糸井 |
今度事務所を引っ越すときは、
三浦さんに内装を頼もうと思ってるんです。 |
福森 |
それ言うたらね、
俺ね、今度、ひとりで‥‥。 |
糸井 |
隠れ家ですか? |
福森 |
そう。西行みたいな、
なんでもええんやけど、
ちょぼっとした家を作りたいんやけど。 |
糸井 |
へえー。
聞いちゃった。 |
三浦 |
聞いちゃった。 |
糸井 |
ここから逃げて? |
福森 |
逃げて。 |
|
一同 |
(笑) |
福森 |
風呂と便所と、
ちょっとだけあったらええんや。 |
糸井 |
それからちっちゃな台所? |
福森 |
そう。 |
糸井 |
そうすると料理の
下ごしらえしてくれる人は
どうするんですか。 |
福森 |
いや、そら、
来たいひとは来たらええね。 |
アンリ |
ぼくも泊まりに来ていいですか? |
福森 |
いいよー。 |
糸井 |
狭いよー。 |
三浦 |
狭いよー。 |
アンリ |
ぼくは問題ないです。 |
糸井 |
若い時の下宿ってそうだったよね。 |
アンリ |
え、今もう若くないんですか? |
福森 |
もう66だから。 |
アンリ |
66、それは数字だけであって。 |
|
糸井 |
アンリとぼくと同い年なんです。
61です。 |
アンリ |
Io penso che... |
福森 |
イオペンソケ? |
ふみこ
さん |
『ぼくは、こう思う』。 |
福森 |
いや、いいねぇ。
俺も言いたい。
イオペンソケ! |
糸井 |
イオペンソケ! |
アンリ |
イオペンソケ、ぼくたちにとっては、
「若い」「歳をとってる」
っていうのは、全然重要じゃなくて、
ここに今存在している、
その存在のかたちが重要なんです。
歳、じゃないんですよね。
もう、その存在、
今ある存在がゼロっていうことが、
ぼくたち3人にとっては
重要なことじゃないのかな。 |
福森 |
そうです、そうですよ。 |
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アンリ |
今、そういうことを考えながら生きていくと、
歳は重ねるかもしれないけど、
重ねるごとに自分の中が豊かになってるから、
もっともっと内面的に、若くなって、
どんどん歳ってことがわからなくなる。 |
福森 |
ものごとがわかる、っていうのは、
若くなるのよ。
それを表してんのが、
こういう世界なのよ。 |
アンリ |
だから何かをつくるっていうことは、
どんなちっちゃなことでも、
全身全霊を入れようと思わなくても、
自然に出てくるものだから。 |
福森 |
そう! そうなんよ。
そうなん。
自分から求めて
出てくるもんじゃないんだよ。 |
アンリ |
それがもう最高のものとして、
毎回、毎回、作られる。 |
福森 |
それは自分に与えられた仕事なんですよ。 |
アンリ |
そうですね。 |
福森 |
これ、当たり前のことを言ってんですよ。
だけどね、当たり前のことが
日本人にいま伝わらないっちゅうのは
おかしいよな。 |
糸井 |
以前、福森さんがおっしゃっていたのは、
むかしの無名の人のものにはかなわないと。
むかーしの無名の人が作ったものを、
現代の名工がつくってみせても、
届かない、って。 |
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福森 |
そう。
だけどそれをね、
判断する人がいないのよ、いま。
いま「これは、そうだ」という人がおらない。
桃山時代がいいんだとか、
だれそれがいいんだとか、言いますね。
なにが、いいんだ?
俺はそう思うわけ。 |
糸井 |
「いい」とか
言われるうちはだめですね(笑)。 |
ふみこ
さん |
ああー。
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福森 |
なんで民芸ってあんなに、
おもてに出なきゃなんないんかなーと。
思うわけよ。
民芸は、表に出たら民芸じゃないんだ。
そういう悲しい問題もあるんだけど、
だけどそれをわかってる人が‥‥、
中央におらないんですよ。
いやー、
これはちょっとむつかしい問題だね。
(つづきます) |