糸井 | 村でいちばんの可愛い子が、 この旗を織ることになってるっていう 設定があったじゃない? だからこの子が可愛いっていうのは、 無条件でオッケーなんですよ。 で、よく見ると、この子以外に この年ごろの女の子は あんまり出してないんですよね。 で、競争じゃないものにしてるんですよね。 そのへんもけっこう微妙に、 相当上手なさじ加減をしてると思うんですよ。 そこはね、二度目観たときにふと気づいたの。 女の子同士で、ぺちゃぺちゃ 井戸で喋ってるなんていう機会はなくて、 必ず井戸に行ったら男が 「俺が汲んでやるよ」っていうやつが出てくるし、 もうこの子だけなの、若くて可愛いのは。 そのへんがね、また映画観てる人に 違和感を感じさせない何かが。 |
吉本 | 全然違和感感じなかったですよ。 |
糸井 | でしょう。こいつにライバルがいて、 「私もあの先生好きなんだけど」 っていう、もうちょっと不細工な子出したら、 あの物語はぼーん、ですよ。 |
吉本 | たしかに(笑)。そういえばそうですね。 この子しかいませんでしたよね。 |
糸井 | だから素人にはつくれない映画なんですよ。 餃子っていう設定もね。 たぶんものすごくきっと旨いんだと思うんだよ。 他の料理は知らないけど。 |
吉本 | いや、餃子はもうほんとに私は。 |
糸井 | 水餃子? |
吉本 | もう素晴らしいものでした。 |
糸井 | ご馳走であり、誰でもつくればつくれるもので、 旨い不味いはきっとあるだろうし、 時間もかかるし。 |
吉本 | で、餃子ってね、 中国の人たちにとっては、 たとえば日本でいう、家族が一年に一回 集まったときにつくるお料理なんですよ。 で、家族でつくって、 家族の親睦を確かめるというお料理なの。 |
糸井 | なるほどねえ。 |
吉本 | ほんと上手ですよね、餃子。 |
糸井 | もう食器なんかでもさ、 そのまま欲しいくらいになっちゃいますよね。 |
吉本 | うん。 |
糸井 | あれ粗末な食器なはずですよね。 |
吉本 | そうですよ。 それでちょっとしかないんですよね、枚数も。 |
糸井 | そうだよね。 |
吉本 | それを扱って、 次から次に使い回すっていうか、 上手だなあと思う。 |
糸井 | 丼の蓋がしまらない分量をのせてるあたりの演出も、 素人にはできないよね(笑)。 |
吉本 | 上手ですよ。 |
糸井 | お弁当の蓋が、のせただけでちょっと 天丼のランチみたいなね、 あの盛りつけも、 ツーと言えばカーな分量入るんだよね。 |
吉本 | 食べ物の映像だけでも、 すごいなあと思っちゃう。 |
糸井 | あとね、二度目に観て気づいたのは、 お弁当を丼に盛って蓋して、 そこがはみ出してる状態つくって、 縛るところで布の扱いがものすごい雑なんですよ。 あれは映画的約束だと思うんだけど、 本当に運ぶときには。 |
吉本 | もっとね。 |
糸井 | もうちょっと丁寧じゃないと、 こぼしちゃうんだよ。 だけど、あれあとで割るでしょう。 その都合で、あのぐらいの速度で。 |
吉本 | そうかもしれない。 こういうことはやっぱり撮影をやったことの ある人にしかわからない。 |
糸井 | あの速さはね、ちょっと違和感あるんですよ。 あの女の子ものすごく丁寧に いろんなことするんだけど、 生活のリズムがものすごく速いんです、 あそこだけ。 「さあ、行かなきゃあ」って さーっとやるんですよ。 あれはあやしいなと思ってたら、 あとで、やっぱりこぼすんだよね。 あのあたりとかね、 もう一々プロは恐ろしいと思った。 それを感じさせないように、 これはもうファンタジーですからねっていう、 モノクロの映画のほうに リアリズムを置いたわけでしょう。 「タバコ代がかかるんだよ」とかさ、 「人足代は一人いくらだからいくら。 それにタバコ代があるよなあ」 っていう、あのおカネのリアリズムを、 逆にモノクロにして、 ファンタジーのほうをカラーにしたところとかも。 |
吉本 | 普通だと、 回想シーンがモノクロじゃないですか。 |
糸井 | そうなんですよ。 |
吉本 | それが違うのが、 やっぱりこの映画の成功のポイントだと思う。 |
糸井 | あの逆転はねえ。 そうじゃないと、 このピンクの色は出せないからね。 |
吉本 | ほんと上手だなあと思いながら観てたんですよね。 |
糸井 | これ僕は、今喋ってて思いついたんだけど、 吉本さんはメーキャップとかについて 詳しいほうですか。 |
吉本 | いえ。 |
糸井 | そうですか。メーキャップの人に 聞いたらどうだろう。 つまりあの村の人たちの素の顔とか、 素肌とかっていうことと、 映画的なメーキャップの微妙な差が、 どのくらい表現されてるかっていうのは、 プロが見たらすごいでしょうね。 ほんとにノーメークだったら。 |
吉本 | でも、違いますよね。 |
糸井 | 違いますよね。このくらいの年の子だと、 ノーメイクでもできちゃうけど、 そうしたらメリハリがきかないですよね。 そこは誰かメーキャップ・アーチストに 見せたいですね。 で、このくらいの子は、 寒い日には自然にほっぺたが赤くなるんですよ。 で、僕は、冬の女の子のほっぺたの赤いのって 大好きなんですよ。 |
吉本 | ハハハハ。 |
糸井 | 触っちゃいけない触りたいものの代表が、 この冬のほっぺたなんですよ。 ここにあるじゃないですか。 もう25になったら、 そうなっても違うものなんですよ(笑)。 |
吉本 | うーん! |
糸井 | これですよね。 ピンクとは何か、みたいな映画ですよ。 ほんとに。 |
吉本 | なるほどねえ。ピンクがポイントなんだ。 |
糸井 | ポイントだと思いますね。 そのピンクがなかったら、 僕はそのパンフレットに目がいかなかったもん。 これがグリーンの服でね、よく似合うんです。 |
吉本 | はい。これはピンクですね、やっぱり。 |
糸井 | で、ピンクとか赤ってさ、 基本的には霊長類の生殖器の色ですからね。 |
吉本 | ああ!! そういうところまで行くわけですね。 |
糸井 | 行くわけですよ。 そこはもうすれっからしな希望論としてはさ、 「ピンクですね」って、 いやらしいことを言いたくもなるようなところを、 もうフル回転で使ってるわけですよ。 この映画はピンク映画であると(笑)。 |
吉本 | なるほど。 |
糸井 | 汚れなきピンク。 (つづきます!) |