みなさんのスマートフォンに、
こんなメッセージが届いたことはありませんか?
「お荷物のお届けにあがりましたが、
不在のため持ち帰りました。
下記よりご確認ください」
これは配送業者を装って送られる、
最近流行りの偽メールなんだそうです。
「誰がなんの目的で送っているの?」
「受けとった人はどうすればいいの?」
そのあたりのことを訊きに、
全国の消費者から相談が寄せられる
「国民生活センター」に足を運びました。
「イマ」どきの「サギ」のこと、
7年ぶりにいろいろとうかがってきました。
- ──
- 給付金やマスクの話もそうですが、
やっぱり話題になったものが、
詐欺に利用されがちですよね。
- 神辺
- それはありますね。
コロナ以前の話でいうと、
オリンピックで地価が上がるから
マンション買いませんかとか、
競技チケットの転売話とか、
そういう話は多かったですね。
- 森澤
- 最近だと全国で異常気象が多発しているので、
災害のあとを狙ったものも増えています、
具体的には大雨で浸水した家の修理とか。
- ──
- あぁ、なるほど。
- 森澤
- 「自治体からお金をもらってるから
タダで家を修理できます」
と言って契約するんですが、
工事が終わってからお金を請求されたり。
- ──
- それはかなりひどいですね。
だって最初にタダって言ってるのに。
- 森澤
- その「タダ」というのが点検費用のことで、
工事費用は別だったりするんです。
- ──
- うわぁ‥‥。
- 神辺
- 他にも、保険金を使えば負担ゼロ、
と言われて屋根修理をお願いしたら、
柱が腐ってるとか、床下も歪んでるとか、
どんどん工事範囲を増やす業者もいます。
工事を途中で断ったりしたら、
それまでの手数料を請求されたとか、
そういう相談もあったりします。
- ──
- そうやって請求されてしまった場合、
たとえ工事が終わった段階でも、
なんとかなるものなんでしょうか。
- 神辺
- たとえば訪問販売で契約した業者だったら、
特定商取引法で定められた書面を、
消費者に必ず渡すという決まりがあります。
なので、まずはその書面がちゃんと
交付されたかどうかを調べることはできます。
もしそういう書面はあるけど、
「屋根工事一式」みたいに、
工事内容が細かく書かれていない場合もあります。
正式には「一式」という表記はダメなんです。
- ──
- 「一式」はダメなんですか?
- 神辺
- 人件費、材料費、瓦何枚購入とか、
本当はそこまで細かく書かれていないと、
正式には書面不備になります。
なので、そこがちゃんと明記されていない場合、
クーリング・オフが算定する1日目が
まだスタートしていない状況なので、
いつでも契約の申し込みを
撤回できる状態にあります。
- ──
- クーリング・オフができる状況であると。
- 神辺
- なので、工事がはじまった1カ月後に
消費生活センターに相談されたとしても、
じつは書面不備ということで、
いまからでもクーリング・オフができますとか、
そういうアドバイスはできると思います。
- ──
- もともとクーリング・オフって、
契約してから何日以内でしたっけ?
- 神辺
- 契約の種類によって20日と8日があります。
訪問販売で契約した場合は、
8日以内であればクーリング・オフできます。
- ──
- 8日以内。
- 神辺
- なぜそういう法律があるかというと、
いわゆる訪問販売の場合、
契約するつもりがないところに
相手から勧誘されるので、
消費者からすると不意打ち性があるわけです。
その不意打ち性を考慮して、
その契約が本当に必要かどうかを
冷静に考えることができるという期間なんです。
- 森澤
- クールダウンの「クール」と同じ意味ですね。
- ──
- あ、なるほど。
冷静になるという意味の、クール。
- 神辺
- 訪問販売のセールスマンの話がおもしろくて、
そのときは気分が乗って契約してしまったけど、
あとで冷静になって家族と話していたら、
やっぱり必要のない契約というのがわかったと。
そういうときはクーリング・オフすれば、
その契約はなかったことになります。
それは法律で認められています。
- ──
- クーリング・オフできるものって、
「モノ」のイメージでしたが、
工事のような「サービス」にも有効なんですね。
- 森澤
- 大丈夫です。
エステや美容医療などの
サービスに対して使えることもあります。
- ──
- すでにお金を払っちゃった場合、
それは全額戻ってくるんでしょうか。
- 神辺
- その契約がなかったことになるので、
お金を払っていたら返してもらうことができます。
そのとき「クーリング・オフ対象外」と
相手が主張してくる場合もあるので、
そのときは最寄りの
消費生活センター等に相談してください。
- ──
- クーリング・オフできないものもあるんですか?
- 神辺
- あります。
まず、クーリング・オフできるものは、
特定商取引法で6つに分類されています。
ちょっとまってくださいね。
(消費者六法をパラパラめくりながら)
ああ、ありました、ここですね。
「訪問販売」「電話勧誘販売」
「特定継続的役務提供」「訪問購入」は8日間、
「連鎖販売取引」「業務提供誘引販売取引」は
20日間以内であればクーリング・オフできます。
つまり、どういうことかというと、
いわゆる「通信販売」での契約は、
クーリング・オフ対象外になるんです。
- ──
- ということは、
ネットで買ったものはクーリング・オフ対象外?
- 神辺
- そうです。
通信販売の場合は、
自分で欲しいものや契約条件を確認して
契約してることになるので、
クーリング・オフ対象外になります。
- ──
- すごく根本的な質問ですが、
クーリング・オフをするときって、
どのように申請するんでしょうか。
- 神辺
- ハガキを送るだけです。
「私はクーリング・オフします」
ということを書いたハガキを
契約した業者に送るだけで適用されます。
- ──
- 書式はなんでもいいんですか?
- 神辺
- 必要なことが書いてあれば、
手書きでもなんでも大丈夫です。
書き方に関しては、
国民生活センターのホームページにも
事例を掲載していますので参考にしてみてください。
クーリング・オフは発信者主義と言われていて、
ポストに投函したその日から有効になります。
つまり、8日目に出していたら、
9日目に相手に届いても有効になります。
- ──
- それはつまり、消印の日付で?
- 森澤
- いや、消印に関係なく、
ポストに投函した瞬間にオッケーなんです。
- ──
- へーー。
- 神辺
- より安全にという方は、
ハガキのコピーを自分でとっておいて、
特定記録郵便、簡易書留など、
あとで証明ができるものを付けてもらうと、
安心かなと思います。
- ──
- クーリング・オフのこと、
ぜんぜんわかってなかったです。
- 神辺
- そういう方は多いと思います。
なので高齢の親と離れて暮らすという方も、
実家に帰られたときにでも、
ぜひそういう話を一緒にしてみてください。
(つづきます)
2020-12-21-MON
(C) HOBONICHI