アンリ |
福森さん、糸井さん、
ぼくたちは恵まれていますね。
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福森 |
ああそう、おお、いいねえ。
当たり前だ、
恵まれなかったら選ばれないんだから。
そらね、静かに選ばれるっちゅうのはね、
いちっばん大事なことです。
これはねぇ、もう大変なことです。
表面で流行るという問題じゃないからね。
その辺をね、この人はね──、
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糸井 |
わかってますね。
一代の人ならではの、わかり方を。
ゼロからですもんね。
福森さんは、結局ゼロからに
しちゃったんですよね?
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福森 |
そう。
わたしとこの先祖は信長に殺されたから。
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糸井 |
アンリさんに通訳して、
急に信長が出てきたら
びっくりするでしょうね(笑)。
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アンリ |
あの、失礼な質問ですけれども、
なぜ殺されたんですか?
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福森 |
信長が伊賀の忍者が怖かったんです。
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糸井 |
福森さん忍者なんですよ。
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福森 |
あはははは。
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糸井 |
実際そうでしょう?
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福森 |
先祖は忍者なんだけど、
わたしはね、地図がわからない(笑)。
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ふみこ
さん |
地図がわからない(笑)。
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糸井 |
道歩さんを見てると、
忍者ですよね、あれ。
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福森 |
ああ、そうかねぇ。
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糸井 |
このあたり、
道に何か食べられる花が
咲いてたりするじゃない。
それを車を運転していて横目で見つけて
「あった!」って言うんだもん。
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ふみこ
さん |
あははは。
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福森 |
そら当たり前よ。
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糸井 |
当たり前じゃないですよ(笑)。
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福森 |
家訓ですわ。
車で走ってて、食えるもんか、きれいな花か、
ちゅうのを見分けるのは、あたりまえじゃろう。
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一同 |
(笑)
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アンリ |
じゃあ全ての草はご存知なんですね。
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福森 |
うん。
でね、忍者というのは、
上忍、中忍、下忍っていうのがあって。
下忍っていうのが走ったり、
手裏剣投げたりするんです。
お殿様と対話して、
その情報を得るというやつは、上忍。
俺らのところは、下忍だよ。
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ふみこ
さん |
ほんとにみなさん忍者なんですか?
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福森 |
そうですよ。
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糸井 |
ここは、名古屋も、京都も、奈良も、
全部近いんですよ。
ここで情報仕入れて
あっちに売ってとか、
そうやって生き延びてきた場所です。
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福森 |
敵味方じゃなしに、
高く買ってるところに情報を売ったんだから。
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ふみこ
さん |
今でいえば、ジャーナリスト?
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福森 |
そうそう、
ジャーナリストの祖先ですよ。
ははは。
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一同 |
(笑)
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三浦 |
そういう意味では、
糸井さんっていうのはね、
現代の忍者ですよ。
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福森 |
ああ、そうやな。
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糸井 |
落ちこぼれのね(笑)。
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三浦 |
いや、ほんとに。
だから、今のね、
福森さんが言っておられることを
たぶんね、素でやっておられる。
糸井さんは。
この場だって、
糸井さんが仕組んでいるから。
それは忍者ですよ。
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福森 |
俺なんか、仕組まれてんだね。ははは。
この糸井さんっていう、
こんなおもしろい男が
いるちゅうのも腹たつんやけどね、
こんなんいらんと思うんやけど、
やっぱり出てくるんや。
ははは!
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ふみこ
さん |
糸井さんが福森さんと
アンリとをつなげるっていうのは、
すごいなと思って。そういう勘が。
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糸井 |
だって、おんなじ人じゃないですか。
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ふみこ
さん |
よくわかりましたね。
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糸井 |
同じ人だったでしょ?
きっと、悩みも同じなんですよ。
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ふみこ
さん |
ほんとですよね。
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アンリ |
初めて感じたことかもしれないんですけど、
日本人は、あんまり目も合わせないし、
はじめて会った時も握手もしないし、
それが日本の文化でもあるんですけれども、
なのに、今日は、もうほんとに‥‥。
それが、とてもうれしくて、
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糸井 |
アンリさん、結構、
気つかってんだよね。
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ふみこ
さん |
ほんとはさわっちゃいけないんじゃないかとか、
抱きしめちゃいけないんじゃないかとか。
ほんとはアンリはみんなを抱きしめたいんです。
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福森 |
抱きしめたかったら、
抱きしめたらいいんだよ。
そうでしょう?
日本も昔はそうだったの。
ただね、表現がちょっと江戸時代から
変わってきただけの話なんですよ。
いや、すばらしい。
こないしてね、イタリーの人とね、
こころが一緒になるなんて、
うれしいことじゃないの。
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アンリ |
糸井さんの知性と愛情がなかったら
ぼくたちを引き合わせるっていうことは
なかった。
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福森 |
いや、そうです、そうです。
この人に任したらいいの。
任す、ということは、
一緒に死ぬというくらい
信用してるということなんだから。
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糸井 |
はい、一緒にいきましょう。
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一同 |
(笑)
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福森 |
しかし俺は酒飲みだからね。
酒を飲まない糸井さんを信用できるか?
これ、信用できるか?(笑)
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アンリ |
そう、ぼくも、
今それを言おうと思ってた。
それでも糸井さんの信頼っていうのは、
当然のことっていうか、自然ですよね。
次元の違う信頼っていうことですね。
信用する前に、もうぼくはひきつけられてる。
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福森 |
そう! そう!
次元の違うところでやろうや。
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糸井 |
ふたりの話を聞いていて
今も思ったんですけど、
“丸裸しかない”ですね。
ぼくね、
そういうお通夜がやりたかったんです(笑)。
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一同 |
(笑)
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糸井 |
お通夜で、そういういろんなうわさ話されるの、
一番楽しいじゃないですか。
生きてるうちじゃ、もったいないから。
(つづきます) |