糸井 |
この『ゼロ』という本の編集チームは
どうやって集めたんですか?
みんな所属がバラバラですよね?
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堀江 |
最初のきっかけは、
さっき話した水野敬也くんになんですが‥‥。
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糸井 |
ああ、そうでした(笑)。
ベストセラー本を差し入れてくれた。
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堀江 |
そのあとに長野まで面会にきてくれたのが、
いま「コルク」という
作家のエージェント会社をやってる
元講談社の佐渡島庸平くんという男なんですよ。
ぼくの大学のゼミの後輩で。
もともと『ドラゴン桜』とか
『宇宙兄弟』とか、マンガの編集者なんですけど。
ぼくはずっと前から彼に「独立しろ」って
何回もいってたんです。
めちゃくちゃ天才なんです、びっくりするくらい。
なんでマンガの編集やってるんだろ? と思ってて。
で、実際、独立したんですけど。
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糸井 |
そういうところが、
堀江さんはおもしろいですよね(笑)。
親切というか、おせっかいというか。
ひとの人生までアシストしようとするよね。
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堀江 |
そんな彼に、
刑務所から出てきたとき相談したんです。
「こういう本がつくりたいんだけど」と。
そしたら、編集の人や
構成・ライターの方を紹介してくれて、
もうスタートですよ。
LINEでグループをつくって、
どんどんトークしながら
プロジェクトが進んでいく感じですよね。
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糸井 |
すぐにチームができた。
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堀江 |
それと‥‥
今回こういう本を出そうと思った動機のひとつに、
刑務所で決意したことがあったんです。
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糸井 |
ほう。
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堀江 |
ぼくは40歳という年齢を、
刑務所の中で迎えたんですね。
それで、なんていうんですかね‥‥
「人生けっこうきちゃったな」と。
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糸井 |
きたな、と(笑)。
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堀江 |
「やばいな。やりたいこといっぱいあるのに、
ぜんぜんできてないじゃん」って。
せっかく恵まれた立場にいたのに、
逃してきたチャンスもいっぱいあったんですよ。
基本的にシャイなので。
自分からアプローチしないんですよね、人に対して。
とくにホリエモンとして有名になってからは、
その環境に甘えていた気がして。
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糸井 |
向こうからアプローチしてくれますからね。
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堀江 |
はい。
なんとなく来た仕事とか、
来た人たちと交流していた感じだったんです。
でも2年間、刑務所の中で人生を過ごして‥‥。
その日々がムダだったとは思わないけど、
機会損失は大きいですよね。
だから会いたい人、会わなきゃいけない人には、
自分から直接アプローチしようと、
40になった日に決意したんです。
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糸井 |
それ、ぼくも40歳くらいのころに思いました。
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堀江 |
そうなんですか?
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糸井 |
ぼくがシャイだっていっても
みんな信じてくれないんで、
いわないことにしますけど(笑)。
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堀江 |
(笑)
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糸井 |
やっぱりシャイですよ、人は。
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堀江 |
ええ。
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糸井 |
みんな、がまんして、
シャイじゃないようにするんですよね。
受け身でいたほうが自分は傷つかないから。
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堀江 |
そう、そうなんです!
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糸井 |
だからぼくも、誘いのあったお仕事を
「いやだ」とか「いいね」とかいいながら
こなしていた時代が長かったんです。
それをぼくは
「芸者さんの時代」といっています。
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堀江 |
芸者さんの時代?
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糸井 |
呼ばれたら踊る、お座敷がかかったら踊る、
という受け身の仕事ばかりでした。
でも、たとえば100万個のお座敷がかかったら、
踊れないんですよ、100万回は。
そうなると「ただの踊れないひと」になってしまう。
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堀江 |
ああ‥‥。
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糸井 |
それに気づいたころから、
「頼まれた仕事は
自分からやらせてくださいといえる仕事に
置き換えられるか?」
と考えることにしたんです。
なにかお誘いがあったとき、
すぐに返事をしないで1日置く。
それであらためて、
これは自分のほうから
「やらせてください」と思うかな? と考える。
そこで、こっちからお辞儀してでも
「お願いします」といえる仕事なら、引き受ける。
そうすると自分がお願いしたのと同じだから、
無責任にもならないじゃないですか。
これを思いついたのが40のころです。
受け身をやめようと思った
いまの堀江さんとちょうど同じ時期ですよね。
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堀江 |
なるほど。
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糸井 |
厄年って、ないようであるんですよね。
からだの変わり目でもあるとは思うんだけど。
自分ではかなり力がついたと思ってるのに、
社会はそう見てくれない。
力のわりに無力感を感じるんですよ、
40歳くらいのとき。
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堀江 |
うーん。
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糸井 |
その無力感で、
自分を考えなきゃならない時期に、
堀江さんの場合は刑務所が重なってるから、
なおさらですよね。
「無力そのもの」になるわけだから。
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堀江 |
手足を縛られた感じで。
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糸井 |
無力であることが強調されますよね。
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堀江 |
だから、40の誕生日で決意しました。
とにかくこれからは積極的に人と交わっていこうと。
後悔できないですから。
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糸井 |
後悔、ありましたか?
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堀江 |
ちょうどそのころ、
スティーブ・ジョブズが亡くなったんです。
ほんとうに思ったんですよ。
「スティーブに、会っとけばよかった」って。
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糸井 |
ああー。
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堀江 |
「おれ、会うチャンスはあったよな。
自分から会いたい!って動いていたら、
ぜったいに会えてたよな」って。
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糸井 |
自分が望めば、
その道を探すようになりますからね。
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堀江 |
ええ。
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糸井 |
でも、モテてる盛りってのは、
その気持ちが出てこないんですよね。
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堀江 |
そうです。ほんと、そうです。
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糸井 |
「ジョブズだって来るよ」
と思ってるんですよ(笑)。
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堀江 |
おっしゃるとおりで
「来るまで待とう」と思ってました。
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糸井 |
ほんとに向こうから来たとなったら、
ちょっと鼻高々になるじゃないですか。
しかも、その鼻高々を味わいたいじゃないですか。
そこにやっぱり、みんなの落とし穴があるんだよね。
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堀江 |
そうですね。
だから、そこは変えていこうと思っています。
(つづきます) |