アーティゾン美術館で開催されている展覧会
「M式『海の幸』ー森村泰昌 ワタシガタリの神話」
に行ってきました。
この展覧会は、
現代美術家・森村泰昌さんが、
同館蔵《海の幸》を解釈して、
新作M式「海の幸」に昇華させるまでの、
過程と成果がご覧いただける展覧会です。
今回のテーマである《海の幸》は、
明治時代の画家・青木繁が、
22歳のときに描いた油絵です。
下書きの線が残っていて、
習作のようにも見えますが、
未完成とも思えない「しっかりさ」も感じられる、
素敵な作品です。
森村さんは、
この絵から何を感じ取ったんだろう。
あれこれ想像をふくらませながら、
M式「海の幸」のコーナーに足を踏み入れました。
会場には、新作M式「海の幸」に加え、
同作を制作する段階で作られた、
メモやジオラマ、衣装などの道具が
展示されています。
さらに、青木繁に扮した森村さんが、
青木繁に語りかけるという映像作品もありました。
それらを見てわかったことは、
森村さんの目線が、
画面分析のさらに先へ向いている
ということでした。
森村さんは《海の幸》から、
右から左へ流れる時間(絵巻のように)と、
海という普遍性を読み取り、
現代人として《海の幸》をどう受け止めるかを、
真摯に考えていました。
そんな考察から生まれたM式「海の幸」は、
明治から現代までの時代を
《海の幸》に投影した、10点の連作。
そして最後の一枚は、
原作《海の幸》へとふたたびつながる画面なのです。
海から生まれ、人類の歴史を経て、
海に帰っていくわたしたち。
とてもきれいな解釈だなあ、と思いました。
私も、森村さんと同じ時代を生きる現代人。
いつかこんなふうに
作品から自分へのメッセージを
読み取れるように、精進します。