みなさま。
北に向かう田口に、「立ち寄ったらいいよ」という
おすすめスポットがありましたら、どうぞご紹介ください。
記事の下のほうにメール宛先がございます。
よろしくお願いいたします。
では、前回につづき、
私たちのヒッチハイクの先生である
平了団長にお話をうかがいます。
▲団長です。
ヒッチハイクは、頭をつかう。
そして、ちょっとでもいいから乗せてほしい、と
思うことがコツである。
それはわかりました。
「はい。
ちょっとだけでも乗せてもらって‥‥つまり、
ちょっとだけ、迷惑をかけるんです」
ああ‥‥!
ちょっとだけ迷惑をかけることって、
いま、我々が、あまりしないことですね。
「うん。ちょっと迷惑をかけるって
じつは大きいことだと思うんです。
まずは迷惑をかけるぶん、
礼儀もわきまえなきゃいけない。
車に乗せてもらって、
シーンとしているバカはいないでしょ?
乗せてもらってるんだから、1ミリでもいいから、
『楽しい奴だったな』と
思ってもらえるようにして
車を降りたいじゃないですか。
ですから、これまでの道中のことや、
これからのことなんかをおりまぜて
話をしていく‥‥」
うわぁ、やっぱりそうなんだ。
そういうことを、ドライバーの方に
プレゼントしなきゃいけないわけですね。
▲俺、しゃべれるかなぁ‥‥。
「だって、それくらいしかできないですからね。
一曲歌うわけにもいきません。
でも、黙っててくれ、と言われたら、
『うす!』と言って黙ります」
とにかく、ドライバーの方が
楽しく快適であるように。
「そう。どんな方法でもいいから、なかよくなる。
なぜかというと、やっぱり
ぼくは信号ふたつでいいから乗せてほしいんだ。
10分乗っけてもらえれば、
人の足の100分稼いだことになる。
どんどん行くっきゃないんです」
車に乗っているときにこそ、
ヒッチハイカーとしての真価が問われる、
ということなんですね。
「そう。乗せてもらってありがたい、
感謝しているということをきちんと伝えないとね。
ぼくなんて、ときどき
『伝わってます?』って訊くぐらいです。
でも‥‥つらいときはつらいんだよ」
そうですよね‥‥。
「すっごく眠いときもあります。
こんな顔になっています」
▲どうしても、こんな顔に。
わははは。
なのに、しゃべらなきゃいけないんですね。
「でも、わかってくださる人は
寝ていいぞ、と言ってくれます」
ああ、それはやさしい人ですね。
ヒッチハイカーを乗せてくれるのは
まずは、やさしい人なんでしょうけど‥‥。
「やさしい、というより
心の反射神経がいい人ですね」
心の反射神経がいい人‥‥。
前に、団長と糸井の対談で
出てきた言葉ですね。
「たとえば、高級車に乗ってサングラスをしている
きれいな女性‥‥‥‥
残念ながら、乗せてくれません。
我々風情には、一切、目も合わせてくれません。
無関心です」
無関心。
▲「愛情の反対は無関心だ、と
マザー・テレサがおっしゃったけど、
ほんとうなんだなぁ、と思います」
「しかたないです。ぼくら、こんなナリですからね。
しかし、いまにも壊れそうなボロボロの車、
そして、外国からやってきた方。
乗せてくれます」
そうなんですね。
外国の人も‥‥。
「外国から来た人は、常に困っているのでしょう。
ことばも、食生活も、いろんな場面で
実は助けてほしいと思っている。
だから、人にやさしい。
あとはですね、カップルはわりと乗せてくれます。
彼氏が嫌がっていたとしても、
彼女にいいカッコしたいですからね。
ただし、夫婦はダメですよ。
彼らはふたりに見えてひとりです。
見た目も似てくるからね。
夫婦は、ならぬものはならぬ、の一点張り。
ただし、同じ家族であっても、女性の親子は、
『乗せてあげようよ』なんていって、
なぜだか、乗せてくれます。
男性は、けっこうシャイなのかな‥‥。
ガバっとこっちが押し倒さなきゃ、
乗せてくれない(笑)。
でも、ほとんどの場合、
『乗せてあげればよかったかな~』と思いながら
通りすぎていきます。それがふつうです」
心の反射神経が磨かれてないから、
いざ、ヒッチハイカーがいると、とまれないです。
そうか、困っている人が乗せてくれるのか‥‥。
「でも、そういう人たちは、
乗せてくれる車の『第2位』です」
2位?
じゃ、第1位は?
「それはね、もとヒッチハイカーです。
ずいぶん手前からハザードをつけて、とまってくれます。
彼らは、少しでも乗せてあげたいと思っているし、
車をつかまえやすいところで降ろしてくれます。
さっきも言ったけど、
いろんな方向の車が行き交う交差点より、
道の駅で降ろしてくれる。
おみやげ買ってる人たちひとりひとりに
声をかけなさい、がんばれ、と言ってくれる」
さすが、もとヒッチハイカー。
でも、おみやげ買ってる人に声をかけるのかぁ‥‥!
「恥ずかしくもなんともないよ。
『どこまで行きますか?』
『あなたの車は岩手ナンバーだと調べはついています』」
わははは、すごい。
「仕事中だからダメ、と言われたなら、
荷物のように黙ってます、と言う。
なぜだめなのか、理由をきちんと訊くと、
解決法が見えて
『じゃ、いいよ』ということになります」
‥‥それ、すごく強いメンタルが必要ですね。
「必要ですよ。
だからひじょうに、疲れます。
削られて、りんごの芯のようになっていきます」
▲心が、ほっそーく、削れちゃう。
なぜ、そこまでして
ヒッチハイクをするんでしょうか。
「わかりません。
そんなふうに人に迷惑をかけてする理由が、
特に見あたりません。
『何か変わりますか?』と訊かれても、
特に変わらないとぼくは思います」
そうなんですか。
「そういう経験をすると、人は強くなる、
なんて言われますけど、
そうじゃないんです。
強いから、行けたんだよ。
人は、最初から強い。
自分のなかの強さを『出す』!
それだけのことです」
出す!
「はい。それは、礼儀をわきまえるとか、
そういうことではありません。
そんなもん、あたりまえです。
では、何が必要かというと、
『まぜて』と言う勇気です。
人に『まーぜーてっ』と言う勇気は、
これからの世の中、とても大事です。
それができれば、ぼくは文句ありません。
『まぜて』と言いもしないで
『あの人がまぜてくれない』と言ってる人がいたら、
お前がおかしいぞ、ということなんです。
楽しそうな人たちのことをねたんだり、
『あいつは儲けやがって!』などと
言ったりしてる人たち、
何だよ、そんなこと言うんだったら
『まぜて』のひとことをちゃんと言ってからにしろよ」
‥‥そのとおりですね。
まぜて、と言う勇気がないと、
実は生きてても
ちょっとおもしろくなかったりしますね。
「そうなんです。そういう発見にはなるよね。
最初はつらいと思います。
でも、1回、やってみればいい。
あとは、さかあがりといっしょです。
1回やれば、ずっとできます」
でも‥‥断られ続けたら、つらいなぁ。
「でも、好きな子に告白して断られるわけじゃないから、
それよりは別に、って感じでしょう?
断られても、『だよね!』『そうですよね!』と
思えますから」
ヒッチハイクの注意点はありますか?
「注意点?
そうだなぁ‥‥いちばんは『飛び石に注意』です。
国道沿いとか歩いてると、
トラックが石をはじいて
よくこっちに飛んできますから」
す‥‥すごく具体的な。
「それがいちばん危ないです」
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5.おもしろい奴だった、乗せてよかった、と
思ってもらえるようにふるまう。
6.乗せてくれる人第1位は、
もとヒッチハイカー。
続いて、ボロボロの車。外国の人。
カップル、女性の親子連れ。
7.断られても、ダメな理由を訊いてみる。
8.やることは、勇気を「出す」だけ。
9.徒歩時、飛び石に注意。 |
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