イベント「活きる場所のつくりかた」より
今井紀明さん、朴基浩さんのおはなし

ひとりひとりの若者が
自分の未来に希望を持てる社会のために、今できること
第3回
あまりにも人と違いすぎて、
目立って、たたき潰されちゃった子とか。
糸井
4年間ひきこもりって、やっぱり長いよね。
今井
一時期、ひきこもっていて、そのあとの、
対人恐怖症といわれた時期が長かったんですね。
というのは、人質の事件があったときに、
バッシングがあったんです。
ぼくの顔、見ていただければわかると思うんですけど、
めちゃめちゃ、わかりやすいというか。
糸井
うん。目立つ。
今村
(笑)
今井
だから気付かれるんですよ、路上で。
で、ふたつパターンがあって、
まず、応援されるんです。
「今井君、がんばって」って。
1時間外を歩いてたら何人にも言われるんです。
あともうひとつのパターンは、
「死ね」みたいなことを言われたり。
あとは、殴られたり。
けっこう当時は、そういうことがあって。
しんどかったですね。
大阪歩いていると、事件から8年経ってるのに、
おばあちゃんが、ぼくのことずっと見てるんですよ。
そうして「あ、人質や!」って。
会場
(笑)
糸井
すれ違ったとたんに
「あ、人質」って言われるのってすごいよね。
今井
通信制の生徒たちも、
「まわりから否定された経験がある」
というところでは、
ぼくの挫折経験と重なると思います。
そこから、なんかやろう、とはじめたんです。
糸井
今の話を聞いて、挫折する時の年代に
共通するものがあるのかなって感じました。
転びやすい、危険な年齢があるんじゃないか、という。
あると思います。
中学生、中3ぐらいから、
自分のキャリアを意識しはじめて、
親も不安になりはじめるじゃないですか。
なんとなく、内申点をみて
行く高校を決めちゃったりして。
入学直後、こんなつもりじゃなかったって、
学校に行かなくなる子もいれば、
受験はしたんだけれども、入学式から不登校になって
通信、定時に編入する、という子どもたちもいます。
そういった意味ではやっぱり15歳‥‥。
糸井
中学生だよね。
今井
中学校になると、急激に不登校率が高まります。
というのは、学校が管理教育になるんです。
急に小学校とムードが変わってしまうから、
合わない子が出てしまうんですよね。
糸井
うん、うん。
それで生徒たちが暴れる可能性があるから、
管理の方も強く出るっていう‥‥。
非常に生理的な感じがするね。
今井
まさしくそうですね。
糸井
以前、吉本隆明さんが、
「13歳から危ない」って言っていました。
それはなにかというと、13歳っていうのは、
ある意味、生殖可能年齢なんですよ。
だから、13歳からもう、
自分で子どもをつくって
親父になれるわけですよ。
だけど、実際には禁じられている期間が、
18、19、20のあたりまで、
13歳から5、6年間あるわけです。
その間、学校のなかで、保護されるべき、
なにもできない小さい大人として
生きていかなきゃならない。
そこで爆発するものがあるっていう。
社会の仕組みと生理との関係でとらえると。
関連する話でいうと、
たとえばアメリカでひきこもりの話をすると、
みんなから返ってくるのが
「え、なんでひきこもりダメなの?」
っていう反応なんですよ。
糸井
あ、なるほど。
いろんなところで、
「日本の子どもは、
 経済的には恵まれているけど、
 ひきこもりの数がこんなに多くて、
 進路未決定がこんなに多い」って話すと、
「え? なんでダメ?」って返される。
それでぼくが気づいたのは、日本には、
この年齢だったらここにいないといけない
っていうような前提があって。
そこから外れたら、「残念な人」というか、
「終わってしまった人」みたいな構図がある。
今村
みんなと同じように上がっていって、
みんなと同じようにに
仕事をしなければいけないという。
そうですね。だから余裕がなくて。
たとえば中学やめて働いている、って言うと、
「え、大丈夫?」って。 
糸井
うん、うん。
ぼくは、そういう社会の雰囲気が
問題だと思いますね。
糸井
なるほど。
で、まだ力のない中学生とか高校生が、
大人から否定されると、
俺はもう、完全に負け犬だ、
という認識になるよね。
うん、そうです、そうです。
今井
通信制に通っている子を見ていると、
エネルギーがものすごくある子もいるんです。
たとえば、中学時代に
何かしっかりやってきたけど、
それがあまりにも人と違いすぎて、
目立って、たたき潰されちゃった子とか。
糸井
やらかしちゃって、
懲らしめられちゃったやつ。
あ、ふたりとも、
ある意味で懲らしめられたやつなんだね。
今井
はい、そうです(笑)。
(笑)
今井
だから、もったいないと思うんです。
糸井
ああ~、そうか。
あの、オレ、同じドロップアウトでも、
下から落ちていっちゃう「落ちこぼれ」と、
上から飛び出していっちゃう
「吹きこぼれ」っていうのが
あると思ってるんだけど‥‥。
今村
間違いなく、ふたりとも吹きこぼれですね。
会場
(笑)
糸井
つまり、ませていたわけでしょ。
たまたまぼくは、吹きこぼれて落ちてしまって、
あの、自分で命を断とうというときに、
止めてくれる人がいたんです。
そして、たまたまバイトを
紹介してくれた人がいたんです。
糸井
あーー。
だから、極論すると、いわゆるヤンキーって、
就職できないっていうことはないんですよ。
なぜかというと、社会関係資本があるから。
友だちに「仕事、紹介してよ」っていったら、
誰かが紹介してくれるんです。
今村
仲間がいるからね、うん。
そうできない子の方が増えているから、
ニートが増えたりする、という現実がある。
糸井
はぁーー、そうか。
今井
それ、もったいないですよね。
あと、よく学校で外れているっていうふうに
見られるのって、しんどいですね。
ぼくなんか、高校時代、生ごみをあさって、
それを土に変える運動をしていたんです。
変なやつでしょ、どう考えても(笑)。
今井
で、やっぱり、白い目で見られました。
まぁ、ぼくもそれは変だと思いますけど(笑)、
ただ、そういうのを、ちょっと
認めてあげられるような環境がいいな、って。
自己擁護。
会場
(笑)
糸井
ミグノンの老犬ブームの話と同じだよね。
見方を変えたら「なるほどな」ってなる。
でも、そういうことを、
人は案外、認めたがらないんですよ。
今井
それは、可能性を潰すものだ、って思います。
なんか、ぼくが言うのもなんですけど。
糸井
いや、言っていいよ。
今井
ありがとうございます(笑)。
(第4回につづきます)

2015-07-06-MON