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── |
以前から西光亭のクッキーの箱のことは
知ってたんですけど
「ずっと続いているお菓子屋さんの
昔ながらのパッケージ」
なんだろうと、勝手に思っていたんです。
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藤岡 |
そうですか。
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── |
だから、あのコワかわいいりすさんの絵も
もう何十年も
おなじスタイルでやってきたものであると
思い込んでいたんですが‥‥。
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藤岡 |
みなさん、そうおっしゃいます。
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── |
あ、やっぱり。
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藤岡 |
おばあちゃんみたいな画家が描いていると
思ってる人もいたりとか(笑)。
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── |
たしかに、藤岡さんが
僕と年齢が同じくらいだというのを知って
少々、ビックリしました。
厳密に言ったら「いっこ下」でしたし。
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藤岡 |
はい(笑)。
そして「ちょっと昭和っぽいな」というのは、
自分でも感じてます(笑)。
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── |
でも、歴史としては「まだ10年ちょっと」なのに
「昔ながらのパッケージ」だと
感じてたのって、
中身のクッキーのおいしさも含めた
全体的なクオリティの高さゆえ、ですよね。
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藤岡 |
そうだとしたら、うれしいです。
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── |
おもしろいなと思ったのは
藤岡さんって、もともと「絵担当」として
西光亭に入ったわけじゃなく、
はじめは
ふつうの「アルバイト」だったということです。
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藤岡 |
そうなんです。
大学で広島から出てきてすぐのころに
このへんを歩いてたら、広告を見つけたんです。
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── |
バイト募集の。
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藤岡 |
はい。
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── |
絵を描くバイト‥‥では、もちろんなく。
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藤岡 |
当時、西光亭はレストランだったので
わたしはホールのお仕事でした。
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── |
つまり、お料理を運んだりする人として
アルバイトしていたわけですね。
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藤岡 |
はい。「週2」で。
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── |
でも、それがどうして、
クッキーのパッケージの絵を描くことに?
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藤岡 |
わたし、美大に通っていたんですけど、
卒業するときに1枚、
葉書サイズの絵をプレゼントしたんです。
りすの絵を、西光亭の奥さまに。
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── |
ええ、ええ。
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藤岡 |
それから何年かしたあと、
西光亭でクッキーの詰め合わせをつくるとき
奥さまが
プレゼントした絵を覚えてくださっていて
「パッケージに描いてみない?」って。
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── |
それが、はじまり?
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藤岡 |
そうなんです。
その間もバイトは続けていたんですが、
絵の仕事になったのは、だから、それから。
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── |
これまで、どれくらいの絵を?
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藤岡 |
正確にはわからないんですけど
たぶん「200枚以上」は描いたと思います。
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── |
ぜんぶ「りす」なんですよ‥‥ね?
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藤岡 |
はい、りすです。
でも、いちばんはじめは
「りすでもパンダでも、何でもいいから」
って言われたんです。
だから、ひとまず「りす」を描きました。
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── |
はい。
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藤岡 |
で、2枚目をお願いされたとき、
「じゃあ次は、どうしましょう」と聞いたら、
「何でもいいわよ、りすで」と。
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── |
つまり「りすで」と(笑)。
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藤岡 |
そうなんです(笑)。
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── |
で、そうこうするうちに、200枚以上。
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藤岡 |
はい、描いたんです‥‥。
りすばっかり、あんなに(笑)。
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── |
しかも、お描きになった絵は
すべてパッケージ化されてるんですよね。
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藤岡 |
そうなんです。描いたものは、ぜんぶ。
クッキーの種類が増えていくたびごとに
絵も、どんどん増えていきました。
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── |
お店に、ずらーっと並んでいましたけど
すごい財産ですよね。
あれでも「一部」なんだと思いますが。
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▲西光亭の店内にはりすの絵の箱がこんなにもズラリ。 |
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藤岡 |
たしかに、同じサイズの絵を
こんなにもたくさん書き続ける画家には
あんまり会ったことないですね。
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── |
なるほど、そうか。
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藤岡 |
奥さまから
「夏の絵がないんだけど」と言われては描き、
お客さまから
「バレリーナのりすはないの?」と
ご注文をいただいては描き‥‥。
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── |
あ、そういうリクエストにも、応えて。
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藤岡 |
はい。
「えーっ、りすがバレエ!?」とか思いながら
慌ててバレリーナの写真集を見たりして。
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── |
おもしろいです(笑)。
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藤岡 |
「まさかりすがー!」とか思いながら(笑)、
いろんなりすを描いてきました。
野球とか、フラダンスとか、力士とか‥‥。
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── |
わ、おすもうさんまで描きましたか!
つまり、どっちかというと
来る球を
ひとつひとつ打ち返してきた感じですか?
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藤岡 |
あ、まさに。
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── |
それだけ同じモチーフばっかり描いてると
「いつか描けなくなるんじゃないか」
って、怖くなったりしないんでしょうか?
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藤岡 |
んー、そうですね‥‥平気だと思います。
まだ、飽きてないので。
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── |
りすに飽きてない。なるほど。
たしかに、描いていて楽しいんだったら
まだまだいけそうですね。
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藤岡 |
もちろん、日によっては
なかなか描けなかったりするようなときも
あるんですけど。
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── |
はんたいに「ぱっと描けちゃうとき」って
どういうときなんでしょうか?
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藤岡 |
りす以外の脇役キャラクターとか背景とか
「他のぜんぶのイメージ」が
急に、集まってくるようなときですね。
たまーになんですけど、
そういう瞬間が降りてきたら「よし!」と。
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── |
あたまのなかにイメージが構築されていて、
あとは描くだけ、みたいな状態?
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藤岡 |
そうです。
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── |
それがつまり「ひらめき」なんでしょうね。
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藤岡 |
いいイメージがくっきりと浮かんだら
「お願いします。
最後まで、ずうっとこのイメージで
お願いします」って。
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── |
はー‥‥。
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藤岡 |
「最後まで描かせてください」って、
そう祈りながら、描いているんです。 |
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<つづきます> |