みなさんから寄せられた
犬猫エピソードを、
毎日すこしずつご紹介します。
今年7月の松本ひで吉さんと糸井の対談で、
読者の「犬猫エピソード」を募集したところ、
なんと約600通ものご応募がありました。
どうもありがとうございました。
すべて大切に読ませていただきました。
こちらのコンテンツでは
編集チームおすすめの32のエピソードを、
毎日すこしずつご紹介していきます。
各賞の発表は最後にお知らせしますので、
どのエピソードが受賞するのか、
一緒に予想しながら読んでみてくださいね。
はたして「松本ひで吉賞」は誰の手に!
きょうは2匹の猫をご紹介します。
いつも外に出ては
スーパーボールを持ち帰ってくる猫と、
いつも同じ岩の上で見かける猫。
どちらのエピソードも、
あたたかい気持ちにさせてくれます。
昔、ヘンなクセというか、
飼い主への「貢ぎ物」を欠かさない
猫がおりました。
母が溺愛し、
その母のことが大好きだった猫は、
外出から帰ってくるときは
いつもおみやげを持って帰宅しました。
おみやげは必ず「スーパーボール」でした。
あのよく跳ねるゴムボールです。
それを持ち帰った日は、
玄関先で鳴きまくって母を呼びだし、
母がそのスーパーボールを受けとると、
猫は満足して家に入るのです。
「スーパーボールってこんなに落ちてる?」
と不思議になるほどの頻度で持ち帰り、
そのたびに母がお礼を言って受け取っていました。
その行動は猫が老衰で
外出できなくなるまでつづきました。
スーパーボールはかなりの数になりましたが、
母はいまでも大切に保管しているようです。
(サスケ)
私が大学生の頃、
住んでいたマンション近くに長い坂がありました。
その坂の途中に細い階段があり、
その下に大きな岩がありました。
岩の上には毎日、黒猫がいました。
私はその猫を勝手に「クロ」と名付けました。
クロはピンクの首輪をしていたので、
飼い猫と思われたのですが、
朝早く家を出るときも、
夜遅く帰って来たときも、
クロはいつも岩の上に座っていました。
すこし警戒心が強いのか、
人が近づくと逃げていくような猫でした。
クロはいつも岩の上にいるので、
私は「おはよう」「ただいま」とだけ、
声をかけつづけました。
でも、クロはとくに反応しませんでした。
ある日の深夜のこと。
雨が降っていたので傘をさして歩いていると、
クロがいつものポーズで岩の上にいました。
思わず「風邪ひくよ」と傘をかたむけると、
クロは逃げるでもなく、
そのまま傘の中でじっとしていました。
それからクロはサッと立ち上がり、
階段をのぼってどこかに去っていきました。
そのあともクロに会うたびに、
「おはよう」「ただいま」と声をかけ、
深夜に会うときは自分も岩に腰を下ろし、
「きょうは疲れたね」みたいな短い話をしました。
クロは何も言いませんでしたが、
こちら見て「そっか」みたいな顔をしました。
毎日観察していてわかったのは、
私の他にも同じように
クロと接している人がいるということ。
そしてみんなに共通していたのは、
クロにエサをあげるでも、さわるでもなく、
クロに挨拶をしたり、
短く話しかけるだけのようでした。
それからしばらくして、
クロの姿を見かけなくなりました。
心配はしましたが、
どこの家で飼われている猫なのか
誰もわかりませんでした。
深夜になれば出てくるかもと思い、
岩の近くでクロの名前を呼んだこともありました。
でも、クロはとうとう現れませんでした。
はじめて会ってから何年も経っていたので、
私もなんとなく
そういうことなんだと悟りました。
それから数日後。
クロのいた岩の近くに小さな看板があり、
そこに手紙がはってありました。
『クロを愛してくれた方々へ
この岩の上にいた黒猫は○月○日、
天国へ旅立ちました。
老衰でした。
病気ひとつせず、
眠るように息を引きとりました。
クロは毎日のように
この場所に出かけていました。
声をかけ、やさしくしてくれたみなさん、
長い間、本当にありがとうございました。』
手紙にはピンクの首輪が
ヒモで結んでありました。
クロがやさしい飼い主さんに
飼われていたことを知り、
手紙を読んで涙が出ました。
それから
「お前の名前、まじで『クロ』だったんだ」
と笑いました。
(あごなしビーバー)
明日につづきます。
2019-10-24-THU
©HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN
「ドコノコ」は、犬や猫と人が、
親しくなるためのアプリです。
写真をとって、ちょっとコメントつけて、
アプリのなかの「本」として育てていきます。
「ドコノコ」をたのしんでいる人が増えていくと、
紹介される犬や猫もたくさんになってきます。
いずれは、だんだん世界中の犬や猫が、
「知り合い」になっていくはずです。
知らないコよりも、知ってるコのほうが、
なんとなく親しみを感じますよね。
人が、たがいに知りあいになるように、
犬や猫どうしが、知りあっていくんです。
あのコ、どうしているのかな。
うちのコ、このごろこんな感じなんだよ。
「このエリアで、迷子になったコがいます。
みなさん、ご協力をお願いします」
なんていうときにも、お役に立てます。
「避難所ガイド」の地域をえらんで、
それぞれの犬や猫を登録しておくしくみなので、
だいたいの地域だけがわかるんです。
知ってるコ、親しみを感じているコのことなら、
より探しやすいですよね。
あと、人間のいざというときの避難場所も、
意識しておけるのは、あんがい大事ないいところ。
家族が決まってない猫なんかも、
お世話している人が登録しておけば、
めんどうみやすくなります。
知ってる猫、知ってる犬になると、
なんとなく気にかけてもらえるようになる。
よそのコのことも、もっとかわいくなりますよね。
新しい犬や猫の写真が出てたら、
そこにいる人が元気でやってるなとわかります。
とにかく、犬と猫が、いつもいっぱい見られます。
家に犬や猫のいない人が、たくさん見ています。
「うちのコ」みたいな気分になったりするそうです。