおしゃれね。
糸井 おっ、そう出たか、
というところにクリエイティブがあるんです。
バイクの乗り方だって、
みんな足開いて乗ってるでしょ。
あれ、すごく危ない。
教習所ではタンクを膝で押さえて乗れと教わります。
それを無理して足開いて乗ってる。
ほんとバカなんだけど、
僕はいいんじゃないのって思う。
どこか無理してるって、
もしかしたらおしゃれの大切な
ポイントかもしれませんね。
大橋 自分自身のことを考えてみても、
苦心したり、無理してますもん。
広瀬 勇気、やっぱりいりますね。
大橋 気張らないとね。
糸井 安心の中に入っていくのはつまんないですよ。
ブランドの何と何が合うというのを
一所懸命に算数みたいに計算して、
「これにはこれ」というのは、
“勉強”みたいな気がする。
それだったら、いっそ外れて、
たとえば暴走族のスタイルにいったほうが
カッコよく思える。
結局、おしゃれにはマニュアルがある
っていう考えが僕には気持ち悪いのかな。
大橋 本当は、おしゃれに決まった
マニュアルなんてないんですよね。
糸井 ピアノでも、マニュアル通りに弾けば
上手かもしれない。
だけど、聴いててつまらないというのはあります。
広瀬 上手なのと魅力的なのは違う。
糸井 でも、おしゃれ論というと、
これまでは、どうマニュアルをつくるかばかりを
みんな考えてきたみたいで……。
大橋 そして、ほとんどの人が
そのマニュアルに何とか自分を当てはめようとしてね。
私は、そういうことをしてる
自分自身がカッコ悪いと思っちゃうんですね。
今、原宿なんかで
変な格好して頑張っている子たちがいるでしょう?
糸井 います、います。
「どうしちゃったの?」と言いたくなるような
奇抜な色やデザインを組み合わせたファッションで。
大橋 あの子たち見てると、
逆にカッコいいなあって思うんです。
糸井 「いいねえ、その失敗」
と言いたくなる(笑)。
早い話、これとこれが合うって一覧表があれば、
おしゃれのフリなんかすぐできるんです。
テレビに出てるタレントさんて、
スタイリストが用意した通りの格好をしているでしょう。
ズルいっていうか、お笑いの子も
カッコよくなっちゃってるじゃないですか。
あれ、つまんないですよ。
リハーサルのときの私服姿のほうが、
おしゃれとしては下手でも、
ずっと魅力的だったりするんだな。
広瀬 私はニットの仕事の前に、
水産会社のサラリーマンをやってたんですね。
糸井 じゃあスーツにネクタイ?
広瀬 ええ。それが辛くて、
少しでも自分好みにしようと、
ダーツの入ってる白以外のシャツにしたり、
ネクタイくらいなら自分で編んだりして……。
糸井 ネクタイくらいなら、って。(笑)
広瀬 当時のことで面白かったのは、
終業時間の5時になると、
男ばかりでコップ酒飲みながら話をするわけです。
スーツ脱いで、ステテコ一丁になって。
すると、みんなイキイキとしてる。
糸井 わかる、わかる。
広瀬 暑いのに、なんでこんなネクタイ
締めてなきゃいけないんだろうと思ってたのが、
時間外になって自分らしい格好にもどったとき、
表情まで変わってくる。
おっさんには、こっちのほうがいいじゃないか、
よほどおしゃれなんじゃないかと思いました。

第4回 パンツの力

2001-04-15-SUN

BACK
戻る