第3回 りすのプロレス?
── さっき、ぱっと描けちゃうときって
りす以外の脇役キャラクターとか背景とか
他のぜんぶのイメージが
集まってくるときっておっしゃてましたが‥‥。
藤岡 はい。
── 描いていて「おもしろい絵」になるときって
どういうときですか?
藤岡 そうですね‥‥。

「おもしろい」のは、描いてる途中に
「あ、これも描こう!」って足したものかも。
── 途中で、足されるもの?
藤岡 はい、ふと思いついたアイディアというか、
ちょっとしたユーモアというか。

そういうものを、絵のなかに
入れたくなっちゃうときが、あるんです。
── すると、絵が、おもしろくなる?
藤岡 そういうときって
「ただ、りすがいる」というだけじゃなく
何というか‥‥
絵のなかでお話がはじまってるんです。
── 単なる絵じゃなく、物語になってる。
藤岡 りすのほかに、もうひとり
ちっちゃい脇役みたいなのが思い浮かぶと、
その子が、何かこう‥‥
全体の雰囲気をよいものにしてくれたり。
── へぇー‥‥。
藤岡 そのキャラクターが登場してくることで、
逆に、りすの性格が
くっきりすることもあったりしますし。
── まさに「いい脇役」の役割ですね。
藤岡 なにより、みんなが
その子のことばっかり言うんです。

「あの絵のはじっこにいたあの子、
 かわいかったね」って。
── ラインナップをじっくり見ると
けっこう変わったテーマの絵もありますね。
藤岡 わりとチャレンジしてます(笑)。

「りすがこれやったらどうだろう?」って
いつも考えてますので。
── われながら「これは珍品だなあ」っていう
テーマは、ありますか?
藤岡 やっぱり‥‥プロレス、かな。
── プロレス。
藤岡 はい。プロレスラーの高山善廣さんから
ご注文をいただいて、
プロレスのパッケージをつくったんです。
── りすの? りすのプロレス?
藤岡 そうそう。
── 高山さんて、あの、高山善廣さんという
身体の大きな、金髪の。
藤岡 そうそうそう。
── 「PRIDE男塾塾長」と呼ばれた
ドン・フライ選手と
PRIDE史上に残る壮絶な「どつきあい」を演じた
あの、高山善廣選手ですか?
藤岡 いえ、そのことは知らないんですが‥‥。
── いや、特徴からして
確実にその高山善廣選手なんですけど、
高山選手が、りすのクッキーを。
藤岡 たしか、お子さんの出産内祝いのために
何百個もご注文をいただいたみたいなんです。
── なるほど。
それでオリジナルのパッケージを描かれたと。
藤岡 どうしても、きちんと描くことができずに
お断りしたご注文もあるのですが
プロレスなら描けるわと思って引き受けました。
── はー‥‥あのりすたちがプロレスですか‥‥。
ちなみに「描けなかった」のって、何ですか?
藤岡 「GT車」とか。
── プロレスは大丈夫で、GT車はむずかしいという、
そこの線引きは、どのような?
藤岡 自分でも、よくわからなくて(笑)。
── かたくて角ばってるものがダメだとか‥‥。
藤岡 たしかに、そう、角張っているものよりは、
やわらかいもののほうが(笑)。

だからプロレスなら、描けそうかなあって。
── 何かを参考になさったんですか?
藤岡 たしか「プロレスの雑誌」を
3冊くらい買ってきて、じっくり読み込みました。
── その場面を想像すると
すみません、ちょっとおかしいです(笑)。
藤岡 でも、雑誌をずっと眺めていたら
「この技、
 りすがやったらおもしろいかも!」
とか思えてきたんです。

そうなった時点で
「わたし、プロレス、絶対描ける!」って。
── はー、その時点で「絶対描ける」と(笑)。
藤岡 けっこううまくいったなと思うんですけど
ひとつ、高山さんのパンツを
たまたま「赤パン」にしちゃったんですね。

そしたら「パンツは黒です」って(笑)。
── でも「プロレス」って、
きっと藤岡さんご自身からは出てこなそうな
テーマですよね。
藤岡 お客さまのリクエストにお応えするのって
別のプレッシャーがあるんです。

失礼があったりしたら、いけないですし‥‥。
── 「パンツが赤かった」とか(笑)。
藤岡 そう、そうなんです(笑)。

でも、自分からは出てこなそうなテーマを
描かせてもらえたりするから、
とっても、おもしろいなと思います。
── ちなみに、ご自身で好きな1枚は?
藤岡 自分では「鬼シャワー」という絵が好きです。
── あ、じょうろで雷さまが雨を降らしていて
りすさんがシャンプーしてるという。
藤岡 はい、そうです。

あのときも、描いているうちに
「あ、雨の絵にしよう」と思ったんですね。

で、雷さまが雨を降らせている絵にしたら
りすさんはシャンプーしよう、
雷が鳴っているから、おヘソを押さえて‥‥。
── 聞いてるだけで、かわいいです。
藤岡 アイディアが、どんどん足されていきました。
描いていて、とっても楽しかったんです。
── これからも、りすを?
藤岡 はい、描いていくと思います。
楽しいので、ずっと。
── 「職業意識」は、やや曖昧でありつつ(笑)。
藤岡 はい(笑)、でも、わたしの絵を
待っていてくれる人がいるんだと思ったら
やっぱり、描き続けると思います。
── ちなみに、ご自身のこと
「りす作家」って思ってらっしゃいます?
藤岡 いまは‥‥ちょっとだけ思ってます(笑)。
── 「ちょっとだけ」って、いいですね。
藤岡 もちろん「わたしりすしか描きません!」
なんて、
そんなふうには、思ってはいませんけど。
── では、今後、別のモチーフも?
藤岡 チャレンジしていきたいですね。

たぶん、人と少し変わってるんですけど、
わたしの好きな動物から。
── ‥‥変わってるというのは?
藤岡 ヘビとか、虫とか、カエルとか、カメとか
好きなんです。

だから‥‥そのあたりから。
── 方向性としては、は虫類、両生類、昆虫類。
藤岡 クッキーの箱には
ならないかもしれませんけど‥‥(笑)。
── でも、それ、
藤岡さんの作品として純粋に楽しみです。
藤岡 ありがとうございます。
わたしも、自分で、楽しみなんです(笑)。
<おわります>
2013-07-25-THU

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