絵を描くふたりは 国境を超えて。  アンネ・ヴァスコ(FIN) + 福田利之(JPN)  〜 ムーミンの国とカッパの国を、いったりきたりの物語 〜
福田 ‥‥インタビュー。
ぼくが、ですか。
─── はい、福田さんが。
福田 アンネさんに?
─── そうです。
本来ならば「2人展」の前に、
ほぼ日の読者へアンネさんを紹介するため、
ぼくがインタビューにうかがうべきなのですが、
残念ながら様々な事情で、
今回はそれがかないません。
福田 はい。
─── ならば福田さんに、
インタビューをお願いしてしまおう
という考えです。
福田 そうですか‥‥。
─── そもそもフィンランドへは、
「2人展」のために行くんですか?
福田 や、そうではないんです。
『雑貨カタログ』という雑誌のお仕事で。
─── あ、そうでしたか。
じゃあたまたま「2人展」の直前に
フィンランドに行くことになった、と。
福田 そうです。
─── 『雑貨カタログ』さんのお仕事で行くとなると、
あまり勝手には動けない‥‥?
福田 うーん、
そちらの取材がまずはありますから。
‥‥でも、アンネさんには会うんですよ。
─── じゃあ、できますか、インタビュー?!
福田 『雑貨カタログ』のみなさんはいい人たちですし、
たぶん大丈夫だと思います。
─── やった!
じゃあ、これがICレコーダー。
使い方は簡単、
赤いボタンを押せば録音です。
福田 は、はい。
─── あと、これは動画用のカメラ。
やはり赤いボタンで録画できます。
福田 動画?
─── 持っていく理由はのちほど。
そして普通の写真。
デジカメは、お持ちですよね?
福田 あ、はい。
─── それで撮っていただければオーケーです。
撮影は森下さんに
手伝っていただくとうまくいくと思います。
福田 ‥‥わ、わかりました。
でも、あの、
インタビューってどないしたら‥‥?
─── それはもう、
雑談のようにおしゃべりしていただけば。
福田 おしゃべり‥‥。
でも何か質問した方がいいんですよね。
─── たとえば‥‥
子どものころの話とか。
どうして絵を描こうと思ったんですか? とか。
福田 ああ‥‥。
─── 大丈夫です。
福田さんがインタビューをすれば、
それだけでもう、たのしい感じになるはずです。
福田 そうですか‥‥。
じゃあ、がんばっていろいろ訊いてみます。
─── よろしくお願いします。

‥‥それで、先ほどの、
動画カメラを持っていく理由なのですが。
福田 はい。
─── ここからは編集者というより、
ちょっと友人としての話になります。
福田 お、なんでしょう。
─── ぼくは、今回のこの「2人展」、
国境を超えた、このつながりが、
ほんとうに大成功になればいいと思っています。
福田 ありがとうございます。
─── つきましては、
こういうときに大切なのはやっぱり、
「ふたりの魂がどれだけつながるか」
じゃないかと思うんです。
福田 魂の話ですか。
ソウル、ですね。
─── そう、そう。
ことばって、もどかしいじゃないですか。
森下さんというすばらしい通訳のおかげで、
意思の疎通はなんの問題もないと思います。
でも、
今回たいせつなのは
ことばを超えた「魂」だと思うんです。
福田 はい。
─── 魂をつなげて、
最高の「2人展」にしてもらいたいんです。
福田 ありがとうございます。
─── 魂がつながるもの。
国境を超えて魂がつながるものといえば、
それは音楽ですね。
福田 ‥‥‥‥なにを言ってるんですか。
─── 歌はあらゆる垣根を越えます。
福田 あのね(笑)。
─── というわけで。
福田 というわけで、やなくて(笑)。
─── 福田さんにはぜひ、
日本の歌を、
アンネさんに聴かせてあげていただきたい。
福田 もう、わけがわからない(笑)。
─── その様子を動画でお願いします。
福田 あ、それのためか!
─── いいですか、
「笑かそう」とか、
そういうことを思って歌ってはいけませんよ。
福田 もちろんです。
ふざけたりは、ぜったいにしません。
─── ‥‥あ、歌ってくれるんですね!
福田 あのね(笑)、
‥‥じゃあ、わかりました、歌います。
─── すばらしい。
それでこそ、ぼくの好きな福田さんです。
福田 もう、なんでもやります。
─── フィンランドと言えば、森ですよね。
せっかくなので、
森の中で歌うというのはどうでしょう?
福田 ちなみに今度の「2人展」、
テーマが「森」なんです。
─── ほらぁ! ビンゴぉーーー!
福田 なんで急にテンションあげるんですか。
なにがビンゴですか。
─── ここまで「森」が続いたら、
あれですね、
やっぱり森進一さんの曲がいいですね。
福田 ‥‥‥‥。
─── あれですね、
やっぱり森進一さんの曲がいいですね。
福田 ‥‥森が進んで一番の、森進一。
─── そうそうそうそう!
森が進んで一番!
福田 はい。
─── さあ〜、すごいことになりましたよぉ。
フィンランドの森の中で、森進一。
そんなことをした日本人は
たぶん今までひとりもいないと思います。
福田 ええ、誰もしないと思います。
─── 何がいいですかね、曲は?
福田 曲‥‥。
─── 『襟裳岬』とか? 変か。
福田 変ですよ。
そこはぜったいに「襟裳岬」じゃないですから。
─── 何もないかもしれないけれど?
福田 何もないかもしれないけれど。
─── うーん‥‥。
福田 ‥‥他の曲だと‥‥。
─── 『冬のリヴィエラ』という曲もあります。
福田 あっ、最高です。
─── 最高ですか。
福田 最高です。
─── 最高なんですね。
福田 それ、最高です。
『冬のリヴィエラ』アキラ・コバヤシ。
ちがう、大瀧詠一だ。
─── そうです、作曲・大瀧詠一。
なんでいま
アキラ・コバヤシって言ったの?
福田 言ってませんよ。
─── 言いましたよ。
福田 言ってないなあ。
─── アキラ・コバヤシ。
小林旭と、どういう関係が?
福田 ‥‥なんで小林旭って言ったんですかね?
まあ、いいです。
とにかく『冬のリヴィエラ』は最高です。
─── では、
『冬のリヴィエラ』を練習しておいてください。
ちゃんと歌えるように。
福田 いや、歌えますね。
─── いつでも歌えるんだ。
福田 はい。
─── 歌詞カードはどうしましょう。
福田 覚えてるんだけど、
念のため自分で用意していきます。
─── じゃあ、もろもろ、
よろしくお願いします。
福田 やっぱり『冬のリヴィエラ』ですよね。
いい、すごくいい曲です。
─── いつのまにか前向きになっていただいて、
うれしいです。
福田 やるからには、がんばります。
─── アンネさんという
ひとりのアーティストを紹介するかたちとしては
ものすごく、いま、
斬新でおもしろい導入になってるような、
ぼくはそんな気がしてなりません。
福田 それはなによりです。
‥‥あ、もう、こんな時間や。
旅の準備がこれからなので、
ぼちぼち帰らせていただきます。
─── あした出発ですものね。
福田 はい。
これ、たしかにお借りします。
─── 道中、気をつけて。
福田 ありがとうございます。
─── 森で歌って、インタビューして。
その報告は、
またこの和室でうかがいます。
福田 わかりました。
─── では、いってらっしゃい福田さん。
福田 いってきまーーす。
(つづきまーーす)

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2011-04-28-THU