福森 |
糸井さん、
イタリーでやろうよ。
この雰囲気を。
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糸井 |
おもしろーい。
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福森 |
わたしイタリー行って料理するから。
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アンリ |
冗談抜きでほんとにいらしてください。
冗談ぬきで。
ぼくは裸になって、
ぼくのありのままを見せます。
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福森 |
いや、おもしろいねぇ。
たまには、羽目を外して、
心を離さんといかん。
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糸井 |
絶対自分のこと言ってる。
自分のことだよ、福森さん。
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福森 |
たまにか? はははは。
いつもだな。
糸井さんはこんな飲み助と
一緒に行きたくないと思ってるからね。
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糸井 |
ぼくは我慢ができるんです、意外と(笑)。
父親が飲み助だったから、慣れてる。
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福森 |
わたしは案外ね、ひとりでゆっくり
がんばって飲むほうだから。
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糸井 |
誰も飲まなくっても俺は飲むっていうね。
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福森 |
そうそう、そうそう。
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ふみこ
さん |
ご家族の方はあんまり相手しない?
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福森 |
子どもは飲むのよ。
うちの奥さんは飲まない。
だから、わたしの全部を
しらふのままの奥さんが知ってるから、
具合悪いよね。
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アンリ |
だから奥さんなんですよ。
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福森 |
はははは!
やっぱり、羽を広げるところが
なかったらいかんよ。
奥さんではもう、
ちょっと羽が狭まってるから(笑)。
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アンリ |
羽がない人もいますよね。
羽がない人は広げられない。
でもぼくたちは羽を持ってるんです。
ときには集中して、
そしてきちんと切り替えができるから。
羽を持ってない人が飲むのと、
羽があって飲むのとでは、
意味がちがいますよ。
だからぼくたちは
飲んでもいいんです。
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福森 |
あはははは。
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糸井 |
アーティスト同士、
おんなじこと言ってるね。
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ふみこ
さん |
ただ、日本語話してるか、
イタリア語話してるかのちがいですね。
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アンリ |
今度は一緒に陶器を作りましょう。
それとも陶器を縫いましょうか。
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福森 |
なんでもいいの。
そんなんなんでもいいの。
だけど、それはね、
ほんとに情熱があるかどうかの差です。
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ふみこ
さん |
アンリもおんなじこと言ってます。
情熱。
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糸井 |
うらやましい‥‥。
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福森 |
ぱっとなんでも感動できるという、
そういうものがあるかどうかの問題だけですよね。
特別なことじゃないことでね。
だけど自分で感じてんのよ。
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糸井 |
自分で感じて自分で決めている人達。
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福森 |
わがままなのよ(笑)。
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糸井 |
そうですね(笑)。
芸術家だから。
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福森 |
いや、芸術家じゃない。
そんなんね、職人でも一緒なんだよ。
わがままを許す日本人が今いないんだよ。
昔はいたの、
「あの頑固親父!」って言って、
おったんだけど、
今ね、日本人はね、この、
なんか決まり決まったようなところがあるわけ。
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糸井 |
立ち小便一つ出来ないですよね。
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福森 |
日本の文化もね、俺はね、
ほんとに消えると思う。
表面だけの文化を守っているだけだもの。
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三浦 |
だからぼくたちのやっていること(*)は、
糸井さんからは
断末魔って言われてるんです。
*三浦さんたちは、琵琶湖の底に沈んでいたような木や
古いお寺の石などを引き継いで、
現代の住宅などに使うような建築をしています。
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福森 |
ははは、断末魔。
俺のとこね、芸大出とか預かって、
その習ったことをいかになくするか、
というのに一年かかるんだよ。
一年かけてもなおらないんだけど。
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糸井 |
うん、うんうん。
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福森 |
バカな概念だけを教えてるんだ。
大学ってね、概念しか教えてない。
だめ。
直感とかね、感覚の問題をね、
もっとちゃんと教えて。
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糸井 |
メッキが邪魔しているんですよね。
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福森 |
できる連中を集めてこないかん。
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糸井 |
ひとりずつ探すしかないんですよね。
まとめて探せないんですよ。
ひとり会ったらその人と、
ひとり会ったらその人と、というふうに。
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福森 |
昔はね、職人っちゅうのはね
「俺の技術をおまえできるか?」
というのが、いーっぱい、いたんです。
今ね、そんな奴がおらんねや。
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糸井 |
イタリア、もっといないんですって。
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福森 |
ああ、そう。
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アンリ |
どういうふうにして、
陶器の世界に入ったんですか?
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福森 |
子供の時から好きも嫌いもなくって
粘土があって。
このわたしで七代目だから。
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アンリ |
ぼくは、まだ一代目なんです。
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糸井 |
ああ、そうだ。
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福森 |
わたしはね、一代目と思ってるから。
親父のことは全部ゼロ(笑)。
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アンリ |
今の言葉すごく、心に感じます。
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福森 |
みんな、そうなんだよ。
陶器とか、先祖から伝わったことが
大事だと思って、大事に守ってるんだけど、
守ったってしょうがないよ。
自分が感動して、
自分が求めて行かなかったら
そんな伝統なんてない世界ですから、
わたしは。
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糸井 |
福森さん、お酒を飲んでも
すっと、素になりますね。
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福森 |
真剣勝負ですよ、そういう意味ではね。
でも楽しくやりましょう。あはは。
(つづきます) |