江戸時代後期に、
主に浮世絵版画の分野で活躍した絵師、
葛飾北斎(1760~1849)。
その版画作品を、
一気に見ることができる展覧会が、
東京ミッドタウン・ホールで
開催されています。
会場に入ると、
まず出迎えてくれるのは、
『北斎漫画』全ページ。
全ページを展示するとはどういうことか。
すなわち、同じ本をページ数の分だけ
揃えたということです。
いやはや、その労力に脱帽です…。
さて。
『北斎漫画』とは、
言うなれば絵のネタ帳のようなもの。
人物や風景から、異類・異形まで、
さまざまなモチーフが所狭しと並んでいます。
個人的に、北斎の魅力は、
強弱のはっきりした、キレのある線。
そして、
その場面を切り取るか、
と驚かされるユーモアにあると思っています。
『北斎漫画』では、
モチーフひとつひとつを集中して見られるので、
それをじっくり味わうことができました。
お次は、富士山をテーマにした連作
「富嶽」シリーズ。
「北斎づくし」では、
「冨嶽三十六景」「富嶽百景」の全図を、
一度に見ることができるのです。
風景画の作品になると、
かっこいい線やポーズの面白さだけでなく、
さらに構図の妙が加わります。
たとえば、
写真の「富嶽百景 海上の不二」。
波と千鳥が重ねて描かれていて、
まるで波頭が千鳥に変わっていくよう。
北斎の作品には、
現代でも通用しそうな意匠が凝らされていて、
幾度もうならせられました。
また、この展覧会は、
会場のつくりも素敵でした。
特に『北斎漫画』の展示は、
壁や床まで北斎づくし。
びっくりすることだらけの展示でした。
画狂老人の真髄、ここにあり。
「北斎づくし」展は、
9月17日までの開催です。