みなさんは、ミスター・ブレインウォッシュ(MR.BRAINWASH)をご存知ですか?
LA在住のストリートアーティストで、
現在、渋谷PARCO
PARCO MUSEUM TOKYO(4階)と
GALLERY X(B1階)の2会場で日本初の本格個展
「LIFE IS BEAUTIFUL」が開催されています。
ミスター・ブレインウォッシュ
のことを知れば知るほど、
「アートの価値」とは、
なんなのか考えさせられます。
ミスター・ブレインウォッシュがアーティストとしての
キャリアをスタートさせたのは、
ストリートアーティスト・バンクシーさんが
初監督を務めた、ドキュメンタリー映画
「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」(2010)
への出演がきっかけです。
以前、この映画について、
乗組員のシオリさんがおすすめ記事を書いてくださっていて
とても、気になっていました。
展覧会と合わせて、この映画を鑑賞していただくと
より一層楽しめると思ったので
あらすじをご紹介します。
「ビデオ撮影が趣味の男ティエリー・グエッタが
様々なグラフィティ・アーティストと出会い、
彼らの素顔を撮影するうちに
念願だった伝説のバンクシーとの接触が叶う。
本人はアートの知識も技術もない
ティエリーはやがて、
バンクシーによってアーティスト
“ミスター・ブレインウォッシュ” に
仕立て上げられ、ついには個展を開くことに。
全ては仕組まれたことなのか、
あるいはリアルなドキュメンタリーなのか…。」
映画の中で、ミスター・ブレインウォッシュが作品を
制作する場面がとても印象に残りました。
様々なアーティストの作品から
気に入った絵を見つけて、それをトレースし、
手を加えることで自身の作品としていきます。
トレースしているのは、
絵だけではなく手法もです。
かつて自分がビデオで撮影していた、
様々なアーティストの表現方法を、
そのまま自分のものにしていきます。
今回の展覧会で、その方法で制作されたと思われる
実際の作品を目の前にして、
「価値」に関するいろんな考えが
ものすごい勢いで、頭の中を駆け巡りました。
私は、大学で絵の勉強をしています。
繰り返し先生に教えられるのは、
”独自のスタイルを確立していくこと”です。
それが「アートの価値」において、
とても重要な要素なのだと信じて疑いもしませんでした。
しかしその工程を抜かしているようにもみえる、
ミスター・ブレインウォッシュですが、
華々しくデビューし、現在も多くの人々に支持され
世界的アーティストとしてご活躍されています。
「価値」って一体どこから
生まれて来るのでしょうか?
作品自体に備わっているべきもの?
それとも、鑑賞者が生み出していくもの?
ミスター・ブレインウォッシュの存在と作品が
とても大きな問いを投げかけてきます。
今回の展覧会では、映画にも登場する、
1990年代のストリートのシーンを
彷彿とさせるメッセージ作品や、
既存の作品の転用し描き足して
作品そのものの意味を変えてしまうシリーズなど、
ミスター・ブレインウォッシュの
代表的な作品が多数展示されています。
会場で「アートの価値」についての問いを
肌で感じてみるのはいかがでしょうか。