さて、いよいよふたりが本格的なランニングにはいります。
といっても、彼らが目指すのは
「いきなりフルマラソン完走!」とか
「サブ4(フォー)切り!」
などというものではありません。
(すみません、サブ4はランナー用語で
フルマラソンで3時間台を出すことです)、
あくまでも「健康なカラダを取り戻す」ということ。
そして、生涯をつうじてできる習慣や趣味として
ランニングを生活に取り入れてもらいたいということ。
そのためにまずは距離としては「5km」。
時間にして「30〜40分」を目安に
走りはじめることにしました。
![べっかむ3](images/ishikawa.gif)
「5km‥‥って中学校のマラソン大会の距離だよ!
それを週に何回くらいやるの?」
最低、週3日。できれば週4日やってほしいです。
![シェフ](images/chef.gif)
「そ、そんな、週に3回もマラソン大会だなんて!」
そうですよね。ぼくも週に3回、
マラソン大会だったとしたら嫌です。
その気持ち、よぉーくわかる!
たぶん、ふたりとも
「マラソンはきつい」
「ランニングは苦しい」
「はやいやつに負けちゃうあの感じがいやだ」
というような、体育の授業のイメージが
こびりついちゃっているんですよね。
きっと「ゼイゼイ・ハーハー」いいながら
走っていたでしょ?
![シェフ](images/chef.gif)
「そうだよー。もう苦しくって苦しくって!」
まず最初に申し上げましょう。
それは明らかな「オーバーペース」なんですよ。
「ゼイゼイ・ハーハー」いわないくらい、
ふつうにおしゃべりができるくらいのペースが
その人にとって「ちょうどいいペース」なんです。
はじめて皇居一周5kmを走ってみて
それなりに汗もかいて疲れたかもしれないけど
「意外と走れた」ことにびっくりしませんでしたか?
![べっかむ3](images/ishikawa.gif)
「‥‥たしかにそうかも。
おしゃべりして気が紛れたからだと思っていたけど、
そういうことではないんだね。
そうなんです。
それが前回お話しした
「LSD」というトレーニングなんですよ。
![シェフ](images/chef.gif)
「LSDって、それやばくない?
ルーシーインザスカイウイズダイヤモンドだよ!」
![べっかむ3](images/ishikawa.gif)
「ドーピングは嫌ですよ!」
まあ、エルエスディー、って聞くと
ドキッとしますよね。
でもちがうんです。
ランニングにおける「LSD」というのは
「Long Slow Distance」の略。
つまり、「ゆっくり長く走る」トレーニングなのです。
![](images/p_09/p_06.jpg)
![LSDはいいことづくめ!](images/t_09_2.gif)
LSD、これがよく効くのです。
走り始めた1年間は
これだけずっとやるだけで充分なくらい。
ほんとにいいことずくめなんですよ。
たとえば‥‥。
脂肪がよく燃えます。
おしゃべりできるくらいの心拍数で長時間走り続けると
体が脂肪を燃やしてエネルギーに変えるモードに
チェンジします。
心肺機能もアップします。
ほどよい刺激を長時間加えることによって
ゼイゼイ追い込まなくても
自然に心肺機能がアップします。
毛細血管が発達します。
ゆっくり走り続けると細かい毛細血管が発達します。
これはつまり、体の隅々まで
酸素が行き渡るようになるということ。
持久力(スタミナ)がつきます。
長時間止まらずに体を動かし続けることによって
全身の筋肉が鍛えられ、スタミナがつきます。
無駄のないフォームが身につきます。
長時間体を動かし続けると、
体が自然と無理の無い動きやリズムを覚えていき
意識しなくても無駄のないフォームが身につきます。
![シェフ](images/chef.gif)
「LSD、おそるべし! むちゃくちゃ効くんだね!」
そうなんですよ。
そして、LSDで走る時に大事なことがあります。
それはとにかく「がんばらない」こと。
ゆっくり走っているつもりでも
ついついペースがあがって、いつのまにか
「ハーハー」してしまうことがよくあるのです。
とにかく頑張らずにゆっくり走る。
これがポイントなんです。
![べっかむ3](images/ishikawa.gif)
「で‥‥1キロあたり何分くらいがLSDのペースなの?」
それは個人差があるんですよ。
たとえば、ぼくにとってのLSDのペースと
べっかむ3にとってのLSDのペースは違うはず。
![シェフ](images/chef.gif)
「そっか、フルマラソンを何度も走ってる
先輩ランナーと同じなわけないよね」
はい、それでもぼくは1km4分くらいで
「ハーハー」言いはじめるんですが、
箱根駅伝を走る選手なんかは
1km4分だと、冗談をいいながら走れる速さなんですよ。
でも、今のふたりは1km4分というのは
全力疾走に近いペースかもしれません。無茶です。
LSDペースというのはそれほど個人差があるので、
厳密には心拍計で計る必要があるのですが、
そこまできっちりやる必要はありません。
意識的に「おしゃべりできるくらい」の気持ちを
じぶんのペースだと考えて、
なるべくゆっくりめに走りはじめてみてください。
最初のうちはウォーキングしている人の方が
速いこともありますが、
そこは無理をせずにじっくりと。
まずは3ヶ月LSDで距離と時間を伸ばしながら
「長距離向き」の体にチェンジすることから始めましょう。
そうすると、自然と走る技術も身につくんですよ。
まずは3ヶ月後に
「10km走れること」
「60分以上走り続けること」を到達目標にしましょうか。
![べっかむ3](images/ishikawa.gif)
「10kmということは皇居2周か。
頑張ればできそうかも?」
![シェフ](images/chef.gif)
「10kmって途方もない距離だと思ったけど、
そうだよなあ、皇居2周と思えば、
ちょっとは気が楽になる」
とはいえ、10kmを
楽に走れるようになったらすごいですよ。
だって、渋谷から多摩川までが約10kmですからね。
武井さんはよく旅に行くじゃないですか。
例えば、パリで朝、10kmジョギングしたとしたら
だいたいの市内は観光できますよ。
そして、地図上じゃなくて、脚でその土地を走ると
街そのものつまり町並みや距離感を
もっとリアルに感じることができるんです。
![シェフ](images/chef.gif)
「ぽわ〜〜ん。それいい! たしかにそうだ!」
![](images/p_09/p_07.jpg)
個人的には、走っていてよかったなということが
ひとつ、あるんです。
あの震災で都内のバスや電車がストップして
子どもの保育園のお迎えができないと
妻から連絡があったんですね。
調べてみたら会社から保育園までの距離が
ちょうど10kmだったんです。
10kmならジョギングペースで
1km5分くらいで行けると考えて、
交通機関を探したり、車で移動することよりも、
「走っていったほうが速い」と判断ができました。
いつでも10km走れる体をもってて良かったなあ、
と思った瞬間です。
![べっかむ3](images/ishikawa.gif)
「なるほど。
うちも幼稚園にあずけているから
とっさの時にそういう対応ができるといいな」
![シェフ](images/chef.gif)
「強いパパだねえ。かっこいい」
とはいえ、それは、想定外のこと。
まずべっかむ3は
子どもと走り回れる体力をつけることからですよね。
個人的な感想ですけど、特別なことはしなくても
ゆっくり長く走るLSDが
3時間できるようになったら
自然とフルマラソンサブ4はできると思いますよ。
![シェフ](images/chef.gif)
「うん、まだよくわからないけど、
そういう大きな目標があるのもいいかもね」
![べっかむ3](images/ishikawa.gif)
「そうだよ、フルマラソンなんて、
3年くらい先の話だし!」
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