糸井 |
球団の買収っていうのが、
たしか堀江さんの最初の騒動でしたよね。 |
堀江 |
そうですね。
あのころが30歳ちょっとくらいです。
※2004年、経営難でオリックス・ブルーウェーブとの
合併が決定した大阪近鉄バファローズの買収を、
株式会社ライブドアが申し出た。
一気に世の中の注目を集めるが、買収の申し出は拒否された。
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糸井 |
やはりうまくは伝えられなかった。
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堀江 |
ファンのみなさんが
すごく後押しをしてくれた部分はあったんです。
そのことはありがたかったです。
でもその人たちは
正確にぼくを理解してくれたわけではないんですよ。
あのときのファンは、
「12球団という状態を守りたい」
と思ってるから応援してくれたわけで。
「10球団に減らされたらプロ野球じゃない!」と。
ところがぼくは、ぜんぜんそんな気持ちはなくて、
「16球団でもいいんじゃないの?」みたいな。
「もっといろいろ新しいことができるよね?」
というビジョンでやりたかったんです。
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糸井 |
でも、いま東北に球団があること自体が、
あのときの流れからはじまった
新しい事実ですよね。
※大阪近鉄バファローズから買収を拒否されたライブドアは、
同年、宮城県仙台市を本拠地とした新球団の設立構想を発表。
数日後に、「楽天」も仙台を本拠地とする構想を発表。
新規参入を競い合うが、審査の結果、楽天の参入が決定した。
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堀江 |
はい。
東北に球団ができるということ、
あそこでやれるということを、
最初はみんな想像できなかったんですよ。
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糸井 |
なぜ東北でもOKだと思ったんですか?
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堀江 |
きっかけはダイエーホークスなんです。
2003年ころ、ダイエーが経営不振になって
球団を手放すようなムードになってたじゃないですか。
でもじつはあのころダイエーホークスって、
マーケティング的に大成功してたんですよ。
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糸井 |
ああー。
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堀江 |
地元も球場も、すごく盛り上がってるんです。
ずっと満員。
福岡のテレビ局がかならず中継しますから
ますますにぎやかになって。
ぼくの親戚も観に行ってましたし。
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糸井 |
その実感が、もともとあったんですね。
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堀江 |
そうなんです、もとにあったんです。
同じころ、
日本ハムが本拠地を札幌に変えたじゃないですか。
あれは確実に、福岡の成功を見ての動きなんですよ。
そういうこともあって、
プロスポーツというのは
地方の時代になっていってるなぁ、と。
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糸井 |
東北でも、できる。
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堀江 |
はい。
東北全体がマーケットになるので。
九州の場合も、
福岡の球団を九州ぜんたいが応援していますから。
これはもう、まちがいなく成立するだろうなと。
経営的に上手くいくだけでなく、
宣伝広告媒介としても
これ以上のものはないと思いました。
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糸井 |
NHKも流しますからね。
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堀江 |
そうなんですよ。
民放のプロ野球ニュースでは、
会社名を連呼してくれます。
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糸井 |
球団を持とうと思ったのは、
「ライブドア」になった後でしたっけ?
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堀江 |
はい、「ライブドア」になってからです。
ぼくが最初にはじめたのは、
「オン・ザ・エッヂ」という会社でした。
で、2002年に「ライブドア」になるんですけど、
あのときもちょっと
トリッキーなアイデアがあって。
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糸井 |
たしか、有名になっていた名前を
引き受けるかたちだったんですよね。
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堀江 |
そうなんです。
「旧ライブドア」が
費用をかけて広告宣伝をしたあとで、
経営破綻したその会社の営業権を買い取りました。
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糸井 |
たっぷり宣伝された会社を買った。
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堀江 |
ええ。
ブランドの価値がすごくあると思って。
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糸井 |
経営破綻したブランドでも価値がある。
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堀江 |
はい。
経営破綻のような事実があったときに、
そこのブランド価値がどれくらい下がるかというと、
じつはあまりダメージがないということが
これまでの例でわかっていたんです。
たとえばJALは倒産しましたけれど、
JALのブランドはまったくそこなわれてませんよね?
つぶれたことすらみんな忘れてると思うんです。
たった3、4年前のできごとなのに。
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糸井 |
‥‥おもしろい。
考えたことなかったです、それは。
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堀江 |
だからぼく、いま、
日本の中古ブランドがほしいですもん。
使われていないオーディオのブランドとか、
ありますよね? いくつも。
ああいうのをほったらかしにしてるのは
もったいないです。
あれでほんとに仕事ができますよ。
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糸井 |
おもしろいなぁ。
‥‥堀江さんの本で、
そういうビジネスアイデアが
いっぱい書いてある本がありましたよね。
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堀江 |
はい。
『金持ちになる方法はあるけれど、
金持ちになって君はどうするの?』ですね。
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糸井 |
あれ、おもしろかったです。
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堀江 |
あれに載せたのは、
「みんなやったらどう? ぼくはやらないけど」
というようなアイデアなんです。
スモール・アイデアというか。
やりたい人があったらやってください、という。
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糸井 |
無料で陳列してるわけですよね。
それがすごくおもしろかった。
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堀江 |
なんというかその‥‥
世の中がおもしろくなってほしいんですよ。
いまインターネットのおかげで
いろんなひとにアクセスできるじゃないですか。
その気になればぼくは、
興味深いひとにどんどん会えるようになりました。
ありがたいことだと思っています。
で、会えた人から直接お話をうかがうと、
何個かのアイデアがばーっと出てくるんですね。
だったらそれは社会に還元して、
それをみんながおもしろがってビジネスにするなり
自由に活用してくれたら、
おもしろくなるよね、という。
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糸井 |
‥‥いいですね。
そこの部分の堀江貴文というのは、
あんまり語られていないですよね。
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堀江 |
そうでしょうか。
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糸井 |
うん。
それこそ、もったいない(笑)。
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堀江 |
(笑)
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糸井 |
それもやっぱり堀江さんのコンセプトですよ。
「みんなこうすればおもしろいのに」っていう。
(つづきます) |