面白くて笑ってばかりだったんですけど、
伊集院光さんと糸井重里の対談があったんです。
公開対談でね、そう、
「ほぼ日の學校」の!
テーマが一応「学校」なんですけど、
関係なさそうな話がどんどん出てくるんです。
円楽師匠の話や『粗忽長屋』の話になったり、
伊集院さんの奥さんと糸井の共通点が語られたり、
謎の旅の話をしたり、窓ガラスに鳥がぶつかったり、
だいぶ下品なたとえ話が登場したり。
‥‥でもふと気づくと、いつのまにかそれが
「学校」や「学び」の話にもなっていて。
ふたりが掛け合わさると、こんなふうに話が
広がっていくんだ!という驚きのある全15回。
ま、どうぞ、ごらんください。
- 伊集院
- いまって「タイパ」とか「コスパ」とか、
すごい言いますよね。
その「タイパ」をすごい言う代表みたいな人が、
「映画は1.4倍速で観るから」
って話をするんだけど、
大袈裟な話、映画館で映画を観た時って、
行くまでのこともすごい覚えてると思うんですよ。
- 糸井
- そうですね。
- 伊集院
- ‥‥かといっていま、
「どの映画も必ず映画館に行って観ろ」
「ハズレも掴め」
とか言われても難しいじゃないですか。
- 糸井
- それは困る。
- 伊集院
- 全部、このバランスの話になるんだよなあ。
だから
「映画館に行く道すがらを面白くするなにか」が
セットで映画だったら、
すごい面白いと思うんですけど。
- 糸井
- 前に航空会社のコマーシャルの仕事で、
リゾートに行くキャンペーンを広めたいときに、
「ハワイに行くって決めてからはもう、
行くと決めた場所から、ドアを開けて
トイレに行く時間もずっとハワイに向かってる」
っていう。
- 伊集院
- ああ、ハワイ旅行中ってことですね。
京成電鉄に乗って
「お花茶屋を通りすぎた」みたいな段階から、
もうハワイっていう。
- 会場
- (笑)
- 糸井
- そう。だから旅行かばんを買い直すとか、
「全部ハワイに向かってるんだ」という考えで
やりましょう、と言ったことがあって。
それは仕事で考えたことですけど、
自分自身はずっとそれやってますね。
なにかやるときって、
その当日はもちろんたのしいんだけど、
それを待ってる時間までたのしいっていう。
- 伊集院
- それ、正しいんだよなあ。
僕はその両方をミックスした結果、
国内旅行とか、
「分刻みでスケジュールを立てる」んです。
- 会場
- (笑)
- 伊集院
- だけど、その計画が崩れるときが、
いちばん好きなんです。
- 会場
- (笑)
- 伊集院
- 謎の。もうわけがわかんないですよね。
バスの路線からなにから全部調べて、
「ここは走らなきゃバス乗り換えられない」
まで決めるんです。
でも「意外に俺、足おせぇな!」
って乗れなくなるんですけど(笑)。
そこから復旧しようとしたり、諦めたりが、
僕のなかでの最高の旅で。
- 糸井
- はぁーー。
- 伊集院
- いろんな理屈でこね回した結果、
わけわかんなくなっちゃってんですけど。
- 糸井
- わけわかんないですね(笑)。
- 伊集院
- だから先週も出雲に行ったんですけど、
行くまでの寝台列車のなかで、
ラジオのネタ選びと、寝ると、原稿書くを全部やって。
それでようやく出雲から出雲旅行を
スタートできる、みたいなことをやっていて。
効率的なんだか非効率だか、
よくわかんないですけど。
- 糸井
- そういうトライをしてるわけですね。
- 伊集院
- トライしてるんです。
で、エラーが出たときの
自分のうろたえかたとか、面白いです。
台湾旅行に行って、台湾から直接僕は
『ぽかぽか』の生放送に行くんですけど、
飛行機がLCCなんで飛ばない可能性もあるんです。
そういうことにドキドキしてたりとか。
- 会場
- (笑)
- 伊集院
- おそらく1回しくじったぐらいは
許してもらえると思って、なるべくこのことを
『ぽかぽか』のスタッフには言わないようにしてて。
- 会場
- (笑)
- 伊集院
- 「お前、何度も綱渡りやってんじゃん」
ってなると、しくじったときに怒られるから。
でも、なんかそんなのも、
やっと面白くなってきて。
- 糸井
- すごいねえ。
それはやっぱり、おおもとは落語っていう
「あるものをちゃんと学ばないと
落語家になれない」
ってところからスタートしてるという。
- 伊集院
- かもしんないです。あ、そうですね。
古典って、
「全員同じ台本でお笑いやる」って
おかしいんですけど、落語ってそうですもん。
これをまずマスターしてないと。
そしてここを、
どう崩すか、どう崩れるかが。
‥‥あ、僕、落語やってるんだ。
あの謎の旅。
- 会場
- (笑)
- 伊集院
- 「いちばん正しい道を作ったうえで、
ぶっ壊れても何とかする」っていう。
- 糸井
- そう。
- 伊集院
- 僕、猛稽古してますね。
- 会場
- (笑)
- 糸井
- それは僕、伊集院さんについては、
前から何度もいろんなところで思ってたんです。
おおもとに落語があるからだろうなって。
でも、旅もそうだったかと思って。
- 伊集院
- とにかく理屈が通ってないとイヤなんですよ。
イヤなんだけどいま、
自分も成長して大人になったなと思うのは、
理屈がどうしても通らなかったときに、
「まあ、そういうもんだよな」
って理屈をつけられるようになってて(笑)。
- 糸井
- はいはいはい。
- 伊集院
- それ、カミさんの影響がすごくて。
カミさんをいつも理屈でやり込めてたら、
「『人間には、理屈じゃないけど
なんとなくイヤだっていうことがある』
って理屈は、あなたのなかにはないの?」
って言われて、もう
「参りました」っていう。
- 糸井
- お宅のその「カミさん」っていう人は、
僕ですね。
- 会場
- (笑)
- 伊集院
- やっぱり「理屈じゃない」っていう。
- 糸井
- 面白いんですよ、理屈って。
だって「地球には引力というものがあって、
実は引き合ってるんだ」とか、
聞いてるだけで面白いじゃないですか。
でも人間は、それを知らないときから
生きてますから。
ニュートン以前から引力はあったわけだから。
「その偉大さに君は気づけ」って、
僕は社内でよく説教してます。
- 伊集院
- 「理屈が答えじゃねえぞ」っていう。
理屈って「通ったほうが勝ち」な
ゲームじゃないですか。
ディベートでいうと。
僕自身は、理屈について
「面白い」って考え方を全然したことがなくて、
「やり込められると負けで、
やり込めると俺のほうが正しい」
みたいな発想で、どこかずーっとやってきてて。
だけどそれって教科書的なんですよね。
「だって教科書に書いてあるし」
ってことなんだけど。
(つづきます)
2024-02-02-FRI
(C) HOBONICHI