藤原 |
今日の料理への質問なんですが、
お茶漬けにおだしを使いますか? |
飯島 |
はい、使います。 |
藤原 |
おだしをお茶漬けに使うというのは、
いつごろからなんでしょう。 |
飯島 |
歴史についてはわからないんですが、
最近結構お料理屋さんなどで
おだしを使うお茶漬けが出ますよね。
私が知る範囲では5〜6年前からの所が
多いですね。 |
藤原 |
お茶漬けというからには
やっぱりお茶のものだったんですか。 |
飯島 |
お茶です。私はなぜこのレシピにしたかというと、
鰹だしって、イノシン酸という旨味成分が入っていて、
お茶っていうのは昆布と同じ
グルタミン酸という成分、旨味が入ってるんです。
だからだしをかけてるようなものになるんですけど、
香ばしく煎ったお茶に薄めのおだしを入れて、
そんなに魚臭くならないようにして、
ちょっと塩としょうゆで味をつけて、
ご飯にかける、という方法を採りました。
お茶だけだとやっぱりあっさりしすぎてしまって。
かといってだしだけだと
「お茶漬け」って言わないんじゃないかなと。 |
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糸井 |
だしをお茶漬けに使うのってね、
何か粗末だったはずのものの「豪華化」というか。
例えばおにぎりでも、
「おにぎり屋さん」ができた時に
家の中で話題になってたんですね。
おにぎりをお金取って食べさせる店があるぞって。 |
藤原 |
やっぱりちょっと変だなあと思ったでしょ。
わかりますよね。 |
糸井 |
それと同じようなことが、
お茶漬けという最後の質素なものに、
起きているんでしょうね。
鯛茶とかごまだれがあるでしょう、
あのあたりの時に誰かが
数奇者として始めたんじゃないですかね。 |
藤原 |
ああ、わざとね。
風流に茶漬けを気取ってみたと。 |
糸井 |
今まさにそれが行われているのが、
卵かけご飯だと思います。
今、ものすごい流行してますよね。 |
藤原 |
あれ専用のしょうゆがあるでしょう。 |
飯島 |
(キッチンから運んできて)
糸井さん、藤原先生、
お話の途中ですけど、
こちら、どうぞ。
「めがね」の、お重です。 |
糸井 |
(感慨深げに)
この重箱だったんですか!
同じお重ですよね? |
飯島 |
はい。 |
糸井 |
うそーっ。
これだったんですか! |
藤原 |
来た来た来た!
そして飯島さん、
いい笑顔ですね。
飯島さんを撮りたい感じ。 |
飯島 |
こちらは、材料を用意しないでつくった、
男性が作ったっぽい、
彩りをそんなに気にしてないみたいな
ちらし寿司なんです。
ちょっと大ざっぱ。
ジャン(と、ふたを開ける)。 |
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一同 |
わぁー!
(拍手) |
糸井 |
こうなんだ。いい色だよ。
これをね、(映画のなかでは)
「一緒に食べませんか」
って言われるんですよね。 |
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飯島 |
そうです。 |
糸井 |
そんなウエルカムってないですよね。
今作って、あなたがまだ
(仲間としての)勘定に
入ってなかったはずなのに、
分け方を変えればあなたも入れますよという、
あの迎え方はね。 |
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藤原 |
うまい。うん。 |
糸井 |
見事だった。 |
飯島 |
あとこのちらし寿司は、
ちらし寿司って豪華なのが普通なんですけど、
急にもたいさんが来たのを迎えるわけなので
最初からエビとかイクラがあったら
おかしいかなと思って、
わざわざ買い物に行かなくても作れる
ちらし寿司。あり合わせのちらし寿司。 |
糸井 |
人数も何人になっても大丈夫だし、
そのバランスを考えて
根菜の煮物もあるし。 |
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飯島 |
これも鶏を入れたいところなんですけど、
唐揚げがあるので厚揚げにして。 |
糸井 |
ああ、分けたんだ。 |
飯島 |
三段あったんです。 |
糸井 |
これを前に、
「一緒に食べませんか」って言われたらね‥‥。 |
藤原 |
絶妙。 |
糸井 |
まいるよね。 |
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藤原 |
これ、大皿盛りのものを取り分ける食卓と、
一人一人分けてあるっていうのがあるでしょう。
映画としてどっちなんでしょうね。 |
飯島 |
大皿を取り分けるほうが、なんかやっぱり
親しみやすい感じはしますよね。
「南極料理人」でも
最初は緊張して料理人の人が分けて、
個々に並べてたのが、だんだん親しんできたら
みんなで大皿を回すみたいな。
そういう表現があったりするぐらいなので。 |
糸井 |
南極料理人が新しかったのは、
「美味しいとは限らないですよ」というメニューを
主役にしてるんですね。
伊勢エビのフライだとか、
べちゃべちゃした唐揚げ。
あれは新しいなと思った。 |
飯島 |
どうぞ、食べてください。 |
糸井 |
わーい!
‥‥なんかこうしみじみしちゃう。
どこから行こうかな。 |
藤原 |
そうそう、どこから食べるかっていうのはね、
「タンポポ」の大テーマでしたね。
まず眺めなくちゃいけないのかな。 |
飯島 |
(笑)食べてください。 |
糸井 |
申し訳ない。 |
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藤原 |
いただきます。‥‥おいしい。 |
飯島 |
ちょっと質素なちらし寿司。 |
糸井 |
このお寿司、またいいね。
光石さんはあの時に
料理を飯島さんから習ったりしたんですか。 |
飯島 |
その時は現場で、
こういうふうにしてくださいとか。
具体的に作るシーンはなかったんですけど、
さらさらと丁寧に上手そうになさっていました。 |
藤原 |
そうそう。やっぱり主食回帰ですね。
ご飯の場面って、性格を表す場面に使うでしょう。
映画じゃないんだけど、
筑紫哲也さんが福田赳夫元首相のことを
『旅の途中』という本に書いてるんですね。
福田赳夫の朝ご飯をテレビで撮った。
卵かけご飯を食べる。
ここまでは普通ですね。
卵にお醤油を入れてご飯にかける。
そうするとご飯が少しなくなってきたあたりで、
器に卵がちょっと残ってるじゃないですか。
残った卵がもったいないからって、
ご飯を卵のほうの器にまた盛ってそれを食べる。
これでね、本当に福田っていうのは
正真正銘倹約家なんだ、大蔵大臣なんだっていう。 |
糸井 |
それはぼくはちょっと異論があるんです。
自分もやるんですよ、それ。
つまりね、卵ご飯っていうのは
黄身が残るんですよ。
白身はほとんど動きやすいんで
先に食べちゃう。
だから最後に入れたご飯で食べる時は
黄身ご飯が食べられる。 |
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飯島 |
なるほど。 |
藤原 |
そうか。福田赳夫は黄身が欲しかった。
最後に黄身ご飯で食べたかった。
もったいないってだけじゃないんだ。 |
糸井 |
そうだと思うんです。 |
藤原 |
いや、今日は来た甲斐があった! |
糸井 |
いやいや、ずっとそれをやってるものだから。 |
飯島 |
黄身が残るんですね。
生卵でご飯を2杯食べようと思った時に、
よっぽどそうしないと白身だけいくでしょう。
かき混ぜながらかけると白身はこっち側に残って
黄身が逆にいくんですよ。
それを両方使い分けてやるんですが、
どうしても黄身は最後に残る。
筑紫さんは卵ご飯を食べてなかったんじゃないですか。 |
藤原 |
そこまでいくかもしれない。そうか。 |
糸井 |
政治家の話だと、
つい経済観念っていう切り口にしちゃうんでしょうね。 |
藤原 |
黄身が好きだったんだ、と。
素直に見りゃあいいじゃんと。
黄身と白身の違いがわからないのが政治。
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(つづきます) |