いまだにガンという漢字が書けない。
ショックで受け入れられていないとか
心境の問題はなく、学力の問題だ。
入院や引越しを余儀なくされ慌ただしくなり、
狩猟どころではなくなった。
僕のガンの自覚症状は激痛と体が急激に老いることだ。
激痛で横になることもできなくなり夜も眠れない。
ソファーに腰掛けて毛布にくるまり
30分ぐらいの睡眠と痛みで目が覚める
というセットを夜中に繰り返す。
睡眠不足で思考力が低下することや
痛みから解放をされたいという願いから自殺を考えた。
なんてことはない、山に行って散弾銃で心臓を撃つだけだ。
上手く誤射を装えば猟友会が加入する
ハンター保険で死亡保険金が3000万円おりる。
苦しさから解放されて家族にお金も残せる、悪くない。
他の狩猟者に迷惑がかかるとか
家族が悲しむとかどうでもよくて、
まともな心理状態ではいられなかった、それがガンだ。
ガン患者は健康な人に比べて自殺率が20倍も高い。
数値で見ても驚くが、
自殺したい人の気持ちを死ぬほど理解できた。
──幡野広志 ブログ『最後の狩猟。』より