▲かるかや(部分)室町時代 16世紀 サントリー美術館
「裏」には、見えない部分だけでなく、
奥深く、隠された内部という意味があります。
日本美術をより深く愉しめるうように、
教科書では教えてくれない面白さの一端をご案内します。
これは、会場入口のあいさつ文の一節です。
「裏の裏」の意味合いを納得しながら、
教科書ではおしえてくれないおもしろさ?
その一節にワクワクしながら会場に足を先に進めました。
展覧会は、6章に分かれた構成になっていて、
どの章も新しい発見と
クスりと笑ってしまうユーモアに溢れています。
その中でも特に印象に残ったのは、2つの章でした。
ひとつが、器が展示された「景色をさがす」の章と、
もうひとつが、絵巻の展示された「心でえがく」の章です。
「景色をさがす」
器をどう見てどう楽しめばいいのか、
いままでわたしは全然わからなかったのですが、
今回はじめてそれがわかった気がしました。
器を焼く時に、炎がつくり出す表情を「景色」と呼び、
偶然にできる「景色」から自分なりの「正面」(=好きな景色)
を見つけるのがひとつの鑑賞のポイントだそうです。
なるほどー!
小難しく考えすぎず、
そんな風に楽しめば良かったのか!
と目からウロコでした!
試してみると、これは楽しい!
どこが一番な好きな景色だろうと思って
器をじっくり、ぐるり一周見てみると、
どこも同じように思えていたどの器も、
見る角度によって全然違う景色があって、
いままで知らなかったおもしろさを見つけることができました。
どの作品も、360度ぐるりまわって観ることができます。
個々の作品に集中できるような個室のような設えも、
一つのインスタレーションのようで素敵な空間でした。
そして、なにより器の表面の見え方に「景色」と名付けた
先人のセンスの良さは抜群だと感心しました。
器の中の「景色」だなんて、本当に粋だと思います。
「心でえがく」
今回の展覧会の中のわたしの一番のお気にいりは、
室町時代に描かれた「かるかや」という絵本です。
文字は達筆なのですが、
絵がなんとも言えないオーラを放っています。
語弊を恐れず正直にいいますと、絵が下手なんです。
だけれど、素直な描写がなんとも言えずくせになり、
切に訴えかける魅力があります。
布団に寝ている人物と手前の人物との関係性から見ると、
この作者には空間の把握の感覚をまったく無いのでは? と感じます。
けれど、作者に空間を把握する能力がなかったということではなく、
技法や常識などから自由なところで
この絵を描いていたのかもしれません。
常識にとらわれないで素直に描くことでしか得られない
人の心を捉える魅力を生むヒントが
ここにあるような気がしました。
このふたつの章以外も、楽しいポイントたくさんあって、
日本の古典美術はなんだか難しいという印象を払拭する
やわらかさな解説文が印象的で、
純粋に作品を楽しめる展覧会でした。
それだけでなく、もちろん楽しい学びも他にもたくさんありました。