糸井 |
アンリさんのお客さんのなかには、
日本人が多いと思うのですが、
実際はどうなんでしょう?
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アンリ |
日本と、アメリカが多いですね。
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糸井 |
そうなんだ。
イタリアは入ってこないんですね。
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アンリ |
昔のイタリアでは、
こういう手作りのものがほんとうに喜ばれました。
でも、今はファッションや、
流行に惑わされてしまうというか、
有名ブランドの名前が入っていればいい、という
価値観になってきているように思います。
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糸井 |
アンリさんの革製品とは、
いわば真逆のものですね。
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アンリ |
はい、そうなんです。
ぼく自身は、40年くらい前から
スタイルは変わっていないです。
「流行っているから、これをやろう」とは
一度も思ったことがありません。
自ら生み出すことがとても好きなので、
そこがなくなったら、ぼくじゃなくなりますから。
だから、素材というものが、ぼくの基本。
何をつくるにも、素材から入りますね。
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糸井 |
いつごろから、その美意識を
もつようになったんでしょう?
きっと、あんまり変わってませんよね。
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アンリ |
うーん、むずかしいなぁ‥‥。
‥‥でも、ぼくはすべてに
パッションをもって挑んでいます。
すべてにパッションを、すべてにパッションを。
ちいさなころから情熱的で、
ひとつのことに一生懸命でした。
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糸井 |
ベースは、そのパッションだと思いますが‥‥、
アンリさんは革職人になる前の
サッカー選手だったころから、
もう、革製品をつくっていたんですよね?
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アンリ |
はい、選手をしていたときからつくってます。
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糸井 |
そのとき、もう決まっていたんじゃないかなぁ。
アンリさんのスタイルは、何も知らないときに
できたもののような気がするんです。
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アンリ |
そういえば、いちばん一生懸命やっていたのは
なんだろうと考えたら、
やっぱり、サッカーですね。
サッカーしかない人生だった。
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糸井 |
サッカーしかない、人生。
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アンリ |
ぼくがサッカー選手だったとき、
今は亡きノルベール監督には、サッカーだけでなく
人生についても教わりました。
「90分間で、きみの人生が表れるような
試合をしなさい」と。
試合中には、
エゴな人、親切な人、嘘をつく人などなど、
いろんな人に出会います。
その中で、自分はどうあるべきか、と。
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糸井 |
ああー、しびれるねぇ。
きっと、その心がモノに表れているんですね。
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アンリ |
この言葉はぼくの忘れられない言葉で、
いつも心に大切にしまっています。
そして、なにかあったときは、
必ずこの言葉を思い出しますね。
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糸井 |
じゃあ、今もある意味、試合中。
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アンリ |
もちろんです。
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糸井 |
はぁーー。
最後に1つだけ質問させてください。
似たようなものって、
世の中にたくさんありますよね。
アンリさんの革製品に似ているものも
もちろん、あるでしょう。
そういうものと、アンリさんのもの、
何が一番違うんだって、思いますか?
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アンリ |
ああー、むずかしいなぁ。
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糸井 |
ぼくも訊かれたら困る(笑)。
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アンリ |
‥‥(イタリア語をたくさんお話中)‥‥。
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フミコさん
(アンリさんの
奥さん) |
‥‥(イタリア語をたくさんお話中)‥‥。
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アンリ |
‥‥(イタリア語でたくさん話していたところ、
突然その話を切り上げる)。
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フミコさん |
質問した内容じゃない答えがきて、
自分で「あ、これじゃないねって」。
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一同 |
(笑)
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糸井 |
ほんとうにむずかしいね、これは。
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フミコさん |
(笑)
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糸井 |
だって似てるのあるんですもん。
あきらかに真似したんだなーってものが。
でも、それは違う、それはほしくないと、
ぼくたちにもわかるんですよ。
その違いが、なんなのでしょう。
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アンリ |
‥‥(イタリア語をたくさんお話中)‥‥。
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フミコさん |
‥‥(イタリア語をたくさんお話中)‥‥。
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糸井 |
(小声で)
うわぁ、こりゃ悪い質問してるなぁ(笑)。
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アンリ |
どこが違うというのはわからないけど、
ぼくがやったのは、ぼくがやったの。
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糸井 |
(笑)
ぼくが代わりに言ってあげましょう。
「こころの気高さが違う」。
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アンリ |
それは、ぼくもわかってた。
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一同 |
(笑)
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糸井 |
この質問はむずかしいです。
きっと、答えられないんですよ。
今までもいっぱい、
素材がいいのじゃないとダメだよとか、
いっぱい語ってきたこと、
全部があってアンリさんのものなんだろうけど、
似たものと何が違うんだろうって、
やっぱり疑問に思うんです。
1ついうとしたら、
似たものはよく見せようとしているんですけど、
アンリさんはそのものをよく見せようとはしていない。
いいものをつくろうとしていますよね。
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アンリ |
そうですね。
やっぱり、2番目に出てくるよりも、
生み出したものっていうのは、強いですね。
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糸井 |
いやぁ、愉快だった(笑)。
この問いとは、ずっと自分とお話しててください。
ぼくもそうするつもりなんです。
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アンリ |
今夜は眠れないな(笑)。
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糸井 |
いや、毎晩だよ。
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アンリ |
(笑) |
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(おわります) |