糸井 |
そもそもの話なのですが、
「BEGINNING」という企画を考えついたときに、
具体的な商品とか、そういうものより先に、
まず、アンリさんにシンボルマークを
つくってほしいと思ったんです。
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アンリ |
ああ、うれしいです。
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糸井 |
なんとなく、このシンボルマークは
モダンなデザインにしたくなかったんですよ。
今をときめくデザイナーさんに
シンボルマークをつくってもらっても、
きっと、それはそれですてきなんだろうけど、
たぶん、洗練されすぎているというか‥‥。
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アンリ |
お話をいただいたとき、とても感激しました。
「BEGINNING」というプロジェクトに
共感したのはもちろんですが、
もう何度も会っているので、
ぼくは糸井さんが好きなものを知っています。
だから、お互いが「いいね」と思えるものを
絶対に形にできると思って、
うれしくてたまらなかった。
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糸井 |
いろんなデザイン案を出してくれましたよね。
おもしろかったのが、どのデザインにも
はたらいている雰囲気があったこと。
アンリさんにとっては、
はじめるっていうことと、はたらくっていうことが
自然と重なっているんだなぁ、と思いました。
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アンリ |
ああ、そうかもしれないですね。
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糸井 |
なぜ、ぼくらが「はじまりを、はじめよう。」と
言い出したのかというと、やっぱり、
去年の東日本大震災があったからなんです。
あの震災を一見エンディングのように
考えている人がいて、
「逆だよ、終わりは次のはじまりだよ」ということと、
「はたらいて、はじめようよ」ということを
伝えたかった。
だから、アンリさんのデザインの中に
その雰囲気が含まれていたのが、
すごくうれしかったですね。
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アンリ |
たしかに、その通り。
はたらくことは、本来たのしいことだと思います。
こどもたちをみていると、
自然とはたらくことが身についている。
たのしいことだから、自然とはたらくんです。
そういう気持ちを、伝えたかった。
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糸井 |
そうか、そうですよね。
ぼくらと付き合いのある気仙沼の人たち、 斉吉商店さんとか アンカーコーヒーさんとかは、
震災のあと、ここから何をしようって考えて、
ちょっとずつ行動して、
ちょっとずつ前に進んでいます。
つまりは、前に向かってはたらいているんです。
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アンリ |
すばらしい。
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糸井 |
でもやっぱり、そうやってはたらくよりも、
助成金とかをもらったほうがいいっていう人も
なかにはたくさんいるらしくて‥‥。
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アンリ |
ええ。
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糸井 |
はたらくのと、はたらかないのと、
どっちがたのしいのか
見えるように行動するっていうのは、
とっても大事なんじゃないかと思いますね。
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アンリ |
ほんとうにそうですね。
ぼくは、今回の震災のことで
たいへん心を痛めましたが、視点を変えれば、
行動を起こすこと、つまり、はたらくことで、
今しかできないような新しいことにチャレンジできる、
いい機会になるんじゃないか、と思いました。
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糸井 |
そうそう、はたらくことが、
つまりは「はじまり」なんですよね。
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アンリ |
きっと、ほんとうは
やらなきゃいけないという気持ちと、
できるのかなっていう不安とのたたかいでしょう。
ですから、震災の被害にあった方々にとって
まわりから後押しがあるっていうことや
みんなで助け合うっていうことが、
とても励みになると思います。
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糸井 |
いや、ほんとうに、
そういうシンボルマークができましたね。
ほかのデザイン案も
似たようなコンセプトでつくられていましたけど、
これが、一番しっくりきました。
このマークが、
お守りみたいになってくれるといいなぁ。
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アンリ |
お守り、いいですね。
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糸井 |
今だけの話ではなくて、
この先、つい忘れちゃったときに
そのマークを見れば思い出すものとして
ずっとそばにあるといいな、と思っています。
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アンリ |
そうなってくれれば、すごくうれしいです。
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糸井 |
アンリさんの仕事って、
ものすごく原点に戻りたがる傾向が
あるじゃないですか。
それが今回、とてもうまくいってる気がします。
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アンリ |
Si certo.(たしかに)
原点に戻る、ということは、
ぼくがいつも思っていることですね。
なにもないところからはじめるっていうのは
原点からはじめるっていうことですよね。
だから、今回のシンボルマークは、
シンプルさをとても大切にしました。
なるべくシンプルにすることで、
誰でもわかるもの、そして、
ずっと残っていくような強いものを
ぼくは作りたかったんです。
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糸井 |
うん、うん、
伝わってきます。 |
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(つづきます) |