ほぼ日カルチャん

特別展「きもの KIMONO」

ミュージアム

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着物から人が見えてくる。

あやこ

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開幕を心待ちにしていた
特別展「きもの KIMONO」。
うれしいことに
内覧会にご招待いただいたので、
ひと足先におじゃましてきました。

かつてない規模の展覧会、と聞いていましたが
ほんとうにそうでした。
鎌倉時代から現代まで、
時代ごとの名品がつぎつぎに登場するので
途中でくらくらするくらい
すばらしい見ごたえでした。
各展示室にずらりと並ぶ着物の
存在感はすごいものがあります。

とくに目をひいたのは
展示のメインともいえる
江戸時代の着物の数々です。

気の遠くなるほど豪華な総刺繍、
きれいにならんだ絞りの模様、
大胆なデザインや
遊び心のあるモチーフ、
一着一着にチャームがありました。

これをつくった職人さんは
きっと大変な作業だったはずですが
それ以上に美をほどこしていくことが
喜びだったんだろうな、と想像されます。
見どころのひとつ、
尾形光琳が直接描いたという小袖も
着物のあのかたちの布に
どう秋草を咲かせるか、
たのしんで描いていたように思われました。

▲「小袖 白綾地秋草模様」尾形光琳筆

着物のデザインのゆたかさに
うっとりしながら
展示室を進んでいくと、
男性の着物を集めた章もありました。
これがまた、雰囲気も変わってすてきです。

そして、信長、秀吉、家康の
羽織を前にしたとき
「わあ、これが!」と思うと同時に、
急に、ふと、
「彼らは本当に居たんだなあ」
と思いました。

歴史としてもちろん知ってはいるものの
これまで「人」として
なんだか実感がなかったのかもしれません。
彼らが身にまとっていた着物を間近に見たら、
平面だった歴史上の人物が
立体的に立ち上がったような
不思議な感覚がありました。

▲織田信長の陣羽織。

「これを着ていた」というのは
どの着物についても言えることです。

顔や姿はそこになくても、
何十年、何百年も前の人が
体温をもって「これを着ていた」と思うと
美術品というだけでない
「人」をそこに感じます。

それぞれの着物に添えられた
解説を読みながら
どんな人が着ていたんだろう、と
想像してみるのは
とてもたのしい時間でした。

また、この展覧会は
「着物」をテーマに
着物そのもの以外も
幅広く展示されていました。

たとえば浮世絵や美人画は
そこで描かれる着物も
当時の着物を知る手がかりです。
あまりに有名な
菱川師宣の「見返り美人図」も
その目線であらためて見ると
紅色に染められた生地にのった
花の模様にも目がいきます。
知っていた美術品でも
キュレーションによって見方が変わり
おもしろいです。

▲それぞれの衣装がたのしい「婦女遊楽図屏風(松浦屏風)」。

着物文化にともにあった小物は
純粋にかわいらしくて
心のなかできゃあきゃあと
騒いでしまいました。
鳥かごのかんざしが
わたしのイチオシです。

この展覧会から見えてきたものは
展示されているそれぞれの着物の
傑作っぷりはさることながら、
「着物」を軸に広がっていく
人の美への感情や
人の暮らしでした。

着物は人がつくって、
人が身にまとって、
人がよろこんでいた。
それが時代をこえて
ずっと連なってきたんだな。
そんなことを感じました。

「それは、ニッポンの花道(ランウェイ)。」
というサブタイトルが
特別展「きもの KIMONO」にはついています。
胸が高鳴る感じ、ほんとうに
大きなファッションショーを
味わったような余韻がありました。

わたしも次に着物を着るときには、
この長くつづいてきた花道に
ちょこっと加わった気分になりそうです。

基本情報

特別展「きもの KIMONO」

会期:2020年6月30日(火)〜8月23日(日)

前期展示:6月30日(火)~7月26日(日)
後期展示:7月28日(火)~8月23日(日)

*開幕が延期となっていましたが、
会期が決定しました。(※追記:5/30)
事前予約制のため、
オンラインでの日時指定券の予約が必要です。
詳細は公式サイトのご案内をご確認ください。

会場:東京国立博物館 平成館(上野公園)

休館日:毎週月曜日

開館時間:9:30ー18:00
(夜間開館は実施いたしません。)
*入館は閉館の30分前まで

公式サイトはこちら