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もう2月だよ!
東京マラソンまであとわずか。
ベイちゃんは順調に仕上がっているように見える。
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あとは、本番当日まで風邪をひかないようにすれば
大丈夫なんじゃない?
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じつは走り終わったベイちゃんのタイムを聞いて
ちょっとびっくりしたんですよ。
「えっ。そんなに速かったの?」って。
2週間前に30kmのレースタイムが2時間56分。
ラスト5kmで脚がつって、そのタイムです。
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ほんとすごいよ!
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ラスト5kmまでベイちゃんと一緒に走っていた人がいて、
その人のタイムは2時間49分でした。
1キロ5分40弱。
つまり、脚がつらずにゴールしていたとしたら、
ベイちゃんの30kmのタイムもこれくらいだったはず。
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いいじゃない、その調子で!
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うーん。
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何が不満なんですか、コーチ!
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ベイちゃんのタイム、
ぼくの想定タイムよりちょっと速すぎるんです。
ぼくの見立てでは、110分をギリギリ切れるくらい、
1キロ5分15秒くらいでくると思ったら、
1キロ5分〜5秒くらいのペースでやってきた。
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いいじゃないスか、コーチ!
10秒くらいしかかわらないじゃないスか!
‥‥そんなに違うの?
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1kmあたり10秒の差って
明らかに走力がワンランク上なんですよ。
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それのどこがわるい!
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悪くはないです、ぜんぜん。
速く走れたことは良かったんです。
でもよくよく聞いてみたら、
風邪で1週間走れなかったし、
最後の1週間は3日間のうち、
2日間はゆっくり、最後の1日は5kmを
キロ5分で走った。と。
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ああ、そんなこと言ってたね。
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それでわかりました。
そりゃ、速く走れずはずだわと。
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ん? なんで? 練習したほうが
もっと速く走れたんじゃないの?
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ベイちゃんにとって、
風邪をひいてしまったことで偶然のように
新宿シティーハーフへの
最高の調整ができちゃったんです。
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いいことじゃんかー!
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新宿シティーハーフが最終目的だったら、
それは最高の結果です。
でも目標は‥‥。
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ふたり |
東京マラソン!
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そうなんです。
本来は30kmのレースのあとは
なるべく毎日ゆっくり60分走りながら
スタミナを維持しつつ、
ハーフマラソンで疲労のピークを迎え、
そこで疲労を出しきることで、
東京マラソンの日にピークをもってくる、
というプランだったんですよ。
それが風邪をひいて休養をしっかりとったおかげで、
ピークが新宿ハーフに来ちゃったんですよ。
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やっと言ってることがわかった。
さっぱりわかんなかったですよ、
猪野熊(いのくま)コーチ。
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誰が猪野熊ですか。
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わかった、「アタックNo.1」だ。
あれ? 本郷コーチじゃなかったっけ。
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こらこらおっさんども。古い。
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(無視して)富士見高校は本郷先生だけど
オールジャパンは猪野熊なんだよ〜。
本郷先生とは大学の友だちでね〜。
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(真剣に)話がずれてます!
ぼくは猪野熊じゃないし
ベイちゃんは鮎原こずえじゃありません!
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知ってるじゃん!
いや、そのくらいの熱心さだなと思って。
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とにかく2ヶ月ゆっくり走って、
(以下、一気にまくしたてる)
体重を落としてスタミナをつけ、
2週間前にレースで30kmをしっかり走って、
心肺と脚に負荷をかけ、
その疲労を1週間かけてとり、
その間もストレッチを欠かさずメンテナンス、
そして、2日間ゆっくり走って脚を慣らして、
仕上げに5kmをキロ5分で走って、
心肺と脚にちょうどいい刺激を入れて、
最高のコンディションで、
新宿ハーフを走れちゃったんですよーっ!
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わはははは。コーチ、真剣。
そういうことなんだねえ。
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ぜいぜい。
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ゴールが新宿シティハーフマラソンだったら
これで万々歳ですが、
あくまで最終ゴールは東京マラソン。
この3週間は東京マラソン向けに
きっちり仕上げなければなりません。
これまでのいきさつから推測すると、
今のベイちゃんはこんなランナーです。
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●スタミナ派というよりは
スピードランナータイプ。
●10kmくらいなら
1キロ5分くらいのペースで
すいすい走れそう!
●しかし現在はスタミナが
ずっぽり抜け落ちている! |
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よもやのスタミナ不足!
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磯野藻屑源素太皆(すたみな)!
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波平さんの先祖!
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永井一郎さんがーっ!
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いい加減にしないと、
これから皇居ラン全力疾走に行ってもらいますよ?
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ごめんなしゃい。
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しゅみましぇん。
ええと、そうか、まず、
ベイちゃんはぼくらと違って、
スピードランナーだってことだ。
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そうなんですよ!
同じペースで長い距離を延々と走るよりも、
5kmとか10kmを
スピードを上げて走るほうが得意なタイプ。
このタイプのランナーがフルマラソンを走ると、
後半に落ち込みやすいんです。
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ぐわっ。
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とくにベイちゃんは新宿シティハーフマラソンで
一度ピークがきているから、
スタミナが抜け落ちていると思うんです。
このまま東京マラソンを走ると、
1キロ5分30秒くらいで順調に30キロを通過、
少し脚が重くなった35kmの銀座4丁目あたりで
「さあ、ここからが踏ん張りどころ」
‥‥と思ったら佃大橋への上り坂で、
「あれ、脚が動かない?!」となって
その後は一気にペースが落ちてしまう‥‥。
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それはいかん!
それでは「40キロをじぶんのできるかぎりの速さで
駆け抜けてゴールがしたい」という
ベイちゃんの夢が、ついえてしまう!
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それを防ぐことは
これからでもできるの?
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ちょっと突貫工事ですけど、
準備はできます。
前半を押さえて、後半に力を発揮できるように、
身体を重めに仕上げていけばいいんです。
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食べればいいじゃん。
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ちがいます!
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ほら、ぼくらがハーフマラソンに出るときに
教わった「重めの脚」だよ。
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あ、そっち。
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そうです。残り3週間の週末を利用して
重めの脚をつくります。
そこでこの3週間のざっくりとした
メニューはこんな感じです。
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●なるべく平日は60分ゆっくり走る。
●第1週目の週末どちらかでは180分のLSD。
●第2週の水曜日あたりに10kmのうち3kmを、
キロ5分くらいで走ってみる。
●第2週目の土曜日に、30kmを、
1キロ6分〜5分30秒のペースで走る。
●第3週目の水曜日に15km。
5kmをアップでゆっくり走り、
5kmをキロ5分で走り、
5kmをダウンでゆっくり走る。
●本番まではゆっくり身体を
ほぐすくらいの気持ちでジョグ。
●本番を迎える。 |
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ほほう。なんだか完璧に思える。
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ポイントは第2週目の30km走です。
これをしっかり走っておくことで、
心肺だけでなく、35km以降を
しっかり走れる脚を作っておきます。
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また30km走るのって、
それはきつそうじゃない?
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ええ。さすがに一人でこれをやるのはきついので、
ぼくがペースメーカーとして
30km、ベイちゃんをひっぱります。
もう、2月8日朝10時からそのトレーニングを
砧公園のサイクリングコースで行うことも決めました。
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日時まで発表するんだ。
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そうです。
なるべく本番と同じ気温で走りたいですからね。
ここはアップダウンのあるタフなコースで
駒澤大学が箱根駅伝の山登りの5区の選手を
養成するためのコースとしても有名ですよ。
このアップダウンのあるコースで30kmを
しっかり走っておけば、
東京マラソンのスタートラインにも
自信をもって立つことができるでしょう!
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いよいよ追い込みだねえ。
ぼくらは給水くらいしか手伝えないけど
頑張ってほしいなあ。
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せいいっぱい応援するよ、
スタート地点から
「がんばれベイちゃーん!」。
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あ、それダメなんです!
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え?
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スタート直後の「がんばれ」は、禁句です。
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それはなぜか?
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「がんばれ」の謎、
次回以降の更新で!
(つづきまーす) |