BOOK
男子も女子も団子も花も。
「婦人公論・井戸端会議」を
読みませう。

第1回  男もすなる……

第2回 ヤマンバもいいじゃん!

第3回 その年齢のもつ奥行き

第4回 パック歴30年

第5回 自分の「きれい」を探そう
糸井

プロの人たちがやるメイクと
一般の女性のメイク、テクニックの他に
「ここが違う」というのはあるんですか。

その答えになるかどうかわからないけど、
昔、グレタ・ガルボを日本人にしたみたいな、
ほとんど完璧な顔の女性に
メイクしたことがあるんです。
もともと彼女が自分でしていたお化粧は
上手だし似合ってて、
特に直すべきところはなかった。
でも、僕がまた全部メイクをやり直してね。
その場では、
「あまり変わんなかった」という反応だったんだけど、
そのあと彼女が家に帰ったら、ご主人に
「いつもと顔が違うね」って言われたんですって。
「今日はきみの顔になっている」と。

糸井 カッコいいなあ。
嬉しかったですよ。
変身するとか、
何歳若返るというお化粧をするよりも、
その人にもっともふさわしい、
その人らしさが出てるお化粧をしたいって、
いつも思っていたから。
石田 キーワードは「本当の自分を発見する」
ってことなんでしょうね。
化粧を仮面だと言う人もいるけど、
素顔も自分なら、メイクをした顔も自分なんです。
メイクをして
「ああ、こういう自分もあったんだ」
という部分を見つけられると、
それが自信にもなるし。
化粧はその人のもってるニュアンス、
雰囲気を味付けすることだと思う。
そのためにも自分を客観的に見つめる作業は
必要よね。
あと、ルーティーンにしないことね。
いい方法が一つ見つかると、
ずっと同じようにしようとする。
そうするといつも同じ顔の印刷作業になって、
イキイキ感とか新鮮味が失われるんです。
その日その日で顔つきも変わるんだから、
いつも同じにというのはヘンよ。
糸井 カミさん見てるとわかるけど、
女優さんて、トータルに自分を見てる時間が長いのね。
ものすごく見てる。
そのへんは参考になるかもしれない。
自分を見るとき、
誰にも好きになれない顔の欠点っていうのがあって、
鏡をのぞくたびに、ついそこを見てしまう。
それにとらわれているために、
ほんとに美しい部分に気がつかない人が多いの。
だから、「欠点をカバーする」という言い方があるけど、
メイクで自分のいちばん嫌いなところを始末する。
覆い隠すという意味じゃなく、
気にならないように処理することは必要だと思うの。
そうすると自分のきれいなところ、よさが
見えてくるはずよ。
石田 とりたてて嫌いなところも好きなところもない、
という人もいますが。

そういうのがいちばんつらいわ(笑)。
自分のイメージや魅力をもっていないということでしょ。
化粧しにくいの。
石田さん、「化粧」って、
もともと「けはひ」「気配」という言葉から
来ているのよね?

石田 ええ。
実体はわからないけど
あたりに漂っている何かを感じることであり、
文字通り、気を配ること、でもあったんですね。
つまり化粧は、自分の意識を
周囲に向けることから始まる行為だったはず。
だから、さっきのUVガードをせずに出てしまって
そわそわしてしまう自分がイヤだって言った
さんのように、
化粧は他者に対する気遣いを伴うもので、
その気配が通じるからこそ、
相手はその人を美しいと思ったり、
品や愛らしさを感じるんだと思います。
だから化粧って、
決して一方通行のものじゃないんですね。

2002-03-22-FRI

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