- 糸井
- お母さんは犬派なんですよね。
- 松本
- 犬派です。
- 糸井
- ということは、
お母さんは「私の子分は犬です」と
思ってるわけでしょう?
- 松本
- 思ってますね。
- 糸井
- じゃあ、お母さんからしたら
「お前にも私の子分を貸してあげるよ」
みたいな感じなんですか。
- 松本
- そうだと思います。
犬も「こっちもまぁまぁの親分かな」
くらいの感じでついてきてくれます。
- 糸井
- 猫はお母さんには行かないの?
- 松本
- 行かないですね。
どちらかと言えばライバル視してます。
- 糸井
- おっかしいなぁ(笑)。
その設定ができちゃったことが、
もうこのマンガの成功を予見してるよね。
- 松本
- みんなキャラが立ってますよね。
- 糸井
- 松本さんからしたら、
このマンガはいわゆる
「まかないメシ」じゃないですか。
「自分がおいしく食べられたらいいや」という。
たまたまそれがすごい人気になって。
- 松本
- まかないメニューが
本格化してきた感じですよね。
- 糸井
- ほんとはもっと気まぐれで
やるつもりだったわけでしょ?
- 松本
- そうです。
- 糸井
- それが「もっとつづけよう」になったのは、
いつ頃だったんですか。
- 松本
- 最初はこんなにつづける
つもりもなかったんですけど、
ネタはあるので2、3回はやろうかなと。
でも、マンガをツイッターに掲載するたびに、
すごくたくさんコメントがついて、
それがうれしかったんです。
- 糸井
- あぁー。
- 松本
- 描いてて辛かったこともないし、
むしろ描くのがたのしいくらいなんです。
ツイッターだから、
見てくれた人の反応がダイレクトに
もらえることもけっこう大きいです。
あと、マンガを描いてて、
伝えたいことが伝わらないときが、
時々あるんです。
- 糸井
- 伝わらないこと?
- 松本
- 最初の頃、マンガを見た人から
「猫が嫌いなんですか」って
コメントされたことがあって。
- 糸井
- あぁ‥‥。
- 松本
- 犬と対照的に描いてるので、
「猫ってこうだよね」ということを、
ちゃんとわかってくれない人もいて。
そのとき「この人には伝わらん」と
切り捨てるんじゃなくて、
「じゃあ、絶対に伝えてやるぞ」
という気になりました。
自分がどれだけ猫が好きかを、
どうしても伝えたくなったんです。
- 糸井
- いやぁ、そのかげんは見事ですよ。
わからないギリギリを攻めてるわけだし。
- 松本
- わかる人には全然わかるんですけどね。
- 糸井
- 犬のページが終わって、
「さぁ、猫があるぞ。このテーマで猫はなに?」
と思って次をめくると、
相変わらずきっついのがあって。
- 松本
- はい(笑)。
- 糸井
- しかも犬を先に描くから、
興奮も最高潮からの‥‥ヒンヤリ。
- 松本
- そうそう(笑)。
私、動物に冷静にあつかわれるのが、
けっこう好きなんだと思います。
- 糸井
- あぁ、相手にされない感じがね。
- 松本
- 犬も私のことが大好きだけど、
私より猫のほうが好きなんで、
すぐ猫のほうに行っちゃう。
なんか、そういうのも好きで。
- 糸井
- 「犬が、私より猫が好き」(笑)。
それ、いいなー。
- 松本
- なんなんでしょうね(笑)。
- 糸井
- 思えばツイッターで犬やら猫やらの表現に
たくさん接することができるのは、
ぼくはこの時代の受け手の幸せだと思うんです。
SNSでよそんちの犬や猫のようすを
知ってること自体、
ぼくはもう不思議でしょうがないもん。
- 松本
- それはすごく思います。
犬や猫って飼い主に向ける顔を、
他の人にはなかなか見せてくれないので、
それを見られるよろこびがあります。
- 糸井
- 昔の犬や猫の写真って、
写真館で撮ったブロマイド写真
みたいなのばっかりでしょう。
- 松本
- その頃にくらべると、
近年はアホづらが豊作ですね(笑)。
アホづら大好きです。
- 糸井
- それはある意味、
みんなにカメラが行き渡ったからでしょうね。
そして、カメラだけじゃなくて
「描く」という道具を持ってる人たちが、
自分で発信できるようになっちゃった。
つまり、遊びで描くようなものを、
SNSで簡単に見せられるようになったから。
- 松本
- ライブカメラみたいですよね。
いつでもお気に入りのコの様子が見られて。
- 糸井
- ああ、そういえばSNSで人気になった
「おじさんっぽい猫」いたじゃない?
あの、おじさんが飼ってるおじさん。
- 松本
- おじさんが飼ってるおじさん(笑)。
- 糸井
- 天国にいっちゃった猫なんだけど、
そのコはぼくの猫を見る目を
大きく変えてくれたんです。
中に人間が入ってるんじゃないかと思うくらい
「おじさんっぽさ」があってさ。
ええっと‥‥、あの、ヨウカンさん!
- 松本
- ヨウカンさん?
- ――
- ヨウカンさんというのは、
えっと、はい、このコです。
- 松本
- いい顔してますねぇ(笑)。
- 糸井
- ヨウカンさんは
ぼくの猫への愛みたいなものを、
もう1段上げてくれたコなんです。
立ってる姿も、またいいんだよ。
- 松本
- お願いしてますね(笑)。かわいい~。
- 糸井
- いいでしょう(笑)。
天国にいった思い出の犬や猫も、
けっこうぼくのなかにいるんです。
2019-07-16-TUE