絵を描くふたりは 国境を超えて。  アンネ・ヴァスコ(FIN) + 福田利之(JPN)  〜 ムーミンの国とカッパの国を、いったりきたりの物語 〜
福田 ただいまー。
─── あ、福田さん、おかえりなさい!
福田 や、どうも、どうも、どうも。
─── ま、ま、お座りください。
福田 あ、すんません。
ほい、ほい、ほい‥‥よっこらしょ、と。
─── お疲れさまでした。
えーと‥‥何日いってたんでしたっけ?
福田 えっとですね、約1週間ですね。
─── 1週間。
あっという間ですね。
福田 そうですね、ほんまに。
‥‥まずは忘れないうちに、
お借りしてた器械をお返しします。
─── ありがとうございます。
さっそくデータを取り込みますね。
(パソコンを操作)
福田 やってきましたよ、慣れないことを、
─── 「歌」と「インタビュー」を。
福田 一所懸命がんばってきました。
─── 期待しています。
福田 それなりにしかできなかったです。
─── いやいやいや。
福田 ほんとに。
─── なにはともあれ、
写真などを見ながら、
どんな感じだったかを
ご報告いただけますでしょうか。
福田 わかりました。
アンネさんには、2回お会いできたんですよ。
2日間、続けて。
─── そうでしたか、それはよかったです。
福田 1日めは、森にいきました。
─── ‥‥森へ!
例のミッションのために‥‥。
福田 森のこういう場所で、火をおこして。
─── アンネさんのご主人、ヤーッコさんですね。
‥‥あ、ケーキ。なんで?
福田 たまたま、ぼくの誕生日だったんですよ。
─── へええー。
わあ、こんなに祝っていただいて。
福田 ありがたいことです。
で、やかんコーヒー
っていうのがフィンランドにありまして。
─── やかんコーヒー。
福田 これが、そのやかんです。
プレゼントしていただきました。
─── いいですねえ、かわいい。
使いこむと、この写真みたいになるんですね。
福田 そうです、こんなふうに火にかけるので。
─── ダイナミック!
福田 やかんコーヒー、
ほんとにおいしかったです。
─── いいですねえ、アンネさんといっしょに。
お誕生日のお祝いはしてもらえるし。
‥‥ああ、こんな感動的な場面も。
福田 これは相撲をとってるわけではありません。
─── カッパが相撲好きなことは知っていますが、
これが相撲でないことはわかります(笑)。
「誕生日おめでとう」の抱擁。
故郷を越えてますねー。
‥‥それにしてもヤーッコさん、男らしい。
福田 森に入ると、ますますなんです。
─── ますます男らしい存在に。
福田 頼もしいんです。
─── 惚れましたか。
福田 だれでも惚れますね。
─── 抱かれてもいい。
福田 抱かれてもいいです。
─── 抱かれてますね。
福田 ふぉふぉふぉふぉ(笑い声)。
─── ふたりでふざけてばかりは、もうやめましょう。
本題に戻りますよ!
福田 はい、よろしくお願いします。
─── 例のアンネさんとの「魂のつながり」は、
この森の中で行われたのでしょうか。
福田 そうです、この森で。
─── この森で、森進一を。
福田 『冬のリヴィエラ』を。
‥‥あ、そうや。
─── なんですか。
福田 たまたまなんですけど
アンネ・ヴァスコさんの出身地は、
「北のリヴィエラ」と
呼ばれている場所なんだそうです。
─── きた、これ、ビンゴぉ!
福田 いや(笑)、だから、
そんなにビンゴじゃないですから。
ほんとに単なる偶然ですから。
─── でも、うれしい偶然じゃないですか。
フィンランドの森で、
森進一さんの『冬のリヴィエラ』を歌おうとしたら
アンネさんが『北のリヴィエラ』出身だった!
福田 ‥‥はい。
─── ともかく‥‥みましょうか。
福田 ‥‥はい。
もう、どうとでもなれと思います。
─── ‥‥そ、そんなに?(再生ボタンをクリック)。
(ふたり、しばし動画をみる)
福田 ‥‥‥‥という感じですね。
─── ‥‥‥‥‥‥‥‥。
福田 ‥‥‥‥どうですか。
─── ‥‥‥‥ああーーー。
福田 ‥‥ぼくの精一杯です。
─── 福田さん、「歌える」って言ったじゃないですか!
福田 歌えるということと
上手に歌えるということは別のことです。
─── ‥‥なんで、なんでこんなに
高いキーで歌ったんですか?!
福田 ものすごく寒かったんです。
寒いと「ヒー」ってなるじゃないですか、
その「ヒー」っとする感じが、
そのまま歌い出しのキーになりました。
─── 横でアンネさんが
いたたまれない表情をされてましたよ。
福田 申し訳ないことをしました。
フィンランドを代表する絵本作家に
歌詞カードを持たせてしまったし‥‥。
でもぼくは、
言われたことをやるのに精一杯で。
─── ‥‥‥‥あの、福田さん、
この歌声を公開することは、
もしかしたら福田さんのイメージというか、
イラストレーター生命に関わるかもしれません。
福田 そこまでですか。
─── けっこう、「そこまで」だと思います。
あぶないです。
なので、これをお蔵入りにすることもできますが、
どうしましょう‥‥?
福田 ‥‥うーーーん‥‥。
─── ‥‥‥‥。
福田 ええと‥‥。
─── ‥‥‥‥。
福田 ‥‥イキで。
「公開」で、お願いします。
─── そうですか!
福田 せっかくですので。
一所懸命に歌った気持ちに、嘘はないので。
─── そのこころいき、わかりました。

それでは公開いたしましょう。
フィンランドの森で
森進一さんの名曲『冬のリヴィエラ』を、
福田利之さんがこころだけをこめて歌います。
技術は、ありません!



(つづきまーす)

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2011-04-29-FRI