糸井 |
そのラグタイム、聴いてみたいですね。
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山下 |
それじゃ、国立音大のジャズコースの生徒に
来てもらっているので、ちょっと弾いてもらいましょうか。
原田実奈というピアノ科の生徒です。
ラグタイムというのは楽譜になっている音楽なんで、
その通りに弾いてもらうことができます。 |
糸井 |
じゃ、さっそくお呼びしましょう。 |
山下 |
さっきの、スコット・ジョプリンという人の
『The Entertainer』という曲を弾いてもらって、
いったい、どのへんにジャズとの親近性があるのか。
そのあたり、ちょっと聴いてみてほしいですね。 |
糸井 |
では原田さん、よろしくお願いします。 |
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♪「The Entertainer」
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山下 |
‥‥クラシックのピアノみたいでしょ?
でも、ヘンにズレてるのね、リズムの進行が。 |
タモリ |
うん、ズレてますね。 |
糸井 |
クラシックの演奏会では
聴こえてこないタイプの音楽ですよね。 |
山下 |
シンコペーションっていうんですけど、
アクセントが半拍前に来ちゃうことが多いんですね。
こういう音楽が、1800年代の終わりごろ、
世界中で大ヒットしたんです。
ちなみに、当時のヒット曲ってのは「楽譜」ですが。
で、これを聴いたドビュッシーがおもしろがって
調べたんでしょう、黒人文化のことを。 |
タモリ |
「ゴリウォークのケークウォーク」でパクったと。 |
山下 |
『子どもの領分』という
組曲のなかに、その曲があるんですね。
ま、ヘンなタイトルですけどね。 |
糸井 |
「ゴリ」なんてついちゃって。 |
山下 |
まあ、とても高級な冗談のつもり、というか、
インスピレーションなんでしょう。
クラシックの作曲家がこんなふうに、あの‥‥。 |
タモリ |
はっきりパクったと
言ってやったらいいんですよ! |
山下 |
いやいや、それはね‥‥。 |
糸井 |
インスピレーションを受けたんである、と。 |
タモリ |
パクってますよこれは! |
山下 |
ああ、ああ、そうですかね、はい。
じゃあ、そういうことで(笑)。 |
糸井 |
飛ばしますねぇ、タモリさん。 |
タモリ |
完っ全にパクリ。
他にもパクってますからねあの人は‥‥。 |
糸井 |
じゃ、どんなふうにパクったのか(笑)、
原田さんに演奏してもらいましょうか。 |
山下 |
ドビュッシー作曲、
「ゴリウォークのケークウォーク」です。どうぞ。 |
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♪「Golliwog's Cakewalk」
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糸井 |
ははぁ‥‥完全なラグタイムですね。 |
山下 |
でしょ。
でも途中にちゃんと展開部を
おくところがね‥‥。 |
タモリ |
ああいうところがね、ヨーロッパの汚さだね! |
糸井 |
今日のタモリさん、厳しいなぁ(笑)。 |
タモリ |
展開部でもなんでもないんですよ! ダレる! |
山下 |
ああ、なるほど
芸術って、退屈するところが
必ずあるのかって思うことがあるんですけどね。 |
糸井 |
ダレは必要である、と。 |
山下 |
そう、そう。 |
タモリ |
あの部分でね、クラシックだぞと面目を。 |
山下 |
あっはは(笑) |
タモリ |
ラグタイムじゃないぞ、というところをね。
ドビュッシーのやつが。 |
糸井 |
あの、つまり、シンコペーションで
さっきのラグタイムと、今のドビュッシーの曲が‥‥。 |
山下 |
同じなんです。ラグタイムのシンコペーションを、
おもしろいと思ったんでしょう。 |
糸井 |
タモリさんが、パクリだって言いたくなるのも
もっともかもしれない、と。 |
タモリ |
まったくのパクリですよ、ええ。 |
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<つづきます> |