堀江貴文さんの、 まじめなおせっかい。  「もっとこうすればいいのに、と思うんです」
堀江貴文さんと糸井重里の対談です。 2013年11月に出版された堀江さんの本、 『ゼロ』について触れながら ふたりの会話は終始なごやかに、かろやかにすすみました。 ライブドアのこと、近鉄バファローズ買収のこと、 ヒッチハイクの経験談(!)などをうかがううちに、 「どうやら堀江さんはおせっかい」 という傾向を糸井が見つけます。 その「おせっかい」は、とてもまじめで、本気で‥‥。 「CAKES」さんとの共同企画で実現した対談。 どうぞ、おたのしみください。
第3回 ブランドの価値、無料のアイデア。
糸井 球団の買収っていうのが、
たしか堀江さんの最初の騒動でしたよね。
堀江 そうですね。
あのころが30歳ちょっとくらいです。

※2004年、経営難でオリックス・ブルーウェーブとの
 合併が決定した大阪近鉄バファローズの買収を、
 株式会社ライブドアが申し出た。
 一気に世の中の注目を集めるが、買収の申し出は拒否された。

糸井 やはりうまくは伝えられなかった。
堀江 ファンのみなさんが
すごく後押しをしてくれた部分はあったんです。
そのことはありがたかったです。
でもその人たちは
正確にぼくを理解してくれたわけではないんですよ。
あのときのファンは、
「12球団という状態を守りたい」
と思ってるから応援してくれたわけで。
「10球団に減らされたらプロ野球じゃない!」と。
ところがぼくは、ぜんぜんそんな気持ちはなくて、
「16球団でもいいんじゃないの?」みたいな。
「もっといろいろ新しいことができるよね?」
というビジョンでやりたかったんです。
糸井 でも、いま東北に球団があること自体が、
あのときの流れからはじまった
新しい事実ですよね。

※大阪近鉄バファローズから買収を拒否されたライブドアは、
 同年、宮城県仙台市を本拠地とした新球団の設立構想を発表。
 数日後に、「楽天」も仙台を本拠地とする構想を発表。
 新規参入を競い合うが、審査の結果、楽天の参入が決定した。

堀江 はい。
東北に球団ができるということ、
あそこでやれるということを、
最初はみんな想像できなかったんですよ。
糸井 なぜ東北でもOKだと思ったんですか?
堀江 きっかけはダイエーホークスなんです。
2003年ころ、ダイエーが経営不振になって
球団を手放すようなムードになってたじゃないですか。
でもじつはあのころダイエーホークスって、
マーケティング的に大成功してたんですよ。
糸井 ああー。
堀江 地元も球場も、すごく盛り上がってるんです。
ずっと満員。
福岡のテレビ局がかならず中継しますから
ますますにぎやかになって。
ぼくの親戚も観に行ってましたし。
糸井 その実感が、もともとあったんですね。
堀江 そうなんです、もとにあったんです。
同じころ、
日本ハムが本拠地を札幌に変えたじゃないですか。
あれは確実に、福岡の成功を見ての動きなんですよ。
そういうこともあって、
プロスポーツというのは
地方の時代になっていってるなぁ、と。
糸井 東北でも、できる。
堀江 はい。
東北全体がマーケットになるので。
九州の場合も、
福岡の球団を九州ぜんたいが応援していますから。
これはもう、まちがいなく成立するだろうなと。
経営的に上手くいくだけでなく、
宣伝広告媒介としても
これ以上のものはないと思いました。
糸井 NHKも流しますからね。
堀江 そうなんですよ。
民放のプロ野球ニュースでは、
会社名を連呼してくれます。
糸井 球団を持とうと思ったのは、
「ライブドア」になった後でしたっけ?
堀江 はい、「ライブドア」になってからです。
ぼくが最初にはじめたのは、
「オン・ザ・エッヂ」という会社でした。
で、2002年に「ライブドア」になるんですけど、
あのときもちょっと
トリッキーなアイデアがあって。
糸井 たしか、有名になっていた名前を
引き受けるかたちだったんですよね。
堀江 そうなんです。
「旧ライブドア」が
費用をかけて広告宣伝をしたあとで、
経営破綻したその会社の営業権を買い取りました。
糸井 たっぷり宣伝された会社を買った。
堀江 ええ。
ブランドの価値がすごくあると思って。
糸井 経営破綻したブランドでも価値がある。
堀江 はい。
経営破綻のような事実があったときに、
そこのブランド価値がどれくらい下がるかというと、
じつはあまりダメージがないということが
これまでの例でわかっていたんです。
たとえばJALは倒産しましたけれど、
JALのブランドはまったくそこなわれてませんよね?
つぶれたことすらみんな忘れてると思うんです。
たった3、4年前のできごとなのに。
糸井 ‥‥おもしろい。
考えたことなかったです、それは。
堀江 だからぼく、いま、
日本の中古ブランドがほしいですもん。
使われていないオーディオのブランドとか、
ありますよね? いくつも。
ああいうのをほったらかしにしてるのは
もったいないです。
あれでほんとに仕事ができますよ。
糸井 おもしろいなぁ。
‥‥堀江さんの本で、
そういうビジネスアイデアが
いっぱい書いてある本がありましたよね。
堀江 はい。
『金持ちになる方法はあるけれど、
 金持ちになって君はどうするの?』ですね。
糸井 あれ、おもしろかったです。
堀江 あれに載せたのは、
「みんなやったらどう? ぼくはやらないけど」
というようなアイデアなんです。
スモール・アイデアというか。
やりたい人があったらやってください、という。
糸井 無料で陳列してるわけですよね。
それがすごくおもしろかった。
堀江 なんというかその‥‥
世の中がおもしろくなってほしいんですよ。
いまインターネットのおかげで
いろんなひとにアクセスできるじゃないですか。
その気になればぼくは、
興味深いひとにどんどん会えるようになりました。
ありがたいことだと思っています。
で、会えた人から直接お話をうかがうと、
何個かのアイデアがばーっと出てくるんですね。
だったらそれは社会に還元して、
それをみんながおもしろがってビジネスにするなり
自由に活用してくれたら、
おもしろくなるよね、という。
糸井 ‥‥いいですね。
そこの部分の堀江貴文というのは、
あんまり語られていないですよね。
堀江 そうでしょうか。
糸井 うん。
それこそ、もったいない(笑)。
堀江 (笑)
糸井 それもやっぱり堀江さんのコンセプトですよ。
「みんなこうすればおもしろいのに」っていう。

(つづきます)
2014-01-27-MON
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