糸井 |
『ゼロ』という本を読んで
具体的にいちばん役に立ったのは、
ヒッチハイクの話だったんですよ。
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堀江 |
あ、ぼくが大学時代にヒッチハイクをやっていた話。
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糸井 |
日本中に行ったんですよね。
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堀江 |
北海道をのぞくほとんどの都道府県に行きました。
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糸井 |
あの話に、ぜんぶが入ってると思ったんです。
つまり、世の中って
「やってみないとわからないこと」
だらけじゃないですか。
刑務所なんかはその典型でしょうし。
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堀江 |
そうですね。
刑務所には、
なにも考えないようにして入っていきました。
ゼロベースで入るしかないです。
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糸井 |
だからそれも、ヒッチハイクですよね。
「乗ってから」でしょう。
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堀江 |
ああー、はい。そうです。
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糸井 |
「ああして、こうして」って、
あらかじめ筋書きを立てて、
「運転手さんにこの話をしよう」とか考えてたら、
きっとダメですよね。
相手がどんな出方でやってきても、
即興で返せるようにならないと。
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堀江 |
はい。
覚悟してコミュニケーションすれば、
ちゃんと伝わるということがわかりました。
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糸井 |
あのヒッチハイクの話は、ほんとによかった。
なんかね、
「若者は海外に行くべき」という話があるけど、
海外は日本にありますよね?
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堀江 |
ありますね。
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糸井 |
トラックの運転手さんとのやりとりなんて
海外のエピソードそのものですよ。
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堀江 |
ただ、ヒッチハイク=トラックかというと、
意外とそういうことでもないんです。
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糸井 |
乗用車の場合もあった?
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堀江 |
いちばん多いのは社用車ですね、
出張で名古屋や大阪に行くような
営業マンが乗ってる車です。
トラックって、
とくに大手の運送会社のは、ほぼNGなんです。
会社の内規で決まってるみたいで。
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糸井 |
そうか、そうか。
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堀江 |
トラックでやるんだったら、中小。
乗せてくれる会社はだいたいわかってきます。
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糸井 |
ああー。
堀江さんには、まず「観察」がありますよね。
その観察がしっかりできているから、
類型化だったり法則性みたいな話が出てくる。
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堀江 |
まさにそれ、最近の講演会で話してることなんです。
みんな、どこかで
「堀江は特別な情報源を持ってるんじゃないか」
と思ってるんですね。
それこそインサイダー情報的なものを入手して、
あれこれうまいことやってるんじゃないかと。
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糸井 |
印象として。
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堀江 |
でも、ぼくの情報源は基本スマートフォンなんです。
ツイッターとかフェイスブックなどの
ソーシャルメディアや、ニュースアプリ。
あとは有料メルマガ。
それ以外の情報源は、
やっぱり人に会って話をすることなんですよ。
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糸井 |
出かけて、人に会う。
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堀江 |
はい。
できるだけ自分と関係なさそうなところに
行こうと思ってるんです。
ベンチャー経営者の人たちが
勉強会とか懇親会と称してよく集まってますが、
そこにいる人たちって
やってることも考えてることもすごく似てて、
有用な情報がほとんど得られないんですよ。
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糸井 |
はい、はい。
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堀江 |
そういう場所に行くよりは、
地方のイベントに行ったり、
それこそ合コンに行くほうが、
おもしろい情報がとれるんですよね。
宝の山が隠れているというか。
たとえばLINEにしても、
あれって2011年の6月にスタートしたんですけど、
ぼくは8月にはもうキャッチしていたんです。
刑務所に面会にきた女の子から
「LINEのID教えて」っていわれて、
「えっ、LINEってなんだよ」みたいな感じで。
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糸井 |
刑務所の中では使えませんよね?
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堀江 |
使えないです。
でも世間の人より早く知ることができたんです。
だから、ノイズ的な情報の中にこそ、
じつは原石が眠っているというか。
どこに行けばおもしろい情報が得られるか、
みたいなことはいつも考えていますね。
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糸井 |
なるほどぉ。
お話をうかがってると、あれですね、
料理人が市場(いちば)に行って
食材を見ているような感覚ですよね。
「あれは使える、これも使える」みたいな。
堀江さんは
そういうゲームをずっとやってきたんですね。
どういう車がヒッチハイクで乗せてくれるか、
というのもそうだし。
LINEの話にしても、早く知っても遅く知っても、
どっちだっていいじゃないですか。
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堀江 |
え‥‥そうですかね?
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糸井 |
うん(笑)。
生活者としては、
知らなくても生きていけることだもの。
でも堀江さんは新しい素材がほしいんだし、
なにかを素材を見つけたら
「料理したい!」と思っちゃうんですよね。
テレビ局を買収するとかいう話でも、
さっきのマンガ編集者の佐渡島さんの話でも、
堀江さんは
「もったいない」って思う人なんですよ。
本人たちは満足してるのに(笑)。
素材を見ると、料理したくなっちゃうんですよ。
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堀江 |
ああー、そうなのかなぁ。
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糸井 |
それをやってたら、波風は立つよね。
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堀江 |
うーん。
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糸井 |
だって、いまのところ安定していて、
それなりに楽しそうにしてる人のところに行って
「もったいないじゃん!」
ってけしかけるわけでしょ?
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堀江 |
‥‥しかも、かなりしつこくいいます。
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糸井 |
それはね、波風が立つ(笑)。
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堀江 |
立ちますね。
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糸井 |
あー、よかった。
きょう、堀江さんのことがよくわかった気がします。
たとえば、温泉に入ってるときにさ、
胸まで浸かって気持ちよくなってる人の肩をつかんで
「もっと浸かると、もっと気持ちいいんだよ」って、
押し沈めてるようなもんでしょ(笑)。
ずっと同じだもん、そこのおせっかいは。
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堀江 |
ぼく、沈めますね(笑)。
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糸井 |
そりゃ、反発されることもありますよ(笑)。
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堀江 |
いろんなことに対して、
「もっとこうすればいいのに」と思うんです。
だからテレビ局も「もったいない」だったんですよ。
余計なお世話だったのかもしれないけど。
※2005年、ライブドアがニッポン放送の株を35%取得。
同社最大株主となる。株取得が報道された直後から
当時ニッポン放送の子会社だったフジテレビジョンを
出入り禁止になる。
このとき「想定の範囲内」という言葉が報道され流行語に。
その後、ライブドアとフジテレビジョンの和解が成立。
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糸井 |
余計なお世話のおかげでみんなが喜ぶこともあれば、
余計なお世話のおかげで
退場しなきゃなんない人もいますよね。
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堀江 |
そうですね。
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糸井 |
どんなにまじめなおせっかいでも、
「あいつのせいで損しちゃった」という人間は、
かならず出るわけです。
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堀江 |
ええ。
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糸井 |
その人たちがちょっと幸せになってくれると、
また社会全体がいいですよね、きっと。
難しいことですけど‥‥
長い時間をかけて上手になっていくんでしょうね。
それができたら、またおもしろいと思うんですよ。 |
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(つづきます) |