HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN

こんにちは、「ほぼ日」の奥野です。
写真家いくしゅんさんの写真を、
たくさん紹介いたします。
まずは、見てみてください。
それで、何枚も見てみてください。
そのうち、自分が、
いくしゅん目線になってるような、
そんな気がしてくるかもしれません。

いくしゅんさんのプロフィール

いくしゅん

1980年奈良県生まれ。主な同級生に
広末涼子、朝青龍、鬼束ちひろ、ミラクルひかる、
ATSUSHI(EXILE)、井上和香、田中麗奈、
真鍋かをり、熊切あさ美、優香、
西野亮廣/梶原雄太(キングコング)、
吉村崇/徳井健太(平成ノブシコブシ)、
藤川球児、愛内里菜、島谷ひとみ、酒井若菜、
松坂大輔、玉山鉄二、竹内結子、夏川純、
小島よしお、小池栄子、
村本大輔(ウーマンラッシュアワー)、
榎本加奈子、保田圭、妻夫木聡、八反安未果、
村主章枝、マルク・タイテルト、ターニャ・プティアイネン、
ヴェベケ・スコフテルード、ブラッドリー・ウィギンス、
アリスター・オーフレイム、ムリーロ・ニンジャ、
ヤーコ・タルルス、ジャン・デヴィリアス、
レイトン・ヒューイット、マハンドラ・デルフィノ、
ジョシュ・グローバン、ゾルト・バウムガートナー、
チェ・ホンマン、イーライ・マニング、ジリアン・チョン、
リヤー・セーン、グスターボ・ドゥダメル、
ダビッド・クライナー、カタリナ・スレボトニク、
ファビアナ・ムレル、マルチナ・ヒンギス、
リナ・アンデション、ファビアン・カンチェラーラ、
エカテリーナ・ガモワ、シェリー・ラッドマン、
アブドゥロ・タングリエフ、ローランド・スクーマン、
スベトラーナ・フェオファノワ、ジゼル・ブンチェン、
サンドラ・ラウラ、デニス・ニジェゴロドフ、
アルバート・クラウス、ベン・コズロースキー、
レックス・グロスマン、コリーナ・ウングレアーヌ、
ニコラス・ツェー、ティモシー・ゲーブル、
カーティス・トマセビツ、メリッサ・ホリングスワース、
キム・ソヨン、フランソワルイ・トランブレ、
イ・ウンジュ、ヤロスラフ・ルイバイコフ、
エビ・ザッヘンバハー・シェテレ、
マリアン・ドラグレスク、イボンヌ・ベニシュ、
マコーレー・カルキンなどがいる。

第2回
見出されたのに、
褒められない。

──
デビュー作は、京都の青幻舎さんから
出してらっしゃいますが、
これって、売り込みに行ったんですか。
いくしゅん
いえ、売り込みには行っていません。
──
ということは、見出されたんですか。
いくしゅん
はい、恥ずかしながら。
──
それは、誰に、どのような経緯で?
ネットか何かに載せてたんですか?
いくしゅん
ブログとTwitterには
まあまあ載せているんですけど、
もともとは、
清水穣さんという写真評論家の方が、
「おもしろいやつがいる」って
青幻舎さんに
言ってくださってたみたいです。
──
すごい。清水穣さんに見出された。
いくしゅん
で、ぼくが京都でやった展覧会に、
青幻舎の方が来てくださって、
その後、連絡をいただいたんです。
──
清水穣さんには、
どんなふうに褒められたんですか。
いくしゅん
いや、とくに褒められてないです。
──
え? 見出されたのに?
いくしゅん
面と向かっては褒められてなくて。

というか、
面と向かっては、けっこうメンタルを
グサグサとやられています。
──
メンタルを‥‥グサグサと?
いくしゅん
それが清水さんの芸風‥‥と言ったら
怒られそうですが(笑)、
そういう評論のスタイルなんですよ。
とにかく手厳しいことで有名で。

出版社には紹介してくださいますし、
清水さんのキュレーションで
展覧会に誘ってもらったりもしますが、
まともに褒められたことはないです。
──
そうなんですか。
いくしゅん
褒められたいわけでもないんですけどね。

デビュー作の出版記念イベントのときは、
「この本が届いた瞬間ガッカリしました」
からはじまって、
ぼくの写真のどこにガッカリしたのかを、
皮肉まじりに淡々と批評されました。
それも、たっぷりと時間を使って(笑)。
──
ご本人の目の前で。
いくしゅん
お客さん全員シーンとなって、
会場が、お通夜か葬式かみたいな空気に
早変わりしました(笑)。
──
いたたまれなくなるんでしょうね‥‥。

そういうとき、
いくしゅんさんは、何て返すんですか。
いくしゅん
フムフムと無言でうなずきながら、
わかったフリして乗り切ってます(笑)。

清水さんって、いっさい情けをかけない
冷淡なスタイルなんですけど、
切り口が独特だし、語り口も軽妙なので、
不思議と笑えるんですよね。
──
ああ、だったらいいか。
いくしゅん
そう、なんだか、
そういう落語を聞いているみたいな
気分になるんです(笑)。
──
グサグサやられて、その境地に(笑)。

話は変わりますけど、
聞くところによると、いくしゅんさんは、
もともと、
カメラをやってたわけでは、ないそうで。
いくしゅん
幼稚園から大学までラグビーやってました。
──
ラグビー? モフモフ好きなのに?
いくしゅん
はい。いいじゃないですか(笑)。
──
でも、幼稚園からって、すごくないですか。
いくしゅん
超体育会系の家系だったんです。
父もラグビーのコーチだったし、
兄も幼稚園から大学までやってました。

だから、大学を出て社会人になったら、
週末に打ち込めるものが、
何にも、なくなっちゃったんですよね。
──
それでカメラを手にした?
いくしゅん
ふつうに趣味ではじめたって感じでした。

でも、それまで
ラグビーしかやってこなかったんで、
高校当時に流行ってた
HIROMIXさえ知らなかったんです。
──
ガーリーフォト・ブームの火付け役とは、
まったく別の世界に生きてたんですね。
いくしゅん
アラーキーと荒木経惟という名前だけは
知っていましたが、
それが同一人物だとは知りませんでした。

そのレベルです。
──
どこへ転がっていくか判らないボールを、
追いかけていた青春だったから‥‥。
いくしゅん
で、土日にできる趣味を探そうと、
本屋や図書館に行って、
まったく興味のなかったジャンルの本を、
片っ端から眺めてみて、
「写真ならイケるっしょ」と思いまして。
──
イケる根拠は‥‥あったんですか。
いくしゅん
いえ。そのときに見た写真家の写真に、
ほとんど、魅力を感じなかったんです。

それより、ネットとかで見る、
素性の知れない素人が撮った写真の方に、
好みのものが多かった。
だから「これなら自分にもできる」って。
──
なるほど。
いくしゅん
それに、当時から大好きだった
「オシリペンペンズ」というバンドと、
お近づきになりたくて。

オフィシャルカメラマンぶって
友だちになってもらえないかなと(笑)。
──
いいですね。いい具合に動機が不純で。
バンド名もいいです。
いくしゅん
それで24歳か25歳くらいのときに
カメラを買ったんです。
──
それは、どんなカメラでしたか。
いくしゅん
コンパクトデジカメで、
当時、500万画素くらいしかないのに、
もろもろセットで8万円くらいしました。
──
高い。いまだったら、
2000万画素が3万円くらいとかで
買えたりしますよね。
いくしゅん
そう、「めっちゃ高ぇ!」と思って、
当時はバッテリーの持ちも悪かったから
スペアの電池も買ったら、
またそれだけで何万円とかして、
メモリーカードもめちゃくちゃ高くって、
とにかく「何もかも高ぇ!」と。

あまりカメラにお金をかけたくないので、
今は型落ちの中古デジカメを使ってます。
──
ちなみに、まわりの人たちは、
どういう反応をしてらしゃいますか。

突然、写真家になっちゃったわけで。
いくしゅん
仲のいい友だちはもちろん知ってますが、
両親にも職場にも、
写真集を出したことは言ってないんです。

写真やってることさえ、言ってなかった。
──
こんな取材とか受けてて平気ですか。
いくしゅん
隠しているわけではないので、平気です。
親には、ちょっと前にバレてますし。
──
でも、そのことについて
ことさらに、何か話をしたりはしない。
いくしゅん
しないですね。
──
それは、なんでですか?
いくしゅん
うーん、親とはめっちゃ仲良いんですけど、
なんでだろう‥‥。

聞かれたら話しますけど、聞かれないので。
──
そんな感じなんですね。
いくしゅん
でも「5冊買った」らしいです。
──
あ、ご両親?
いくしゅん
はい。売り上げに貢献してくれたみたいで。
──
それは‥‥親心ですね。
いくしゅん
なので、この先もし親が写真集を出したら、
6冊買ってやろうと思っています。

(つづきます)

2017-10-25 WED

特別スライドショーNo.02

「やや普通」

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写真家いくしゅんデビュー作『ですよねー』を、いまさらオススメします。

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どうしてわざわざこの瞬間を撮ったの?
そう思ったあなた、大丈夫です。
わからなくても、どんどん見てみよう。
ページをめくってゆくうちに、
日常の光景が、じわじわおもしろくなり、
じわじわ愛おしくなってきます。
すでに、刊行から2年くらい経ちますが、
いまさらオススメしたいと思います。
元ゆらゆら帝国・坂本慎太郎さんによる
帯の言葉「この本なんか怖い。」が、
この写真集の全体的なムードを、
ずばり、言い当てていると思いました。

© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN