ふみこ
さん |
アンリが、福森さんの包丁を研いでる姿に
感動してました。
もう包丁と一体化してた、って。 |
福森 |
あー、そう。 |
三浦 |
福森さんのここの場所がいいよっていうのは
いろんな人から、聞いてたんですよ。 |
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福森 |
だけど、商売とちゃうからね。 |
三浦 |
ですからここだけは自分にとって
特別な場所としておいてあって、
糸井さんから誘っていただくまで
行かんとこうと思って。 |
福森 |
はははは。 |
三浦 |
今回は、ぼくがずっと前からつきあってる
アンリと一緒やって言うから、
ぜひにと参加させていただきました。
もうぼくにとってはね、
自分の中でほんとに尊敬するふたりなんですよ。
そのふたりが、組んで物を作ってるんやから、
もう、ほんとうれしくて。 |
福森 |
はははは。 |
糸井 |
この集まり方はちょっとなかったですね。
思いついてよかったですね。 |
三浦 |
いやー、うれしかった。
これはうれしい。 |
ふみこ
さん |
アンリもほんとに陶器が好きで、
一度は作ってみたい、
いじってみたいって常々言っています。
今回こういう機会を与えてくださって、
もう、ほんとにすごい興奮しています。 |
糸井 |
福森さんがいなければ
こういうことはできないです。
焼物でも、いまじゃどこでも
工場みたいなもんでしょ。
ここは、生活の中にあるんですよね。 |
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ふみこ
さん |
さっき、工房を見学させていただいて、
アンリが、土楽のみなさんを
このままうちに
持って返りたいぐらいって。 |
糸井 |
このまま(笑)?! |
三浦 |
そんなにイタリアの「ものづくり」の事情が
深刻って知らなかったです。 |
ふみこ
さん |
深刻ですよ。 |
三浦 |
ちょっと夢の国のイメージがあったけど。 |
ふみこ
さん |
かなり深刻ですね。
手づくり離れ、みたいな。 |
糸井 |
市場がないから、
食っていくのが心配なんですよね。 |
ふみこ
さん |
そう。
だから、大量生産の方にいっちゃう。 |
糸井 |
どんどん売れて人気があれば、
手づくりのもの、やりたいですよね。 |
三浦 |
アンリさんの工房で働いてる人は? |
ふみこ
さん |
悲しいかな、どうしても、やっぱり。
なんていうんだろう。
価値観がちょっと‥‥。
そのことで、アンリがけっこう苦しんでいます。
おなじレールを走ってもらいたいっていうのが
あるじゃないですか。
でも、やっぱりね。
個人の生活が、もちろんありますから。
糸井さんは、
福森さんの作陶のようすを
見られたことは? |
糸井 |
ないんです。
記録映像で見てるだけ。
福森さんはいつも料理人(笑)。 |
福森 |
わたしはひと月に1回だけ、
教室持ってるんですよ。 |
糸井 |
そんなことしてらっしゃるんですか! |
福森 |
名古屋に持ってるんですけど、
ある時は寿司屋を呼んで、
自分で作った物にこう、乗せてもらう。
そしたらみんな喜んでねぇ。
そういう教室なんだ。 |
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ふみこ
さん |
いいですねぇ。 |
糸井 |
いいに決まってますよ。
何名ぐらいですか。 |
福森 |
24、5名おりますかねぇ。 |
三浦 |
いいなぁ。 |
糸井 |
そこでろくろを回すんですか。 |
福森 |
ろくろ回したりね、手でしたりね、
わたしはね、できない人は無理するな、
膝でやれといいます。
粘土をこうしてね、
膝でこうしたらね(押し当てて形にする)、
お皿になるんですよ。
これが縄文とか、もともとの基本だから、
立派な物を作る必要ない。
それの方がいい。
あなたがいっぱい手をかけすぎると、
あなたの業が全部出てますって言って(笑)。
だから、作るの、ほんとに楽しんでもらったら
いいと思ってますから。
いわゆる陶器屋さんの作ったもんはね、
そんなおもしろいもんないですから。
三浦さんは、中村さんのところ(*)、
何年ぐらいおられたの。
*京都の数寄屋大工棟梁の中村外二さんのこと。 |
三浦 |
ぼくは、先代の親方の
最後の3年半です。
ほんとに、ごくわずかなんですけど、
すごく意味がありました。 |
福森 |
先代、いい顔されてたもんねぇ。 |
三浦 |
はい。最後の数ヶ月は
ずっと病院におられたから、
月に一回ぐらいかろうじて工場を
回られるぐらいだったんですよ。
しかし、おられることで
もう緊張感がちがうんですよね。 |
糸井 |
そういうのってあるんでしょうねぇ。
福森さん、自分のこと考えませんか。
自分がいなくなったときのこと。 |
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福森 |
ええ?
潰れるでしょう。
わっはっは。 |
ふみこ
さん |
そんな簡単におっしゃらないでください。 |
糸井 |
いろんな思い、ありますよね。
アンリさんだってそうですよね。
アンリがいなくなったときに、
あの工場が、どうなるのか。 |
ふみこ
さん |
そうですねぇ。 |
福森 |
だけどねぇ、
なにか一所懸命やる人が出てきてくれたら、
いいなというだけの話でね。 |
糸井 |
歴史って、混血して、続きますよね。
そばにいる人以上に、
他の人が、ちがう何かを作りますよね。
そうなる期待はありますよね。 |
福森 |
やっぱり文化に厚みが増していくからね。 |
糸井 |
もしかしたら、土楽が
革の工房になってるかも。 |
一同 |
(笑) |
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福森 |
いや、なんでもいいんですよ。 |
糸井 |
わかります、わかります。 |
福森 |
なんでもええやん、もう。
星を眺めてぼーっとしてるやつがおったとかね。
なんでもいいからね。 |
糸井 |
それも土楽ですよね。 |
福森 |
うん。
(つづきます) |